ずっとクレヨン王国を読んできたのに、私の頭は本当に忘れやすくて、理解力が足りないんだなあ……
でも、脳みそのどこかしらには残っているからこそ、今でも好きなんだろうけれど。
経済についての福永さんの意見とか、今でこそそう考えられるけど、これを意味がわからないでも叩き込んで覚えておけば、自分の物差しが不痩せているのにね。
あ、そうか、本は物差しなんだっけか。
そういう読み方を出来る人もにいるのに、私は書かれたものを書かれたとおりにしか、いまだ読めない。読めるよう訓練していかないとねえ
水色の魔界よりもなお、自然破壊についての意見が痛烈だった。
自然を守る行動についての終わらない議論
原発の議論と同じ。
塾の佐久間先生が、子どもたち規子とのりさん、東大生野末くんに熱弁を振るう。
p116
「森がいくらあってもたりやしないよ。よく、『日本が木材を輸入するから熱帯雨林がきえてしまう。』という人がいる。それも、うそじゃない。だけど、『日本が輸入をやめたら森は切られないのか。』といえば、とんでもない。
先進国じゃ、切った木のうち、燃料に使うのは三割だが、発展途上国では、七割が燃料なんだ。電気もガスもわずかしかないんだからね。毎日木をもやしていかなきゃ、食事もできないんだからね。先進国の人口は七億人、その他の国は四十数億人。その四十数億人の人たちが、日本人と同じように電気も使おう、神も使おうという生活をめざせば、森林をつぶすしかないだろ。『そうしちゃいかん。』とだれがいえる?……略」
「…略…『自然をこわすな。』といってもむりでしょう。五十億の人間が文化生活をするには、土地がいるんだから。」
「じゃ、一、二の三で、みんなが原始的なくらしにもどればいい。」
と、規子がいいました。
「そんなことはだれも賛成しやしないよ。今だって税金が少し上がれば大さわぎになるじゃないか。それどころか、われわれは死に物ぐるいで、もっと経済を拡大しようとしつつあるんだ。それはまたそれなりの根拠があるんだよ。
たとえば、現に中国の石炭燃料による公害で、日本にも酸性雨がふっている。ここは、進んでいる日本の公害防止の技術で、中国を援助してあげなくちゃならない。そうしないと、われわれ自身にふりかかってくる。だが、その援助の金はどこから出る? われわれの税金だろ。景気がわるくなって企業が赤字なら、税金がとれないから、援助もできない。ところが、景気をよくするということは、物をどんどんつくって、それをみんながどんどん使うという状態をいうんだよ。それをどこの国の政府も目標にしている。『みんなで貧乏をやって生きのびよう。』と公約したら、だれがえらんでくれる?」
p120
「大部分のひとはね、自分が今もっている利益をまもることが正義だと思っている。それをおかそうとすれば猛然と戦う。そこには損得のほかに正当だという気持ちがあるんだな。たとえば、デパートが進出しようとすれば、地元の商店街は一致して反対する。これまでうまくやっていたのに、わりこんでくるやつが悪いと思っている。今までそうだったから、それを変えるやつは、ひどいやつなんだ。
…略…
今ここに、ぜったいに虫歯にならないぬり薬とかができたとしたら、歯科医師会は、自分たちの死活問題だといって、売らせないし、売るならば補償を要求するかもしれない。
無公害の電気自動車なんかは、実用化の研究がされつつあるけれど、今の経済が混乱するようなドラマチックな登場のしかたは、ゆるされやしない。車のメーカーも、ガソリンスタンドも、石油会社も、産油国も、みんながこまらないような条件をととのえてからでないと、出られやしないのだよ。
ところが、そんな、こんなのうちに汚染はすすみ、人口は爆発的にふえつづけていく。」
「それじゃ、知っててみすみす破滅するの?」
「みんな、自分の生きてるあいだぐらいはだいじょうぶ、と思ってるんだよ。……略」
その無公害の電気自動車を動かすための電気も、発電で原発を使えば放射能の、水力ではダムの、火力では二酸化炭素と燃料の問題。燃料はガスでも石油でも石炭でもシェールガスでも環境破壊、土壌汚染。あ、日本はまだ石炭採れるから、売れなくなったから採掘しなくなっただけで、結構良質な石炭がまだ採れるから、対応する仕組みにすれば使える燃料らしいですよ。
ピンクのクレヨンは、調子のいいのりさんに、そこらのものにさわらないよう注意しておいたのに、のりさんは、時バトさまを逃してしまうという大失態をやらかす。
なのに、このピンクのクレヨン、偉いんだ。こんな心を鍛えたい。
p205
「最初に、おわびを申しあげます。」隊長は、沈痛な表情で、「ドアつくりの名人相澤一平さん、孫の規子さん、そのお友だちの松田則子さん。せっかく、わがクレヨン王国108グループにおまねきしたのに、わたくしの説明不足、不行き届きにより、不愉快な思いをさせてしまったことを、心より残念に思い、おわびいたします。また、グループのみなさまがたにも、ご心配、ご苦労をおかけする結果となってしまいました。つつしんでおわびします。」
規子は、
――とてもえらい隊長だなあ。――
と、感動しました。のりさんの行動をまったく非難しないのですから。