君あり、故に我あり (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597068

作品紹介・あらすじ

九歳でジャイナ教の修行僧、ガンジー思想にも共鳴し、八千マイルの平和巡礼を行ったインド生まれの思想家は、自然に対する愛を強調した独自の平和の思想を提唱する。デカルト以降、近代の二元論的世界観は対立を助長した。分離する哲学から関係をみる哲学へ。暴力から非暴力へ。思いやりに満ちた心の大切さを力説し、地球は一つと、相互関係・共生関係に基づく平和への新しい展望を示す。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの田舎にあるシューマッハ大学という真にサステイナブルな生き方を学ぶ大学を創設したサティシュ・クマールの著書。
    この本はサティシュがその人生で影響を受けた人との対談がたくさん詰まっている。有名なところだとガンジーやマーチンルーサーキングなど。

    その考え方の根底は、ジャイナ教、ヒンズー教、仏教で、そこにあるものを大事にし、土地と一緒に生きていくということだと思う。
    二元論ではなく全ては繋がっていると考える。
    足るを知り、欲望を満たすのではなく地球への奉仕を通じて豊かな精神性を獲得する。

    豊かさの定義を大きく変える考え方だと思う。
    資本主義が行きつく先は地球の破壊、深刻化する環境問題がその実感を日に日に高めていっています。
    じゃあ私たちはどう生きていくべきなのか、その一つの考え方がここにあると思います。


    ◯ジャイナ教の教えの生き方
    ・人生全体を精神的実践、すなわち瞑想として生き、自己表現は明日のものでも遠く離れたものでもなく、今ここに、物質、仕事、生命に対する畏敬の念に導かれる全て我々の行為の中にある
    ・自立して自活するように教えられることもなく、家族は相互依存的な関係。互いにわかりあい、分かち合い、私有物はない。
    ・シャーンティ(平和)を3回唱えるマントラは、個人、社会、宇宙の平和を意味する。あるがままの自分を受け入れ、内面を平和に保ち広げていく。
    ・全ての知識は部分的で相対的、固定的な観念や意見に囚われず原理主義から解放される。
    ・祖のマーハーヴィーラは偉大な英雄と呼ばれる。理論よりもまず実践を説いた。生き物を殺めることを何より嫌い、生き物を踏まないように歩き、種のある植物を食べるときは全て取り出し自然に返した。
    ・真実は一つではない。真実に生きるとは、謙虚で新たな発見に対して寛容に、そして最終的究極的発見というものはないことを受け入れる。真実とはありのままのもの。かくあるべしという見方を押し付ける必要はない。
    ・恐れることなく真実を語るべきだが、優しく語ることを学ばなければならない。
    ・貞節により人口を少なく保ち、無所有により消費を制限し世界を均衡に保つ。これにより恐れから自由でいられる。その先には五感で捉えがたい、無限の神秘の世界がある。

    ◯ガンジーの考え
    by ヴィノーバ
    ・魂が欲得から自由であれば、あらゆる仕事は芸術になる。
    ・個人が欲得なしに行動すれば必然的に社会の福利に繋がり、また個人にも満足と達成感をもたらす。個人の変革と社会の変化は相互補完的。
    ・個人と共同体の間に常に対話がある。
    ・自己中心な資本主義、社会中心な社会主義、に対して生命中心
    ・水が豊かにあったとしても決して必要以上に使わない。浪費は暴力。
    ・自らに補給をするタパスは、食べる量を減らす(時に断食)も含むが、これは抑制ではなく肯定的か概念。充足とは何かを知りそれに満足する、度を越した消費からの自由がタパス。
    ・ガンジーにとってインドの自由のための闘いは無我の行動だった。個人的領域と政治的領域の精神性の二面性はなく、他人に奉仕することから始めれば、やがて事故を実現すると考えた。
    ・本当のインドは70万の農村にこそある
    ・自らの手仕事や農場からの生産物により公正な生計を営み、自己組織された自自営の人々の連邦がガンジーのビジョン
    ・地域経済と対極のグローバル経済は国際収支を好ましくするためにように輸出を増やし輸入を減らす。恒常的経済危機と慢性的失業が起こり、不平不満が生まれる。無制限な身体的快楽の追求はどこまでいっても満足感と充足感を得られない
    By ジッダーラジ
    ・所有者から受託者へ、自らを裕福にすることや自己実現といった動機から、地球に奉仕し、地球を再生するという願望に動機付けられるようになること。
    ・所有制度で60億の全てが同じ資源を平等に分けようとすると、地球5こ分の資源が必要

