絵合せ (講談社文芸文庫)

著者 :
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960480

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  • 1967~71年に執筆された10作品を収録。65年の『夕べの雲』と比べると、自然の描写が少ないように思われたが、それだけ周囲の開発が進んだということだろうか。長女結婚間近の日常を綴る表題作が最も読みやすく、最も印象深かった。

    「静物」や『夕べの雲』に登場した小道具やエピソードが時々再登場していて、気づいたときは「おっ」となる。そして、時の移ろいが心に深く入り込んでいく。

  • 2013/07/03 再読。初めて読んだときは丘の上の一家の和やさをひたすら堪能していたのけれど、今回は一家の日常が想定外の天然であったことにびっくり。父親の物思いも『夕べの雲』より自由かつ個人的で、非常にふわっとしている。

    最後に収録されている「絵合せ」は賞を取っているだけあって、(持ち味である)とりとめのなさに不安を感じない。でもほかの作品はあまりにふわふわしているので、地味な私小説のふりをして本当は新しい試みなんだろうか、とちらりと勘ぐってしまった。父親であり表現者である語り手の、重なっているけれど同一ではない二重の視線を常に感じたので。

    彼が家族を見つめる視線は、目の前の彼らを通り越していつか訪れる別れと既に別れてきた死者に向かい、そこから戻ってからあらためて像を結んでいるような気がする。庄野潤三の家族小説ににじむ別れに対する切実な思いに、いつもいつも打たれてしまう。

  • 1967年から71年にかけて発表された、著者の短編作品10編を収録しています。

    長女の和子と、明夫、良二という二人の息子とともに暮らす家族のすがたがえがかれています。最後に収録されている「絵合せ」では、和子が他家に嫁ぐことがきまっている家族の一コマがえがかれていますが、それ以外の諸編でも、二人の息子の成長していくようすがうかがわれます。いつまでも変わることのないように見える、何気ない家族のひとときのなかにも、意識に上ることのない無数の変化をはらんでいることに気づかされます。

    「星空と三人の兄弟」や「さまよい歩く二人」では、家族の日常の出来事を、グリム童話の話になぞらえつつ語られているところが印象的です。著者にその意図が明確にあったのかという点については疑わしいものの、ゆっくりと、しかし確実に変化しつつある現実の家族のありようと、永遠に変化することのない物語のなかの時空が交錯しているかのように感じられました。

  • 電車の中でさらりと読みとばしてしまった。

  • 残念ながら「夕べの雲」の面白さには及ばなかった。「野鴨」も同様。

  • ほのぼのとした印象。

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著者プロフィール

(しょうの・じゅんぞう)
1921年(大正10)大阪府生まれ。九州大学東洋史学科卒業。1955年(昭和30)『プールサイド小景』により芥川賞受賞。61年(昭和36)『静物』により新潮社文学賞受賞。65年(昭和40)『夕べの雲』により読売文学賞受賞。日本芸術院会員。2009年歿。

「2022年 『小沼丹 小さな手袋/珈琲挽き【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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