バーナード・リーチ日本絵日記 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595699

作品紹介・あらすじ

宮川香山・六代乾山に師事、東西の伝統を融合し、独自の美の世界を創造したイギリス人陶芸家リーチ。昭和二十八年、十九年ぶりに訪れた第二の故郷日本で、浜田庄司・棟方志功・志賀直哉・鈴木大拙らと交遊を重ね、また、日本各地の名所や窯場を巡り、絵入りの日記を綴る。随所にひらめく鋭い洞察、真に美しいものを見つめる魂。リーチの日本観・美術観が迸る興趣溢れる心の旅日記。

感想・レビュー・書評

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  • 少し前に、原田マハ氏の「リーチ先生」を読んだ。
    その途中で色々調べているうちに、この本をみつけた。
    バーナード・リーチ本人の、1952年から1954年の日本滞在中の日記である。
    「リーチ先生」の冒頭で、先生が濱田、河井と共に大分の小鹿田を訪ねている、あの旅だ。
    元は、来日中のリーチが、西洋にいる30〜40人の友人に宛てて、体験したことや考えた事を伝えるための日記だったという。
    それにしても書きに書いたり。
    スケッチや、作品の写真もふんだんに載っている。
    リーチ先生は、本当にマメな人だ。

    というのも、「全国の窯を訪ね歩いている」と書けばのどかなのだが、実際に本人の日記を読むと、驚くべき多忙ぶりなのだ。
    全国の窯元以外にも、日本民藝協会関係の本部支部、招いてくれた新聞社がセッティングした場所、友人関係や義理のある場所、さまざま訪れている。
    行った先でまず、土地の有力者のお出迎え、会食、講演、車で連れ回され、郷土自慢の観光や踊りを見せられて夜は宴会。
    その間も新聞記者たちがべったり張り付いてインタビューやら写真バシャバシャやら。
    お世話になった人たちには、お金は受け取ってもらえないから、何枚も何枚も絵を描いて御礼に渡す。
    そして、日記を執筆、本を執筆、来日のメインである、作陶、展覧会。
    一日24時間では足りなそう。
    当時、リーチ先生、66歳〜67歳ほど。すごいなあ。

    日記には、日本の文化のこと、特に戦後変わってしまったことに心を痛め、これからの日本の藝術を我がことのように憂えて、たくさんのことが書かれている。
    来日は19年ぶりで、その間には戦争があったのである。
    日本は焼き払われ、多くのものがアメリカ流に上書きされた。
    「心の敗戦」
    もちろん、因習が改められ、女性は解放され、といった良い点もたくさんあるが、良き伝統が「恥ずべき古きもの」のようなコンプレックスを持って捨てられつつあることを、先生は危惧し、悲しく思っている。

    日本だけの問題ではなく、産業革命以降の傾向として、工場での大量生産で、手作業の工藝品の良さは消え、つまらない粗悪品で生活することになってしまった。
    一方で、工藝品は実用ではなく眺めるだけの、あるいは取引によって金儲けをするための美術品となってしまった。
    「美しいもの」と「生活の中で役に立つもの」を両立させたいというのが、リーチ先生も賛同する「民藝運動」だ。
    提唱者の柳宗悦、河井寛二、濱田庄司らは、みなリーチの古くからの友人である。
    しかし、細かいところでは、全面的に全員が同意見というわけではなかったらしい。

    この本の中でも、リーチの民藝に対する思い、藝術や創作に対する考えが繰り返し語られる。
    分かる、と思う部分も多いが、宗教と絡めて語られると、ちょっと分からない(汗)
    翻訳なので、間に人が入ってわからなくなっている部分もあるのかもしれないが、全体的に、リーチ先生の、藝術に対する愛、そして嬉しくも日本に対する愛が炸裂している、熱い日記だった。
    藝術論の部分は難しいけれど、紀行部分の日本の自然の描写の美しさは思わずため息が出る。
    観光地化された下品で騒々しい場所をはっきりディスっているのも、ユーモアのセンスがあって嫌な感じはしない。

  • リーチが批判的であるのがおもしろいし、前向きな自分なりの批判的目や意見はもっと発したほうがいいんだろうなと思った。
    各地の窯に興味がわく。

  • リーチの昭和28年(1953)2月から翌年11月までの日本滞在の記録

    日本の「民藝」に携る人物との交流の深かったリーチ(1887〜1979,英,陶芸家)が、彼らに紹介・案内された場所を訪れた時の記録。

    序文に柳宗悦が「この旅の計画は、主として私に責任があるが」とある位。リーチが訪れた場所=柳が重視していた場所とも取れ.
    民藝重用ポイントがこれを読むと分かる。

