ジパング再来 大恐慌に一人勝ちする日本

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062156158

感想・レビュー・書評

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  • 最近になって三橋氏の本を読むようになりました、以前から日本悲観論よりも日本を肯定的に書かれている本を読むことに興味があったのですが、彼の著作においては、実際に誰でも入手できるデータを使用して説明していること、さらに日本と諸外国との比較を同一種類のデータを用いて説明しているところに、私としては独自性を感じます。

    日本は国際社会の中で位置づけられ、為替もその関係から決まってくるとすると、GDPを構成する要素に何があって、その構成要素が諸外国と日本と比較することで位置づけが明確になってくるという彼の考え方には納得させられるものがありました。それらを考慮すると、韓国経済が危ないというのも実現して欲しくはないのですが、納得させられるところがあります。

    以下は気になったポイントです。

    ・2009年2月に日本が行った融資はIMFから「人類史上最大の融資(IMF融資可能額:2000→3000億ドル)である」と絶賛されたが、日本では中川氏の朦朧会見のみ報道した(p17)

    ・外貨準備は、自国通貨の為替レートの暴落時に買い支えに使うものであり、自国通貨が暴落する局面でも迎えない限り、あまり役に立たない(p19)

    ・1998年5月にロシア国債金利は150%、1ドル=6.2ルーブルから、1年後には24.2ルーブルへ暴落していた(p31)

    ・アメリカが強いドル政策を模索したことが、アルゼンチンやアジアの通貨危機の原因になった(p33)・アルゼンチンは、隣国ブラジルがいち早くドルベッグ制を離脱し、ブラジルレアルが切り下げられた影響(通貨ペソが対レアルで暴騰)が大きかった(p34)

    ・国家が破綻するためには、前提として、対外債務額が対外債権を上回っている(対外純債務国)である必要がある(p38)

    ・2008年末の日本国のバランスシートによれば、純資産:243、対外純債権(562-321=241兆円)であり、資産超過である(p41)

    ・以上を家計に例えると、父親(政府)が事業のため「あなた:国民」から975万円の借金、母親(非金融法人)も1142万円の借金、あなたの純資産は1000万円、家全体としては、241万円の貸付ている状態(p43)

    ・主要国のなかで公的債務が長期的に減少している国は、存在しないのが現実、ただしGDP比率は減少もしくは一定である(p61)

    ・日本の問題は、金融資産が莫大で世界最大の純資産を持ちながら、名目GDP(フロー)が相対的に伸びていないので、経済の効率性が悪いことが問題(p65)

    ・1998,2000年において名目GDPがマイナス成長になった原因は、公共投資が減らされて民間企業設備投資の激減をカバーできなかったから(p76)

    ・バブル崩壊後の日本は、1)政府負債の増加、2)民間企業の負債増加、3)GDPの数十%の削減、の選択肢があり、日本は1)を選択したということ(p94)

    ・2007年末には、売買されたデリバティブの残高は6京円、地球上のあらゆる実体資産を合計しても0.5京円、年利を10%にした場合、1年間の利子のみで地球上の資産を買占め可能となる(p107)

    ・国債金利が最も安いとは、市場が日本国債について、世界で最もローリスクであると評価していることを意味する(p120)

    ・現在の日本では、国内供給能力が崩壊することが無い限り、ハイパーインフレにはなることができない(p129)

    ・戦後の日本の高度成長を支えたのは、個人消費(民間最終消費支出)や公共投資(公的固定資本形成)を中心としたインフラ投資やそれに伴う企業設備投資である、純輸出が最高となったのは1986年の4%(p150)

    ・リーマンのCDSという賭けに敗れたAIGは、勝者たる金融機関(ゴールドマン、ソシエテ、ドイツ銀行等)に精算金として9.2兆円支払った(p200)

    ・アメリカは1930年の世界大恐慌時代に財政支出を躊躇した結果、GDPが半減した(p227)

    ・中国と日本の個人消費を比較すると、中国は一人9万円(14億人、1.2兆ドル)に対して、日本は229万円(293兆円、1.2億)であり、25倍の差がある(p251)

    ・中国における登録失業率(正式発表分)は、中国国内で都市戸籍を持ち、失業登録をした者に限定され、農村からの出稼ぎは含まないが、それでも4.3%(p252)

    ・日本政府が2009年6月に出した「公的債務対GDP比率の安定的引き下げ」という目標は、ストックとフローの概念も取り込んでおり評価できる(p269)

    ・公務員の人件費削減は、政府最終消費支出を削減するものであり、GDPを減らすことになり、景気対策に充てることは不可能(p272)

  • この人の話は説得力ある〜。
    個人的に教えてほしいのは個人消費がGDPの58%で
    輸出関連はとるにたらないしおそらく日本の成長は
    戦前から続く人口の拡大と消費の相乗効果、その前提になる
    文化・文明なんだと思うけどやっぱりこの島国で
    1億人以上の人口を抱え経済第2位になれたのは輸出を
    トリガーにした海外への展開だと思うんだけどなー。

著者プロフィール

東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、09年に株式会社三橋貴明事務所を設立した。
2007年、インターネット上の公表データから韓国経済の実態を分析し、内容をまとめた『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。その後も意欲的に新著を発表している。単行本執筆と同時に、雑誌への連載・寄稿、テレビ・ラジオ番組への出演、全国各地での講演などに活躍している。また、 当人のブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は7万人、推定ユーザー数は21万人に達している。2012年1月現在、人気ブログランキングの「政治部門」1位、総合ランキング2位(参加ブログ総数は約90万件)である。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/
主な著書に『国民の教養』(扶桑社)、『疑惑の報道』(飛鳥新社)、『2012年大恐慌に沈む世界 蘇る日本』(徳間書店)、『増税のウソ』(青春出版社)、
『三橋貴明の「日本経済」の真実がよく分かる本』(PHP研究所)などがある。

「2012年 『ユーロ崩壊!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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