- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061850446
作品紹介・あらすじ
失われた過去の記憶が浮かび上がるにつれ、男はその断片的"事実"に戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺した男なのか?そしていま若い女との幸せな生活にしのび寄る新たな魔手。記憶喪失の男を翻弄する怪事の背景は?蟻地獄にも似た罠から男は逃げられるか?希代の名探偵・御手洗潔の最初の事件。
感想・レビュー・書評
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島田荘司の第1作目の小説とのことです。
いまさらの読了ですが、実は「御手洗潔」物ということで勝手に本格推理小説と思いこんでいたら、全然そんな感じはなくて、ミステリーというよりはハードボイルド・タッチのサスペンスという趣でした。ご本人の「あとがき」によると、当時のプーのような生活の中からそれをイメージして生み出された小説だったようです。
記憶喪失となった主人公が事件に巻き込まれ、ひたすら葛藤する内面の心理を描写しながら、怒涛のように突き進んでいく展開に目が離せなくて面白かったです。衝撃的な出だしから始まり、緩急をつけた物語進行、そして中盤の「日記」のあたりからの圧倒的な展開につい引き込まれてしまいました。著者も「あとがき」で語るような詩的な表現があるかと思えば、読者を一気に物語へ誘う力強く重厚な展開と筆致に大いに魅せられました。
しかし実のところを言えば、中盤の「日記」のあたりからおぼろ気ながらプロットが察せられてしまって、まあ、「異邦の騎士」御手洗の颯爽たる登場のところではすでに予定調和的な感じとなってしまっていたのですが(笑)、しかし、そうとはわかってはいても、そのとてつもない安心感に胸をなでおろした次第です。(笑)
ちょっと普通ではあり得ないような状況展開はストーリーありきとしてまあ許容範囲でないかと思います。
著者はその後、『占星術殺人事件』で新本格物の旗手として一世を風靡しますが、その前段階の邂逅という意味でも思わず微笑んでしまうラストでした。
その後の短編でもたびたびジャズ音楽が登場しますが、本作でも登場するジャズ音楽に浸ってみたくなりました。 -
刊行は4番目ですが、御手洗潔の最初の事件。
なんとも悲しい話。 -
全く前情報無しに読んだから吃驚した!!
まさか彼が彼だとは・・・後半はもしかしたらって気にもなったけど思いもよらなかった。
でもこのタイミングで読んだから自分としてはより面白かったかも。
これから見る御手洗モノも楽しみだ。 -
そうだろうなと思ったらやはりそうでしたか。
こんな始まりだったんですね。
読み手の推理をことごとく打ち砕く結末が面白い。 -
写楽、アルカトラズが面白かったから、昔の作品をと。
御手洗シリーズは読んだこと無い。
記憶消失者が自分の記憶を探す話。
設定が面白い&読みやすい。
結末は若干無理があるけど、引き込まれる文章でした。 -
記憶喪失になっていることに気づいた人物の視点で進んでいく、ミステリっぽくない形式のミステリ。過去の断片が明かされる度に、主人公と一緒に怒ったり悲しんだり、感情を揺さぶられ続け、すべての真相が明らかになるころにはもうヘトヘトになっている。
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解説に処女作であり、当時の生活の風景がすべて詰め込まれている、そしてもうこのようなものは書けないとあった。素直なのに尖っていて自信に満ちている。変わった人だなぁと思った。小説もまさに、という感じで、後半の解決部分はものすごく引き込まれた。
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ドキドキハラハラする展開が一気に押し寄せて来ました!
はじめの方は現実から目をそらしている主人公という感じの話だったために、だらだらと変化の少ない日常が描かれており何度も眠くなりました。
しかし、ある出来事を境に主人公の環境が一変してからは、もうとにかく続きが早く読みたくて読みたくて。
読めない時間がもどかしかったですね。