    また、民藝のことを抜きにしても、リーチの自然描写が繊細であったり、青森から九州まで、観光客が回らない地域も含めて全国を回っているので、観光書としても読めるし、当時の日本の様子、伝統的な面や、西欧化の進む風景(パチンコ・ラジオ・パーマ)など外国人の視点から書かれていて面白い。

  • リーチ先生が大好きなので、そのリーチ先生が書いた日記、というだけでワクワクものです。
    この日記は戦後リーチ先生が来日して一年十ヶ月に渡り日本全国を回られた記録。決して若くない69歳という身体でこれだけ精力的に民藝の価値を高める活動をしてくれた事は、日本人として感動を覚えます。各地で講演をしたり個展を開いたり取材を受けたり。。。その多忙さに驚くのと同時に、終戦からまだ10年も経っていないこの頃(1953年頃)既に日本においてこれ程高い認知度だった事にも再認識する。
    あゝこの頃のリーチ先生でいいから一度ご本人に会ってみたい。。なんて言う実現不可能な思いを巡らせる(ホントは戦前の白樺派の人達と活動していたリーチ先生に会いたい 笑)。
    文中にたくさん載っているリーチ先生のスケッチもまた楽しい。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA59044485

  • 原田マハさんのリーチ先生を読んだ後、リーチたちの作品が見てみたくなって駒場の日本民藝館へ行って、ショップでこの本を買いました。

    原田マハさんの物語は現実と創作の境が絶妙で夢があってそこが好きだけど、これは紛れもなく現実。
    答え合わせのような気持ちで読んだけど、正直日本語訳が微妙というか。。。そもそも元が日記だからってのもあると思うけど、訳されたの自体かなり昔の話だと思うし、ちょっと日本語が難しい。

    でも「なぜ日本人はすぐれた古い伝統を捨てようとしているのですか?」という外国人側の見解が端々から伝わってくる。
    そしてそれはそれだけリーチが日本を愛してくれてるということ。
    もちろん戦後の日本は西洋の後を必死で追いかけたからこその発展があったと思うけど、日本人としてもしっかり向き合うべき問題なんだろうなってひしひしと伝わってきた。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA59044485

  • バーナードリーチ 日本絵日記

    民藝を通じて 日本の美をとらえた著者の昭和28年から29年の日本滞在記。日々の出来事というより、その日に会った人たちの観察記といった感じ。

    観察眼の鋭さは 人物、動物、風景など 挿絵にも見てとれる。山間や農村の風景は 簡素な線なのに 細かな描写が凄い。


    調和や仏教思想に日本の美を見出し、科学と合理性の時代に生まれた西欧の美との比較が わかりやすい。


    渋い という言葉が、まことの美の最高の質を形容した言葉とは 知らなかった。伝統の定義も素晴らしい「数世代にわたって経験の上に築き上げられた行動の共同の真理を 伝統と呼ぶ」


    亀ちゃん(森亀之助)についての記述は気になる。後に精神を悪くして亡くなった弟子とのことだが...


    日本の美
    *理想は調和〜自己と非自己の間の、人間の作品美と自然美の間の、諧調である
    *日本の「内から」の藝術→科学と合理主義と工業化の時代に生まれた西欧の「外来の」藝術を消化できない
    *無は〜消極性と積極性ともに無縁な、不分別の状態


    地震の多い日本の藝術
    *小泉八雲〜日本の建築や詩〜刹那に重点を置く藝術→小さい不相称なもの、量的なものよりピリッとしたもの
    *石の建物がないため、変わらない生命の象徴として、永遠性と涅槃の象徴として、庭園に石を置く


    「真の自由という状況においてのみ人間の精神は花開く」



  • 2018年7月読了。
    「外の目」から見た当時の日本社会に対する批判を含んでおり、単なる紀行文の枠組みを超えた内容になっている。

  • 陶芸家バーナード・リーチの日本滞在記。歴史観、審美眼、好奇心旺盛で誠実な人柄にも好感を持たずにいられない。

  • 彼抜きには、日本の民藝は語れませ〜〜ん!

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著者プロフィール

陶芸家。1887年ー1979年。

「2020年 『陶工の本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

バーナード・リーチの作品

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