出口のない海

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062124799

作品紹介・あらすじ

甲子園の優勝投手は、なぜ、自ら「人間兵器」となることを選んだのか。
人間魚雷「回天」――海の特攻兵器。脱出装置なし。

甲子園の優勝投手・並木浩二は大学入学後、ヒジを故障。新しい変化球の完成に復活をかけていたが、日米開戦を機に、並木の夢は時代にのみ込まれていく。死ぬための訓練。出撃。回天搭乗。――しかし彼は「魔球」を諦めなかった。
組織と個人を描く横山秀夫の原点

感想・レビュー・書評

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  • なんでもない日常を過ごしていると、
    ホントに戦争あったんやな~っていう感覚。今の日本の平和があるのも、戦争を選択した過ちがあったからこそ。もう二度と戦争しないように。

    思考を操作され、家族のため、日本のため
    特攻して死せよ。

    死にたくないと声を挙げれば、
    非国民と殴られ、思考を矯正される。

    その時代では、
    国のために死ぬことが正義だった。

    今怠惰に生きている毎日は、
    祖先が作ってくれた時代なんだなと
    気付かされました。

    ありがとうございます。

  • 作家が渾身の力を込めて 書かなければならなかったものがここにあります。読み手の私は、それを知る喜びとともに、痛みを感じながら全力で受け止めようと思いました。

    人間魚雷、回天(カイテン)。
    爆薬を満載した 改造魚雷に乗り込み、たった一人 暗い海の中を操縦し、敵の艦船の横腹に搭乗員 もろとも 突っ込む壮絶な特攻兵器。

    第二次世界大戦時、海軍所属の、ひとりの心優しき青年が、なぜ自ら志願して“鉄の棺桶”と呼ばれる回天に乗り込んだのか?

    彼は元甲子園投手、並木浩二。大学でも野球部に所属。魔球の開発中だったのに、なぜ?

    その並木の視点で壮絶な心境が解き明かされていきます。


    作者は並木が乗り移ったように懊悩し、苦しみ、揺さぶられながら描いていったのでしょう。読み手にも充分伝わってきます。


    今 世界ではいくつかの国が戦争の真っ只中です。 並木のように、死にたくなくても死を背負わされた青年が何人もいるでしょう。
    だから、本書 が伝えたかったことは、生きている者たちが覚えておくということ。

    回天という人間魚雷があったことを。
    並木のように、積極的に志願したわけではないのに搭乗しなければならなかった若者たちのことを。

    平易な言葉で綴られているので難しい内容ではありません。作者が、読みやすいように工夫したことが伺えます。読後に明るい光を感じさせる余韻がいいです。

  • 最期があっけなかったのが、また辛かった。何れにしても、いろいろ理由を付けて死んで逝くのが戦争だ。もっと自分を大事にして欲しい。

  • 人間が兵器の一部になり死んでいく。なんと恐ろしい兵器なのか、回天とは。しかも兵器の一部になるのは若い男性。夢も希望も打ち砕かれて祖国のために。感情を揺さぶられ、死を身近に感じて、やがて死ぬ理由を見つける。読んでいるこちらの感情も揺さぶられた一冊。回天の恐ろしさ、戦争の愚かさ、そして夢を成し遂げた並木の底力。涙無しには読めない。そして回天のことをもって知りたい。

  • ちょっと綺麗すぎる戦時モノだが大学球児達が否応なしに戦争に巻き込まれていった話が人間魚雷「回天」を軸に語られる。かつて甲子園で優勝した投手が肘を壊して しかし魔球を創る夢を追い続ける。そんな彼もチームメンバーも理不尽な戦時体制の中に引き込まれて行く。終わりは絵に描いたようなエンディングですね。

  • 大学で野球部に所属していた並木は、太平洋戦争の学徒出陣で人間魚雷回天に乗ることになった。
    現在も生きた同窓生が再会を機に語った並木の思い出と、戦争の記憶。

    永遠の0で読んだ神風特攻隊に続いての回天による神潮特攻隊の話。
    今でもいるような、普通の大学生達の運命が、戦争により大きく変わってしまったという事実がとにかく辛い。
    前書にもあったように、今では特攻を志ざした人たちがお国のためにと、積極的に志願した訳では無いことは充分理解して読みましたが、並木の弟のように、学校での教育の元、軍国主義に染まりきった子供達も多数いたことに胸が痛みます。
    戦争は繰り返されてはいけない大きな過ち。
    とても読みやすい本でした。
    もっと多くの人に読んでもらいたい本だと思います。

  • 最初は野球メインでスポーツに疎い私はよく分からない部分もありましたが、読み進めていく内に戦局が悪化する描写がしんどかったです。
    誰が主人公だっけ?と思うほど心理的描写はなかったように思います。でも回天に乗って亡くなった方の本当の心情なんて分からないから当たり前なのかなと思います。
    普段ミステリーばかり読んでいるので特に驚きがあった訳ではないですが、読んでよかったです。

  • 一気に読んでしまいました。神風特攻隊の話は永遠の0で読んだことありましたが、人間魚雷の話は知らなくて、涙がとまらなかったです。こんな時代の日本、胸が痛くなります。子供にも、小学6年生の娘にも内容を話して聞かせると、自分で読んでみると娘に渡しました。

  • 太平洋戦争で日本軍が開発した人間魚雷回天という特攻兵器に乗り組むことになった青年の物語。

  • 太平洋戦争で日本軍が開発した人間魚雷「回天」という特攻兵器に乗り組むことになった青年の物語。
    確か映画にもなりました。

    戦争を舞台とした小説はあまり読まないんだけれど、これは戦争に巻き込まれていく青年達の心模様を良くとらえていると思います。

    横山作品は短編じゃなくても充分おもしろいです。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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