レトリック感覚 (講談社学術文庫)

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著者 : 佐藤信夫
  • 講談社 (1992年6月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590298

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レトリック感覚 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 東大

  • レトリックは元来、表現の説得性を追求する技法および芸術性を追求する技法としてのみ重要視されてきた。それゆえ脚色を嫌う現代の科学的合理主義のもとで、レトリックは無意味かむしろ害悪なものとして葬られてしまった。しかし、それはレトリックの価値を大きく見誤っていると著者は嘆く。〈本当は、人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。〉感覚や印象をありのままに表現し伝達するための技術として、レトリックに新たな側面から光を当てる意欲的な良書。

    「言語の弾力性」という言葉が印象的。言語が確かな質感を持つ生き物のように思えてくる。言語形成の大部分が新たなレトリック表現の創造と定着そのものだということや、レトリックの構造が人間の認識の仕方と密接に繋がっているという指摘は知的にとても面白かった。レトリックという実用的技術を追求していくと、ときに哲学に行き当たるというのも興味深い。とても満足。

  • 16/05/08、ブックオフで購入。

  • 夏目漱石やドンキホーテに感じた軽快な文章の面白さ、情景が浮かびやすさ は直喩のうまさ であることを実感

    太宰治やシェークスピアは 隠喩が多いから 読み手として、これは何を意図しているのか 迷うことが多い気がする

    もしかして、今まで 読み切れなかった本のうち、レトリックを知っていれば 楽しかった本があったかもしれない。本の読み方が変わりそう

    日本屈指のレトリシャン 石川淳の本を読んでみたい

  • レトリック、修辞というのは近年の学校教育だと国語の中でほんの少し触れる程度か。
    そんな修辞学のテキストの一部、といった感じ。
    語り口調でたまにセルフツッコミを入れたりすらしているラフな文体。
    読み易いしためになるので、一読することを勧める。

    比喩がメインで、それ以外には列叙法と緩叙法が挙げられている。
    比喩って学校だと直喩と隠喩くらいの区分しかやらなかった気がするけど、そこに換喩や提喩といった、あまり耳慣れないものが追加されている。
    因みに換喩は赤ずきんちゃんのことを「赤ずきん」で置き換えて表現する手法(人間としての赤ずきんちゃんは別に頭巾に似てはいない)、提喩は「雪」を「白いもの」といった様に、広く、或いは狭く言い換えることなどを言う。

    印象深かったのは、直喩と隠喩の序列についての話。
    直喩はわかりきったことを言い過ぎるし、隠喩の方がスマートだから隠喩の方が優れている、といった言に対する反論で、「どちらでも対応できる例文」の場合、隠喩でもそれが示すものが明らかだから隠喩が適当な例になっているに過ぎない。というものである。
    つまり自ずから文がどちらを使うか言っている、ということだ。

    続編として『レトリック認識』がある。
    取り敢えず今回はここまでにするが、恐らくいずれ読む。

  • 【引用】(「序章1」より引用)
     二十世紀という時代を人々がレトリックなしでスタートしようとした、その理由の半分はたしかに「古典レトリック」のがわにあった。その技術体系は、精密化すると同時にすでに自己矛盾におちいりはじめていたのだった。
    〔……〕
     規則性あるいは形式性に注目し、目を見はったレトリック研究者たちは、みごとに独創的な表現(多くの卓越した文学作品や論述)を集め、けんめいに分析し、そこから技術体系を組み立てていった。古典的名作の研究である。
     そして、気がついたとき、模範的作品から抽出された理論は模範としての拘束力をもつはずだ……と錯覚するようになっていた。そして、ほれぼれするほどに精製された古典レトリックは、かつて文法にさからったり文法をからかったりしていたことをけろりと忘れ、模範文法と並びきそって、作文を法的に支配しようとしていた。弾力性を身上としていた当のレトリックが、いつのまにか、石あたまの教師としてふるまいはじめた。やがて見捨てられることになるのも、当然といえば当然のなりゆきであった。
     とはいえ、老いた教師の学識を惜しげもなく捨て去り、そこから何ひとつ学ぶ必要はないとまで思い上がった、その愚行の責任の半分は(きっと半分以上は)二十世紀の生徒たち、私たちにある。
    〔……〕
     森羅万象のうち、じつは本名をもたないもののほうがはるかに多く、辞書にのっている単語を辞書の意味どおりに使っただけでは、たかのしれた自分ひとりの気もちを正直に記述することすらできはしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れられたのだろう。本当は、人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るためでもなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのに。
    (佐藤信夫『レトリック感覚』pp.25-26)


    【目次】
    序章1 レトリックが受けもっていた二重の役わり 009
    序章2 レトリック、修辞、ことばのあや 027

    第1章 直喩 062
     直喩の構造 062
     直喩の多様な姿 084
     どこから直喩ははじまるか 095

    第2章  隠喩 100
     隠喩の構造 100
     隠喩と直喩と 108
     類似関係に依存する 117
     言語体制に組み込まれる隠喩 125
     隠喩の弾力性 132

    第3章  換喩 140
     換喩の構造 140
     古典レトリックにおける換喩 147
     隣接性による表現の流動 155
     換喩の多様な姿 165

    第4章  提喩 172
     提喩の曖昧な伝統的概念 172
     全体と部分……の分析 181
     認められなければならない提喩 189
     類による提喩とその構造 194
      認識の中の提喩性 205
     種による提喩 210 
     比喩あるいは転義について 213

    第5章  誇張法 218
     誇張法の評判 218
     嘘と誇張法 225
     表現自身への批判であるような表現 233
     心情的な誇張法 238
     論理的な誇張法 245
     誇張法と緩叙法など249

    第6章  列叙法 252
     つみかさねる表現 252
     ことばを羅列する列挙法 259
     段階的にのぼってゆく漸層法 268
     連鎖漸層法その他 278

    第7章  緩叙法 285
     反義表現を否定する 285
     二重の否定 294
     否定について 303
     対義語の発見 308

    本書のなかのおもなレトリック用語 317
    おもな引用文献 320
    あとがき 324
    佐藤信夫 または言葉への信頼――佐々木健一 326

  •  レトリックは、私たちの言語感覚の深いところにひそみ馴染んでいるというのがよく分かる本だった。

     世の中にはいろいろな言葉があるけれど、そうした標準化された既成の言葉を使って、人の数だけある個々の現実、それも時々刻々と変化するものを表現するのは、思っている以上に挑戦的な試みなのだと思わされる。

     新しい認識を聞き手と共有するために比喩表現を用いたり、どう言っても虚偽の混じりそうな言葉をあえて誇張して聞き手の理解を求めてみたり、緩叙法では肯定否定の比較を通して心情の流動性までも表したり。そうした工夫が至る所でごく自然に行われているのだから、驚いてしまう。

  • 直喩、隠喩、換喩、提喩、誇張法、列叙法など「ことばのあや」についての解説がなされている。わかりやすい例文が多くて楽しみながら一気に読み進むことができた。ことばのあやによって発見される認識があり、それは快感となるというのが全体を通した主張で、全くその通りだと思った。面白かった。

  • これは単なるレトリック事例集ではない。言語の背景にある認識の妙に触れるための一冊。

  • 20150223読了。
    生き生きとした文は、様々なレトリックに彩られている。
    レトリックとは直喩、隠喩、換喩、提喩などの比喩表現。上手く使えば洗練された文になるが、狙いすぎると野暮な文になる。
    魅力ある文とは狙っていないように見えて凝りに凝った文なのかもしれない。

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アリストテレスによって弁論術・詩学として集大成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。

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