戦後責任論 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597044

作品紹介・あらすじ

中国・重慶での反日暴動、従軍慰安婦を巡る諸問題など、ある日突然、亡霊のように甦る戦争の記憶。冷戦構造が崩れて直面したアジアの戦争被害者の声に、日本はどのように応答すべきか。ユダヤ人大量虐殺を否定する歴史修正主義や、台頭する新たなナショナリズムを鋭く批判し、アジアの民衆との信頼関係回復のため戦争責任を問い続ける俊秀の力作。

感想・レビュー・書評

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  • ぼくらには、だれかに呼びかけられたその時点でそれに応じる責任がある。

  •  1990年代の「歴史教科書問題」から始まる「歴史認識論争」、加藤典洋「敗戦後論」以降の「歴史主体論争」の渦中で書かれた/語られた著者の思考の集成。「Ⅰ」が国内の聴衆に向けた講演、「Ⅱ」がパリと日本での学術的会合でのレクチャーをもとにしているので、著者の問題意識とエッセンスが明快に示されている。個人的には、『ハムレット』を使って戦争記憶のアナクロニズム(年代記的な時間をかき乱す特徴)と、証言者の単独性を証言の記憶の差異をはらんだ反復として捉え返してみせた「記憶、亡霊、アナクロニズム」が刺激的だった。

     自分自身が知的な瞬発力がないタイプなので、加藤の議論にいちはやく応答し、徹底的かつ真摯な批判をくり出した著者の姿勢には感服せざるを得ない。しかし、著者の議論は加藤の立論の混乱を突くことはできたが、加藤の言説と、それを支える土台としての日本社会の戦争記憶の「構え」にまでは届かなかったのではないか? いま改めて「論争」を振り返ることは、当時なぜ加藤の言説が評価されたのか、そして、『敗戦後論』を歴史修正主義者の議論と接続しつつ「日本のネオ・ナショナリズム」として括りだす枠組みを作ったことの批評的な意味が問われるのではないか?

  • [ 内容 ]
    中国・重慶での反日暴動、従軍慰安婦を巡る諸問題など、ある日突然、亡霊のように甦る戦争の記憶。
    冷戦構造が崩れて直面したアジアの戦争被害者の声に、日本はどのように応答すべきか。
    ユダヤ人大量虐殺を否定する歴史修正主義や、台頭する新たなナショナリズムを鋭く批判し、アジアの民衆との信頼関係回復のため戦争責任を問い続ける俊秀の力作。

    [ 目次 ]
    1 戦後責任を問い直す(「戦後責任」再考;記憶・亡霊・アナクロニズム;ジャッジメントの問題)
    2 ネオナショナリズム批判(日本のネオナショナリズム(自由主義史観を批判する;加藤典洋氏「敗戦後論」を批判する)ネオナショナリズムと「慰安婦」問題)
    3 私たちと他者たち(汚辱の記憶をめぐって;哀悼をめぐる会話;日の丸・君が代から象徴天皇制へ)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ¥250

  • 2005年。

  • 近頃気になる著者の本。東京裁判はおかしいという論があるが、はたして日本人自身が戦争を断罪し、その責任を問い続けることができただろうか。自国民の哀悼の前に、日本の侵略によって犠牲になった他国民の哀悼を考える著者の意見に賛成。日本は冷戦構造の崩壊によってはじめて戦後責任に直面せざるを得なくなったというのもなるほどと思った。謝罪の意味がよくわからず、なんとなく謝り続けているのにという先人たちのつけが今の世代にまわってきているのだ。

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著者プロフィール

高橋 哲哉(たかはし・てつや):1956年生まれ。東京大学教養学部教養学科フランス科卒業。同大学院哲学専攻博士課程単位取得。東京大学名誉教授。著書:『逆光のロゴス』(未來社)、『記憶のエチカ』(岩波書店)、『デリダ』『戦後責任論』(以上、講談社)ほか。訳書:デリダ『他の岬』(共訳、みすず書房)、マラブー編『デリダと肯定の思考』(共監訳、未來社)ほか。


「2024年 『沖縄について私たちが知っておきたいこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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