- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061830592
感想・レビュー・書評
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泥の河~蛍川~道頓堀川川を見ながら、おとなになった
宗右衛門町に映画『道頓堀川』の舞台のモデルとなったジ々ズ喫茶「オグラ」がある。ウッドを基調にした温かい雰囲気の店だ。
大きなスピーカーから流れるジャズを聴きながら、本を読む。窓からは、噴水とネオンで美しく輝く道頓堀川が見える。水面に己の虚像映した青春時代宮本輝はエッセイ集「二十歳の火影」の冒順に、こう書いている。
『「泥の阿』は、大阪の堂島川と土佐堀川がひとつになり、安港川と名称を変えていく地点を糾合あった。昭和〕〒年の詣であるノ深く幅広く、いつも黄土色で、洩航するポンポン船のかたわらを鰹や鮒が横切っていくのんびりした川であったが、身元不明の溺死体や、まだへその緒のついた赤子の死体などが、ゆらゆらと流れてくることも珍しくなかった。 (略)数
年後、水の都から鰹や鮒は姿を消した。メタンガスのあぶくと塵埃と、ネオンの寒々とした色に覆われた汚れた運河が、私の前を流れるようになっていた。そして南の賜り場に生きる無頼の人間達の難い生温かい熱情に包まれて、私はおとなになっていったのだ。死人の回めような道頓堀川の水面に己の虚像を映しながら、私但青春の一時期を酒と煙草と賭け事でごしてしまった。」『泥の河」の子どもが『蛍川」の少年になり「道順搦川」の青年になったのだ。主人公はそれぞれの川を見ながら育ち、生きてきた。
私は店を出て、大安衛門橋まで引き返す。今は無き角座の前に、古びたビリヤードがあったような気がするが、この辺りは随分変貌しているので確かめようもない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮本輝さんが○○○○○ということも知らずに何度も読み返したものだ。
何度読んでもしーんというかしみじみというか、よかったなあ。 -
短編集みたいに中身がつまった、濃いエッセイ集です。
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てるてるの話。