- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061837805
作品紹介・あらすじ
謎の絵師といわれた東洲斎写楽は、一体何者だったか。後世の美術史家はこの謎に没頭する。大学助手の津田も、ふとしたことからヒントを得て写楽の実体に肉迫する。そして或る結論にたどりつくのだが、現実の世界では彼の周辺に連続殺人が起きていて-。浮世絵への見識を豊富に盛りこんだ、第29回江戸川乱歩賞受賞の本格推理作。
感想・レビュー・書評
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ミステリー作品を読みたくて手にしたが、前半大部分を占める写楽の謎解きがかなり興味深い内容だった。
原田マハさん作品で印象派に興味を持った方は本作品で浮世絵にもハマるかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
終盤まで、「ミステリー?」と、いう位事件よりも写楽の正体にせまる内容。この説が本当に浮世絵の世界で論じられている説なのか、そうでないのかわからないがこれまで読んだ写楽絡みの話のような華やかさが感じられなかった。
それから、中心にいる登場人物以外のキャラクター設定が薄いので記憶に残りづらく少々読みづらいかも。 -
ミステリーの様で、焦点はミステリーじゃなかった。
表題の写楽の正体に時間を掛けて迫っていく前半はとても興味深かったが、人物の相関関係が入り乱れ、興奮する登場人物達と読み手の温度差に違和感を感じた。
乱歩賞を取っているが、後年の重厚な筆力の方が好みかもしれない。 -
ラスト、ある人物の独白気持ちいー
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高橋先生の浮世絵への造詣の深さが存分に感じられる作品。
前半は写楽=昌栄説の立証のための証拠集めであるが、少しずつ足りないピースが埋まっていくのが非常に楽しいシーン。良平と冴子の仲睦まじいやり取りもあり非常に軽快に読み進みられる。ここはザ高橋作品といった感じで理詰め理詰めで可能性を削っていくのが面白い。正直、馴染みのない人名が多く、振り返りながら読むことになったが、1つの学問書を読んだ気になれるのでこれはこれであり。
後半以降で、2つの死をめぐり、事件が発展していく。利権の塊であり、とても醜い学閥の世界。嵯峨と西島、どちらかは良い人かと思っていたが、どちらもかなりの悪人で逆に衝撃。スッキリとした終わり方ではないが、写楽=昌栄説が捏造にもかかわらず実は真実に迫っていた可能性があるというのは非常に皮肉的で、必死にこの偽説を追っていた良平目線としては少し溜飲が下りる思い。
…オレ達は浮世絵から見れば、通りすがりの人間でしかないんですよ-放っておいても、浮世絵は自分だけの力で遺り続けていったのに(348p) -
浮世絵シリーズ第1弾のテーマは写楽。
何かで読んだ北森鴻氏の蓮杖那智シリーズと共通点があるという意見には確かに頷ける。
膨大な調査の元に書かれているので興味深い内容なのだけれど、馴染みがない固有名詞が多すぎて作品の世界に入り込めなかったかな。 -
NO.1401
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かなり本格的な歴史ミステリー。現実の事件との融合もなかなか巧み。
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写楽殺人事件 高橋克彦 講談社
前半は浮世絵史を紐解くようなドキュメントタッチでワクワクさせられ
後半は推理小説そのものでドキドキすることになる
この小説は
わずか10ヶ月間彗星の如く登場して消えた
写楽が何者であるかの謎解きと
完全犯罪を解明する探偵小説の両方を
楽しめるコリに凝った欲張りな設定である
写楽の名に惹かれて読み出した身としては
歴史の謎に引き込まれ盛り上がったところでいきなり詐欺と復讐と殺人に物語にすり替わり
肩透かしをくらう後半の展開でガッカリはしたものの
結局最後まで読まされてしまうことになったのだが
夢を壊されたようで読後の気持ちの整理がつかないままで何とも苛立たしい