日本共産党の研究(三) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061830431

作品紹介・あらすじ

なぜ、共産党を支持できないのか。民主集中制という名の現在の宮本顕治独裁政治を批判する著者は、その源流である戦前の共産党成立から崩壊までの全歴史に遡(さかのぼ)って徹底的に解剖する。克明な取材による新事実を加え、政治と権力悪の本質に迫った企期的な通史。全3冊。第1回講談社ノンフィクション賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • #3256ー79

  •  最終巻では、リンチ共産党事件から党壊滅および軍部独裁の時代まで、またリンチ事件と復権問題に関する付録と資料が収録されている。第二巻の終わりで、佐野学と鍋山貞親、さらに河上肇が転向したことに触れた。それだけではない。スパイMをきっかけにスパイ査問が広がり、体制側による大量検挙、党にまつわるスキャンダルと、立て続けに打撃を与えた。これらの原因が合わさったことで、組織の足場を失ってしまい、これまでのような党の再建は厳しくなった。この頃まで、人民戦線運動が活発であったが、1936年〜38年に共産党系、労農系ともに、弾圧されてしまう。これにより、ファシズム体制が形成される。それ以降は第2次世界大戦が終焉するまで、まともな活動はできなくなった。
     本書の後半では、リンチ共産党事件の真相について、著者なりの視点で考察する。この事件で死亡した小畑達夫の死因について言及されるが、そこで触れられた「ショック死」に関する知識がわかりやすい。そもそもショック状態とは、末梢血管系の循環状態が乱れ、血液循環障害が起きた状態で、その発生の原因となるものは、火傷や外傷など、さまざまである。そして、これらが作用が強いと、死をもたらす、いわゆる「ショック死」となる。

  • 第三巻では、リンチ共産党事件の真相にせまります。また巻末には、著者の記事に対する日本共産党からの批判に応答をおこなった付録および資料などが付されています。

    「スパイM」の暗躍時代以降も、特高によるスパイ活動はおこなわれ、大泉兼蔵が野呂栄太郎の信頼を獲得して、共産党の中心部に入り込んでいました。しかし、袴田里見が大泉と小畑達夫がスパイではないかという疑いをいだき、宮本顕治らを説得して、両者に対する査問がおこなわれます。本書では、この査問の経緯と小畑の死因との関係、さらに小畑がほんとうにスパイだったのかということについて、くわしい検討をおこなっています。

    その後、共産党はスパイが組織内に入り込んでいるのではないかという疑心暗鬼から瓦解への道をたどっていきます。共産党の指導のもとにあった全協との対立がその傾向に拍車をかけますが、著者はそこに戦後の日本共産党にまでつづいていった問題点を見ようとしています。

    巻末の「付録」では、宮本が釈放された経緯についても取材・調査がおこなわれ、その結果が示されています。

  • 本巻における主張は前2巻と変わっていない。

    本巻で読むべきは、本編の後に収録されている資料だろう。裁判記録や鑑定記録まで収録されている。

    さらに参考文献・資料も注目すべきである。本書の執筆にあたり、膨大な文献・資料に当たっているだけでなく、多くの関係者に対して取材を行っている。おそらく当時、共産党の中枢にいた人物までは取材できなかったのであろうが、可能な限りの人物にあたったと思われる。

  • 最終巻。いよいよ宮本顕治によるリンチ共産党事件の詳細が語られる。
    この事件のあと戦前の共産党は完全消滅する。

    宮本顕治。
    わたしの共産党のイメージは、やはりこの人が議長で、書記長が不破哲三という人。
    99歳で2007年に亡くなったそうだ。

    現委員長の志位和夫は宮本家の家庭教師だったそうです。ふ~ん。

    立花隆のこの研究は戦前で終わっていますが、戦後編も読みたかったな。

  • 昭和58年刊行。戦前の日本共産党の栄枯盛衰を論じるノンフィクションの3巻。最終巻。リンチ共産党中心に、党の壊滅までを論じる。

  • 疑心暗鬼になった党員と党がリンチ事件という凄惨なフィナーレを迎える。僕は直視できんかった。

  • スターリニズムにつけられた民主集中制という日本共産党の母斑は、今も健在のよう。
    全然これとは関係ないが、宮本顕治の兄は農業をやっていて党とはまったく関係なかったが、顔だけはそっくりだったそう。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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