日曜日たち

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 512
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062120043

作品紹介・あらすじ

きっといつかは忘れてしまう、なのに忘れようとするほど忘れられない。ありふれていて特別な、それぞれの日曜日-。東京ひとり暮らしの男女5人、それぞれの物語に同時代の「生=リアル」を映す、長篇最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わると、ちょっぴり雲が晴れるというか、スッと顔を上げたくなるような、前を向いて行きたい気持ちになる。

  • 日曜日のエレベーター・日曜日の被害者・日曜日の新郎たち・日曜日の運勢・日曜日たち
    という五つの短編からなるこの本は、一見ばらばらな短編集かと思ったが、そうではなかった。
    一話ごとの内容に関連性はなく、それぞれが、切なく、ほろ苦い回想を交えた話なのだが、何故か必ず男の子の兄弟二人が全編に顔を覗かせる。
    初出は「小説現代」2002年六月号~2003年六月号。
    三ヶ月毎の掲載なので、もちろん一話ずつの短編として読んでも完成品。
    それでも吉田修一氏本人は連作として最後への伏線を張ったのだろうか、最終話「日曜日たち」のラストシーンは際立っている。
    だから、最後のタイトルだけは「日曜日の───」ではなく「日曜日たち」として終結させたように思う。
    そう捉えれば、テーマは「忘れたいほど哀しいこともあるが、けして忘れてはいけない大切なものもある」に行き着くのか。

    まさかこの作品で泣くなどとは思わず軽く読んでいたのに、最後の2Pで、突然胸が締め付けられ、涙腺が緩み、文字が擦れて見えた。そう、たった最後の2Pで。いや、たった最後の三行で。
    地方から、夢と希望を抱き東京へ出てきた人間が、志を果たすことなく故郷へ戻るときの歯がゆく切ない思い。
    最後の三行は、その後悔にも似た無念さを見事に消し去ってくれる。
    現在、短編を書かせたら日本一の名手と個人的には思っている、さすが吉田修一という秀作でした。

  • 世間はせまい

  • 14/06/22

    吉田さんはえぐるよね。ひとの内面えぐるよね。明日は月曜、憂鬱な日曜日。だけどうっすら光が差してる。そんなかんじ。すき。

  • すごいどんでん返しとか盛り上がりは無いけれど、読後に清々しい気持ちになれて、こういうのもいいなと素直に思った。全編を通して登場する兄弟が気になり読み進めてしまう。いろんな意味で大事な登場人物だったのだなと最後に気付いた。(2013.11)

  • 最後の2つが、好きだな。
    田端さんなかなかいいと思う。

  • 短編集かと思ったけど、家出してきた兄弟が繋がっていたり、なんとなくパッとしない人が主人公だったりと、いろいろな角度から書かれた長編作品としても読めた。

    ひとつひとつ読み終わって、モヤモヤするなと思ってたけど、あとからジワジワくる感じ。

    ドラマティックなことは決してないけど、これこそが日常だし、なんとなく自分と重ねられるところもあった。

    日曜日のエレベーター、日曜日の被害者、日曜日の新郎たち、日曜日の運勢、日曜日たち。

    よくありそうでなさそうな、あとから思い出せなそうで思い出しそうな、そんな話たち。

  • 5人のそれぞれの男女の日曜日。

    パチンコ屋の駐車場にいた二人の兄弟にたこ焼きをおごったニートの渡辺。
    旅行の帰りの新幹線で友人の彩と千景ともめた兄弟を見ていた夏生。

    九州から親戚の結婚式のため上京してきた父と、食事に行く前に出会った兄弟に寿司をおごった健吾。
    母はいるかと、家に尋ねてきた兄弟を荻窪まで送ってあげた女についていくだけの田端。

    恋人のDVから逃れた自立支援センターで乃里子が出会った行き先のない兄弟。

    他愛のない日曜日、どうしようもない自分を抱えて、やり過ごす毎日の中で、出会った幼い兄弟。
    その兄弟の行方が気になって読み進んでしまう。

    著者の作品は読みやすいからただよく読んでるけど、
    ちょっとラストが心温まって予想外の一冊)^o^(

  • 小学生の兄弟をキーにした連作短編集。
    「日曜日のエレベーター」「日曜日の被害者」「日曜日の新郎たち」「日曜日の運勢」「日曜日たち」の5編。それぞれ登場人物はバラバラだが、キーになる兄弟が登場して、彼らのその後がわかっていくという作りになっている。

    相変わらず、うまいと思う。自分とは年代も境遇も性別さえ違う登場人物でも、あっという間に自分が主人公の心の動きにシンクロして、急な場面転換や時間の移行にも全く違和感なく入り込んでいける。だから引き込まれるし、人物の気持ちに労することなく寄り添うことができる。

    「日曜日の新郎たち」と「日曜日たち」がすごく良かった。
    「~新郎たち」では読み終えて思いがけず涙が出てしまった。
    最終話を読んで、ちょっと決心できないでいたことがあったのだが、それに向かってみようかなという勇気が湧いた。感謝。

  • それぞれ違う主人公で、でもゆるやかに繋がっている短編集。
    どの主人公も、とびきり幸福というわけではないものの、一生懸命その人なりに、周りの誰かを幸せにしたいと願っている。その思いの集合がどこか知らないところで、小さな奇跡を生んでいる。。。楽観的かもしれないけれど、そういう可能性を少し信じてみたくなる一冊。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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