椿姫を見ませんか (講談社文庫 も 17-2)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061844087

感想・レビュー・書評

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  •  僕が歌劇“椿姫”を、タイトル通りに誘われたなら、どんな物語ですかと尋ねてしまう。
     著者は、東京藝術大学美術学部出身で、美術全般に造詣を持っておられるようです。
    “椿姫”の原作は、デュマ・フェイスによって一八四八年に書かれ、当時パリの社交界の艶名をうたわれた娼婦マリー・デュプレシをモデルとしたものである。その後戯曲化されヴェルディが作曲した“ラ・トラヴィアータが初演されました。”道を誤った女“という意味で、日本では”椿姫“と呼んでいます。
     物語は、新芸術学園(大学)で主人公守泉音彦(美術学部絵画科日本画専攻四年)は成績優秀で特待生として在籍する。相方は腐れ縁というか数年来守泉と同級生である鮎村尋深(音楽部声楽科)が学園内で繰り広げる騒動に大きく関わってくる。
     ある日、声楽科随一の美女と誉れ高い“若尾謡子”が椿姫の歌唱の途中で倒れ亡くなった。毒入りのキャンディで殺害されたのだ。
    守泉は、同級生だった謡子のために真相を見極めようと探偵を始めて、謡子の自宅に訪れた。
    彼女の母親に話を聞いてみると「警察には話していないのですけれど、謡子は父親の復讐を果たそうとしていたのです」と打明けられた。謡子の父若尾冬樹は美術館の館長で、個人のコレクションも名品を揃えていた。
     二十三年前、身重の妻が心臓病で入院した時、かさむ医療費に苦慮した彼は、愛蔵の品々を手放さなければならなかった。そこに新芸学園の付属美術館が買い手として名乗り出た。
     その時、冬樹が所有していたエドゥアール・マネ作“マリー・デュプレシの肖像”が新芸教授によって鑑定が行われた。その結果、マネは贋作と判定されたのである。冬樹は妻に語った「新芸ですり替えられた----。」要は美術講師に贋作をでっちあげられた。マネが真似されたのです。
     その後、揉み合いになり警察の厄介に、彼は失望の末、妻が死にかけている病院の屋上から飛び降りて自殺したのである。妻は、奇跡的に回復し、数か月後娘(謡子)を産んだ。
     歌劇の舞台裏の騒動や、絵画の真贋の真相等は読んでいて小気味好い。
     この小説は、複雑な人間関係のもつれが物語の根幹をなしているが、だからと言って難解ではなく読み解く程に面白さが増幅し、途中で飽きてしまうことがありません。特に後半の緊迫感は手に汗を握る。歌劇(オペラ)椿姫を知らなくても読み易く、ミステリーと学びの面白さが興味深い作品です。
     最後に、大どんでん返しは、一回とは限らない。
     実におもしろい。

  • 江戸川乱歩賞受賞者の小説だから固いのかなあと思ってたけれど、軽い文体で暗くないストーリー。演劇がテーマで、僕はあんまり見ないからどうなるか、と思ってたけど、案外読みやすくて驚いた。犯人が捕まっても、まだまだトリックは終わらないのが良い展開だと思う。読者に考えさせる力をつけますね。

  • オペラ『椿姫』を聴きながら再読したい。

  • 絵画科と音楽科を持つ芸大が舞台。オペラ『椿姫』と椿姫のモデルを描いたとされるマネの絵画『マリー・デュプレシの肖像』、大きなアートモチーフが絡むユニークなミステリー。森雅裕らしいハード・ボイルド・テイスト、独特なユーモアが程良く配されてます。

    物語の幕開けはデッサンの授業シーン。生徒たちの輪の中には、全裸でモデルになっている男子学生…というショッキングな先制パンチをくらう。これは本題には関係のないエピソード、ではあるけれど、こんな芸大の日常、足を踏み入れたことのない一般人にとっては新鮮で刺激的な世界を、物語中でたくさん覗き見できる。

    この本を初めて手にした時に、その後書きで、森雅裕が芸大出身で音楽を専攻していたという事実を知り、なるほどなぁと感じ入ったことを思い出す。‘中’を知っている人だからこそ得られる発想と描写が、この物語の宝であると思う。

    反面で、これほど特殊な舞台設定でありながら、門外漢の我々を「面白いっ!」と夢中にさせる、純粋なストーリーテラーとして、改めて森雅裕を受けとめた1冊。

  • 音楽家シリーズ第2弾。

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