- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175043
作品紹介・あらすじ
アスペルガーの当事者である私が、言語聴覚士となり、アスペルガー者の妻となるまで。当事者・支援者・家族という3つの立場で「見えない障害」を生きる。
感想・レビュー・書評
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言語聴覚士(医療の専門職)であり、自らがASD当事者である村上由美さんの「発達障害」界隈の感覚や経験を丁寧な言葉で綴った1冊。
それもご自身がアスペルガー当事者・
ご主人が同じくアスペルガーという「家族」・
発達障害の人たちをサポートする「支援者」としての立場
この3つの視点からの言葉が目から鱗だった。
近年「毒親問題」や「カサンドラ妻」に関する著作も多く目にするようになったが、こちらに関心のある方も手に取ってみると発見が多いかもしれない。
ご主人の言動に関する違和感についての描写は、私も「それそれ!」と夫に感じるものに該当することが何か所もあり、溜飲が下がった。
アスペルガー傾向の人は、現実に目に見えないものや事柄に関する想像力に問題を抱えている人が多く、さらにその欠落の現れ方は人により千差万別とのこと。
「状況を論理的につなげて推測するという発想を自力ではほとんどしないし、論理的に考えるように私が促しても、彼が組み立てた論理は、状況にあっていないことが多い。」(本文P168)という記述はまさに我が家の夫。
極めて秀でた分野があるので、日常の家族での生活では、そんなこともわからないのかなと思うのだが、そのバランスの悪さこそ発達障害ということで納得。
丁寧な説明(「療育」)が逐一必要なのよね…。
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アスペルガーである著者が幼い頃に告知されて育ち、アスペルガーである男性と出会い結婚し、言語聴覚士として発達障がいの子供たちを支援する仕事もしている、そんな日々が綴られている。
著者が育ってきた時代と現在では、ずいぶん発達障がいへの理解も変化してきているように思える。
それでも、きっと当事者や家族は、多くの苦労を重ねて日常生活を送っている。周囲の人も、別の意味での苦労をしているかもしれない。
少しずつ知識と対応方法が広まる事で、お互いが過ごしやすく生きやすくなればいいなと思う。 -
妻が図書館から借りてきて、面白いから読んだらと勧められた本。寝る前にほんのちょっと読んでと思って読み始めたらやめられなくなった。しかし、目も疲れたのでその日は半分で終えたが、とても人を引きつける本である。そもそもこの題名が魅力的である。著者の由美さんはアスペルガーで、表紙に出ている猫を抱えたやさしそうな男性は由美さんの夫。実はこの夫もアスペルガーで、「アスペルガーの館」とは夫である真雄さんの開いていたブログなのである。2人のアスペルガーがこのブログで知り合い、そして結婚するという話だ。そう書くとなんの変哲もなさそうだが、とてもドラマチックな話なのである。由美さんは4歳までことばを話せなかったそうで、お母さんは早くから由美さんが自閉症(当時はそう呼んでいた)であることに気づき、医者の助けも借りたが、自ら「療育士」として由美さんをふつうの人にしようと頑張ってきた。だから、由美さんが講演をすると、「あなたはアスペルガーではない。そんなことを語る資格はない」などと言われるが、ここまで来るまでには親子の涙ぐましい努力があったのである。面白いのは、由美さんは4歳まで話せなかったが、文字認識はできて、声が出るようになってからの読みが人よりは早かったことだ。子どもの場合、文字を一つ一つ拾って読んでいくのだが、由美さんは、文字を塊としてとらえる習性を身につけていたのである(これができないと英語など早く読めない)。これは人の顔の認識でも役に立つ。後に、彼女が言語聴覚士になってから、人の顔をすぐ覚えるのに役立ったそうだ。由美さんは、いじめを受けたりしながらも普通学級で学び、大学で心理学を学んだ後言語聴覚士をめざし「国立障害者リハビリテーション学院」で2年間学ぶ。しかし、卒業を前にしてもなかなか就職が決まらない。そんなときに知ったのが「アスペルガーの館」というブログであり、真雄との出会いであった。実は真雄さんはプログラマーとして自活しているが、自分がアスペルガーと気づいたのは30を過ぎてからだという。こうしてみるとアスペルガーと呼ばれる人にもさまざまな段階があることがわかる。由美さんは最初アスペルガー同士だから理解もしやすいと思ったようだが、実はそうでもなく、3年の同棲、結婚後もさまざまな問題にぶつかる。本書はそんな二人のほほえましい生活の記録である。ぼくがちょっと気になったのは、由美さんとお母さんとの関係で、由美さんにとってお母さんは療育士としての面が強すぎたために、母親として見られないようになってしまったことである。これはお母さんとしてもいたたまれないだろう。また、お姉さんとの関係も気になるところだ。
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アスペルガーなど発達障害に関心のある方は、ぜひ読んでみて頂きたい本です。
村上さんがアスペルガーに対して、当事者・家族・支援者という3つの立場に位置しており、それぞれの立場からの体験がつづられています。
ただ、アスペルガーという話は置いておいて、ある夫婦の物語、として読んでも大変興味深い内容だとも思います。
表紙の写真がすごくいいですね。魅力的です。
実は、村上さんの講義(発声方法)は数年前に受講したことがあります。
大変チャーミング、かつ面白い方だという印象が強くあります。 -
幼少時アスペルガーと診断され、母から療育を受けてきた筆者の半生記。発達障害の子は、症状が様々で、本人の特性によってどう進むか千差万別なので、どう成長していくんだろうとドキドキしながら読み進めました。
素敵なご主人と出会い、多くの人の支援に回る現在に、心からの喝采を送ります。
身体感覚の不器用さ、あるいは対人関係の不器用さ、それにマニュアルで一つづつ対応を積み重ねていく過程に共感できました。