    ◯クリシュナムルティー
    ・自ら設立した星の教団を解散した人。いかなる宗教も精神性や自由には導いてくれない。宗教は束縛の原因になる。自由に歩くには、すがりつくもの全てを捨てなければならない。
    ・現実の本質の絶えることの探求により恐怖と固定観念から自由になれる。それは友情と会話、対話による。

    ◯平和とは一つであること
    ・平和のあるところには他者への恐怖はない。なぜなら他者など存在しないという感覚を与えてくれるから。
    ・私たちと他者を分け隔てるのは我々のレッテルである。
    ・ヒンズーという言葉は元々特定の宗教を意味していない。人々を指し示す言葉。やがて外国の一神教支配者たちと区別するためにカテゴリー化されていった。
    ・世界を巡る旅で大陸を渡り歩く中で、宗教的文化的観念でがんじがらめになっていた内面的精神性が解放され、私たちは皆分離しておらず関係している、とはっきり確信した。
    ・純粋な合理主義はそれ自体が精神的暴力である。合理主義は切断し、分離し、分断し隔離する性質を持つ。合理性はひつようどご、心の中の感情や直感と調和した合理性が大事。

    ◯シューマッハの考え方
    ・small is beautiful 市場経済は富めるものをますます富ませ、貧しいものをますます貧しくする、快楽さの追求は道徳的破産、伝統的文化と自然環境の荒廃をもたらす
    ・束の間の富ではなく、永遠の価値を重要視する

    ◯エネルギー
    ・太陽エネルギーを使えばエネルギーは十分、何千人の信者たちのため湯を沸かし料理を作るのに、世界最大の太陽熱調理器が稼働している@ブラーマ・クマリス ゲストハウス

    ◯伝統的様式の画家: ハク・シャー
    ・穏やかな黙考の感じを表現する絶妙な色彩。
    ・木と牛と笛ご繰り返し登場
    ・芸術の目的は結びつけること、芸術とは、愛と熟練と注意力の組合せ
    ・成功は、それを探し求めるには忙し過ぎる人々のもとへやってくる by ソロー
    ハクは避けようとしていたにも関わらず名声と評価がやってきた。

    ◯君あり、故に我あり
    ・デカルトの「我思う、故に我あり」からは信頼を放棄し、精神と物質を分け、世界を分離分割して支配する対象として捉える二元論的思考が読み取れる。
    ・根本には自我が中心にあり、他者とは無関係に自分の意思で行動できるという信念に基づく
    ・一方全ての種が一つの共同体と見るジャイナ教や仏教哲学では、存在することは、相互存在することととらえる。ヒンズー教は、君あり、故に我あり、という。
    ・分離され、関係を持たない自己など存在しない。しかし分離されているか関係しているかというのは味方による

  • 「美しく、役に立ち、長持ちするものを作ることを学びなさい。」という
    著者のお母さんの言葉が一番心に残りました。
    https://rug-lover.jugem.jp/?eid=285#gsc.tab=0

  • 2021.62
    シューマッハカレッジのサティシュさんの本。
    ・善良を行う(行為)ということだけでなく、善良である(存在)、ということが大切。
    ・そのためには自然とのつながりが大切。
    ・全てのものは自分と相互関係、一つの地球共同体。

  • 西洋の二元論的世界観が、対立を深め、今日の世界の危機を招いている。インドで生まれ、イギリスで暮らし、洋の東西を知る著者が、分離するのではなく、全体を見る哲学を説いた書籍。

    ルネ・デカルトは、精神と物質、心と体を分け、世界を分析、分類する対象物の集合として捉えた。この二元論は、西洋文化の支配的パラダイム(理論的枠組み)となっている。

    二元論的世界観では、人には個別の自我があり、他者とは無関係に自分の意志で行動できると考える。これは「分離する哲学」である。
    一方で、全体を見ようとする哲学もある。例えば、木を木として捉え、幹、枝、葉、花の集合とは見ない。これは「関係を見る哲学」といえる。

    「分離する哲学」では、個人は自らの利益を得ることだけを奨励される。この終わりなき獲得競争は、不安をもたらす。今日、不安や不信が、私たちの生活を支配しているが、これは、私たちが他者と深い関係を持たなくなったからだ。

