神々の精神史 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592797

作品紹介・あらすじ

「カミ」を語ることは、日本人の精神の歴史を語ることである。著者は、神話・伝説・昔話などの構造分析を手がかりに、文化人類学と民俗学のはざまから揺さぶりをかける。神々の棲む村、民話的想像力の背景、根元神としての翁、フォークロアの先達・筑土鈴寛など、日本文化の深層にひそむ民俗的発想の原点を探り、柳田・折口以後の民俗学を鋭く批判した。人類学的視点から問いかけた刺激的な知の軌跡。

感想・レビュー・書評

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  • 民俗学の専門論文にあるので、興味がないと最後まで続かない。

  • 小松和彦 「神々の精神史」

    民衆の思想に関する論考集。最終章を読むまで、寄せ集め的な本の構成と思っていたが、 最終章の筑土鈴寛 論を読むと、この本は 筑土鈴寛の視点を伝えるために必要な論点を一冊に集めた論考集に思う

    最終章の 筑土鈴寛 論が一番面白い。異端の民俗学者とのこと。筑土鈴寛 は、日本文化の底流にある伝統的思想〜日本人の精神の古層、深層の精神史を考察しているようだが、著作が見つからない。

    民話「ものくさ太郎」を使った構造分析は、物語の中の対立や類似の構造を取り出し 民衆心理の体系化を試みた思考実験のような面白さを感じる

    #金春禅竹 「明宿集」についての考察は、翁に 神(農耕神)と鬼(祟り神、荒神)の側面を見出す論調。たしかに能面は 神が人の形をとった生き神のようにも見える。


  • ・トリックスターとは、単なる「いたずら者」ではない。非日常の状態におかれ、生命の危険にさらされたときの、日常的で道徳的な目からすれば、「悪」としかいいようのないことを敢えて犯すことによって生存し続けることに成功してきた、もっとも醜悪な人間の智恵の表現なのである。

    ・笑いとは、生理学的にいうならば、筋肉の弛緩であり、筋肉が緊張していたときに必要とされていたエネルギーが急速に不要となったために、<笑い>という形をとって放出されたものである。すなわち、ある秩序にしたがって思考していた読者が、突然に別の秩序にそって思考することを迫られ、そのため思考の平衡状態が混乱し乱されてしまったために、方 向性を欠いたエネルギーが放出したものが笑いなのである。

  • 「民間伝承と呼ばれるものは、総じて一種の再話つまり民衆の記憶装置である。それ故、民話を研究するという作業の最終的な目的は、民話という依代に憑依し隠れ棲んでいる民衆の歴史の記憶を、そこから解放し活性化させることにある。だからこそ、民俗学は民衆の精神の考古学なのである」こうした記述にフーコーの響きを感じない人はいないだろう。若く先鋭的な民俗学者の一面が垣間見られる著書。力のこもった著述で、やっぱりこの人はその後大きな仕事をする人になるということが自然に納得できる。あと、自分自身に引き寄せて言えば、やはりかなり若い時に読んだ本なんだけれど、「明宿集」への言及や宿神、アカマタ・クロマタなど、今の自分が一番興味を持っていることとすでに出会っていたんだなと驚く。

  • 著者の第一論文集。文化人類学的な手法を持ち込むことで、柳田国男、関啓吾以来、停滞しているかに見える民話研究に新生面を切り開こうとする、著者の若々しい意欲が感じられる。

    著者は民話を研究するに当たって、レヴィ=ストロースによって開拓された構造分析の手法を用いる。民話を構成する諸要素は、その文化に許容される「意味されたもの」を帯びており、それらの有機的な結合体として民話は形成されることになる。それゆえ民話は、民衆の膨大な記憶の貯蔵庫から生み出されるブリコラージュと考えられることになる。本書は、さまざまな民話に構造分析をおこなうことで、民話に込められた民話的想像力と、それを育んだ民族誌的条件とを往還し相互に照らし合わせようとする試みだと言うことができる。

    怪物退治や異類婚姻にまつわる民話においては、自然/文化という対立項が具体的に働いている姿が解明される。また、「ものくさ太郎」のトリックスター性や、金春禅竹の能楽論に基づいて「根源神」としての翁のイメージが民話の中に探し求められる。このほか、主に中世の他界観に関する論考も収録されている。

    最後の3章は、折口信夫の直観と、民俗学の対象を集団表象の体系とみなす柳田国男のスタンスを受け継ぎながら独創的な研究をおこなった筑土鈴寛という民俗学者を再評価する論考になっている。

  • 大学時代、お世話になった先生から勧めていただいた本。今でも時々読み返すことがある。

  • 日本人の心の底にある「神」の存在について、様々な観点から考察した本。

  • 本書は、一九七八年に刊行された伝統と現代社版の、増補新版として一九八五年刊行の北斗出版版にもとづいて、一九九二年一月、福武書店(現ベネッセ)から刊行されたものを原本とする。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター教授、同副所長

「2011年 『【対話】異形 生命の教養学Ⅶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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