砂の王国(下)

著者 :
  • 講談社
3.57
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感想 : 152
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062166454

作品紹介・あらすじ

作りだされた虚像の上に、見る間に膨れ上がってゆく「大地の会」。会員たちの熱狂は創設者の思惑をも越え、やがて手に負えないものになった。人の心を惹きつけ、操り、そして-壮大な賭けが迎える慟哭の結末。

感想・レビュー・書評

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  • 大ボリュームのエンタメ大作。ざっと書くと元証券マンがホームレスにまで地に落ち(ここからスタート)そこから這い上がり新興宗教団体を立ち上げ、崩れていく様を描く物語。言うなればホームレス期が1部、宗教黎明期が2部、衰退期が3部といったところか。とにかくホームレス時代の語りが面白い。地に落ちた主人公の絶妙ならざる語りが流石の荻原浩さんと思える。中盤で出て来る競馬の場面は圧巻。ある意味でこの小説の最大の盛り上がり場所かと思われる。

    下巻では勢いを増してきた宗教「大地の会」とは裏腹に主人公である山崎(木島)の心労と体調がどんどん悪くなっていく様子が描かれる。それに加えて彼の過去が小出しに少しずつ出て来るようになり、何故宗教なのかが分かり始める。この物語のとんでもない所は過去の掘り返すことが極端に少ない点。これだけのページ数で主役3人の過去身辺が殆ど描かれないのは異例といってもいいくらい。ラストの不気味さも含めすべてがあいまいで虚構に満ちた作品に仕上げたい荻原さんの考えがあったのかもしれない。人間の「業」をまざまざと見せつけられた怪作。

  • とうとう下巻も終わってしまった。

    最後もう少し何かあったら良かったな。
    もしくは続きを見たい。

    自分で作ったのに大きくなりすぎてコントロール出来なくなり始めた教団に追い詰められる木島。
    犯罪にまで手を染める龍斎。
    中村の過去。

    木島目線のみで進む話だけど、途中一切飽きさせない読みやすさとテンポの良さ。
    予想通りの結末だったけど、次が気になりスルスル読めて面白かった。

    中村君がすごく気になる。強いて言えば中村君目線の話も欲しかったな

  • 上下巻に及ぶストーリーだけど、結局 胡散臭い新興宗教は目論見通りの拡大路線を走り、予測通りに内部から破綻する。そして主人公は振り出しに戻って又も心身すっからかんの道を歩き始めるという お話だね。ちょっと残念だった作品。

  • 飽きる事無く下巻まで読了。

    下巻後半からの木島の現実なのか夢なのか妄想なのか曖昧になってくる描写をもっともっと曖昧にさせてしまえばより恐怖感を煽れたのではないかと。ラストの結末からするに希望を残したかったのかな。

    盲目的に何かを信じる事の恐さ。
    そしてそれが集団になり巨大化していく。
    巨大化していくにつれてどんどん排他的になってくるのはなぜだろう。排除したり敵を作る事でまとまるチカラがより強固な物になる。ベクトルが合う。でもそれでまとまった組織のチカラは所詮砂のようなもの。ただ、宗教となると、それが価値観の全てになってしまう。そうすると自然と攻撃することも排除することも=善い行いになってしまう。正当化しやすくなる。思考停止の恐さ。

    講談社 2010年 
    装画:鳥山由美  装幀:鈴木成一デザイン室

  • ホームレスのナカムラと辻占の龍斎とともに作った宗教「大地の会」は,木島と名前を変えた山崎の戦略どおり,着実に拡大していくが,少しずつほころびも出てくる。

    結末はあっけないが,それまでのエピソードはいかにも実際にありそうなもので,引き込まれる。

  • 元証券マンのホームレスが宗教をつくって這い上がっていく話。
    着実に信者を増やしていく様子は面白い。インチキな手段だけどきっと現実でも使われているんだろうと思うとなおさら。
    ただ下巻のエコレイブの後は斜め読み。破綻の仕方がわかればいいやと。結末は予想と違った。主人公にとってはある意味希望のもてる結末なのかもしれないが、釈然としない所が多々ある。ただ宗教の人を盲目的にする怖さと、人の何かにすがらねばいられない弱い部分は痛いほど感じた。

  • 全然予想してたのと違った。木島さんだけとは。でも大地の会ももう持たないでしょう。ブレーンを失ったのだから。便乗を忘れて自分が中心だと思った時点で、近いうちの破綻は見えてる気がするのですが。木島さん、寧ろ怖い思いもあれど追い出されて良かったんじゃないかとさえ思いました。大痴の会、死ん者・・・言い得て妙ですね。どこで間違ったのか。それはきっと他の二人を選んだ時からなんじゃないかなぁと思う訳です。暴走すると怖い、そして盲目になると本当に怖い。逃げたくなる時もあるけど大地に足を付けておかなきゃ。と思ったのでした。

  • 上巻で主人公達の作った新興宗教が上手く滑り出し、事が進んでいく、しかし気づけば自分の望んだものはこれだったのか?・・・
    幸せとは??大きくなる宗教と共にばらばらになる仲間と、安定しない自分の心。そして、行きつく先とは・・・

    少し展開に不満でしたが、人間の繋がりの難しさ、物事を進めていく事の困難さ、理想と現実とは?そういう事を考えさせられる作品でした。

  • 巧みについた嘘でも、どこかからつじつまが合わなくなっていく。
    下巻では、そこから大地の会を設立した木島を排除しようとする動きが。
    きっかけさえあれば、こんなに急激に会員が増えるものなんだろうなぁ。
    あぁ、恐ろしい。
    周囲に惑わされることなく、自分で判断できるようにしておかなくてはね。
    最後の飯村のブログはトラップに思えて仕方ない。

  • ホームレスからビジネス宗教団体を立ち上げ、そして・・・
    上下巻の厚い作品ですが、一気読み必至!!

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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