    「関係を見る哲学」では、人は他者がいて初めて存在できると考える。これをヒンズー教徒は、「ソーハム(彼は我なり)」、「君あり、故に我あり」という言葉で表現する。

    世界中で起こっている対立は、個人や共同体、社会や国家などが、それぞれ個別の「自己利益」を追求していることが原因である。私たちは自己利益ではなく「共通利益」を求めるように変わらなければならない。

    地球を守ろうとする環境保護運動も、多くの場合、人類の利益を優先する二元論的な世界観に基づいている。だが、必要なのは、自然を守ることだけではなく、すべての生命の神聖さを認識し、畏敬の念を抱く「敬虔なエコロジー」である。

  • ・イスラムの偉大な思想家と呼ばれる方の言葉が沁みる!
    「自らの平和と尊厳と自由を見つけるために世界中を駆け回る必要はない。それは我々のうちにある。(中略)平和とは精神状態であり、存在のあり方なのだ。(中略)」(p231)

  • サティシュ2冊目。
    サティシュがいまの思想に至るまでに、人や思想とどのように出会ったかがわかる本。

    ソーハムの世界観/種から生長する過程で、殻を脱ぎ、ほかのものと一体となる/マントラ→心の解放/オウム→肯定の意味/シヴァ神の息子ガネーシャ→一家に幸運をもたらす/ダルマ→行為から存在への善の旅/すべての生き物に親切に/共感と非暴力の実践/無自覚な自分の感情、言葉、行為に注意を払う/知識はすでに自分のなかに存在する/サルヴォダヤ→生命を中心とし、すべてを慈しむ/ヤグナ(補給)によって土を育て、ダーナ(贈る)によって社会を育て、タパス(自分への補給)によって自己を育てる/伝統という無償の贈り物/タパスの四つの方法→ヴィナヤ(謙虚さ)セーヴァー(奉仕)スワダヤ(学び)ニドラー(睡眠)/国境などを含む、いろいろな線引きが争いのもとになる/自然や動物より人間を優位と考えることが暴力の根源/軍備競争でなく、平和競争を/貧しい人々に対する態度を根本的に変える必要がある/ジハードは自分の中での葛藤、自尊心の克服のこと/怒りは自分も他者も傷つける/「芸術のための芸術」は存在しない/頭脳労働と肉体労働の間に上下はない/芸術はビジネスではなく生き方/洗い物を出さないほどきれいに食べる/自給自足の経済ネットワークを/伝統社会の多くには所有という概念は存在しない/自己利益という動機から共通利益の認識への移行

  • 素晴らしい内容です。多く同調するので個人的には刺激は少なかったけれども気持ち新たになりました、世界を先導する人たちにこそ考えて頂きたいです。

  • 永久保存版。

  • 「あなたがいるからこそ、私が存在する」
    我思うだけでは、我は存在しない。
    人と人のつながりの中にこそ自分が存在することを、
    実践的な宗教人の立場から著述。
    クリシュナルムティー、マーチン・ルーサー・キング、フリッツ・シューマッハーなどとの、本音対談も圧巻。

  • 同じ東洋だからか、
    自然が豊富だからか…
    考えとして受け入れやすいものが沢山あった。
    全体性、多元論、自然・・・
    宗教的な説明は簡潔でわかりやすいし、筋もとおっている。
    それでいておしつけがましいものではない。
    今まで言葉としてわかってたいた物が、
    イメージとして入りこんできた瞬間だった。
    だてに数百年語り継がれているものではないという感想。
    やっと、一つの物体が宇宙にまで繋がっていることを感じれた。
    大きな出会い。
    自然は偉大だ。
    そこから離れているがタメに、宇宙への感覚から遠ざかる。
    ほんとに地方に住んでいてよかったと思った。

    サティシュがいるから、自分がいる。
    みんながいるから、自分がいる。
    君あり、故に我あり。

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著者プロフィール

1936年, インドに生まれる. 45年, 9歳で出家し, ジャイナ教の修行僧となる.
73年に英国に定住, 以来グリーンムーブメントの中枢的雑誌『リサージェンス&エコロジスト』の主幹編集者として活躍する. また教育者として, 91年に革新的な教育の場であるシューマッハー・カレッジを南デボン州に創設し, 平和運動と環境運動の実践に生きる. 邦訳された著書に次のものがある. 『君あり故に我あり』(2004年), 『宇宙に融けこむエコ・ハートフルな生き方──スピリチァル・コンパス』(2009年).

「2017年 『人類はどこへいくのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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