嵐のピクニック

著者 :
  • 講談社
3.22
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本棚登録 : 1005
感想 : 184
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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177047

作品紹介・あらすじ

可笑しいけれど、どこかブラック。ワクワクするほど、不思議でキュート。
リアリズム、ファンタジー、恋も、ホラーも、クラシカルからモダンまで――。
異才・モトヤがその想像力のすべてを詰め込んだ、13の“アウトサイド”な短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 何かの暗喩のようで、純粋なシュールのようで、強烈な皮肉のようで、掴みどころがない変な短編を集めた本書、わたしはとても好み!
    中でも好きなのは以下作品。

    ・アウトサイド
    日々の抑圧が狂気になる瞬間が、不気味に鮮やか。
    グランドピアノの中に〇〇を放置、こわ!

    ・哀しみのウエイトトレーニー
    突然ボディビルダーを目指し始めた妻の、奇妙だけど普遍的な夫婦愛の物語。印象的だった。

    ・マゴッチギャオの夜、いつも通り
    意外なオチ。すごい力を持っていても、それに気づかず現状に甘んじる大衆への皮肉?

    ・Q &A
    面白いんだけど、メディアの無自覚?面白半分?な悪意の余韻が残り、気持ち悪くていい。

  • 不思議というか奇妙というか。。
    独特な短編集。

  • 『嵐のピクニック』  本谷有希子    講談社

    積ん読の中から掘り出したら、表紙がキュートに思えて手に取った短編集。
                                                          
    ずっと積んであったのを忘れていた本。私が読むだろうとオットが買って来てくれたが
    「大江健三郎賞」でイキナリ読む気を無くしたんだった。(≧∇≦)

    13の短編が入っているが、思いの外面白かった。以下目次。
    ・アウトサイド  (ヤル気のない自分に根気よく優しかったピアノの先生が見せた狂気は)
    ・私は名前で呼んでいる  (失恋したキャリアウーマンはカーテンの膨らみになにを見るのか)
    ・パプリカ次郎   (露店商の次郎が見たものは)
    ・人間袋とじ   (しもやけで癒着しかけた足の小指をそっとはがすとき)
    ・哀しみのウェイトトレーニー   (突然ボディビルにのめり込む主婦は…)
    ・マゴッチギャオの夜、いつも通り  (多少のインテリジェンスより、集団の奇跡?)
    ・亡霊病  (最低で最高のホラー)
    ・タイフーン  (傘は大切)
    ・Q&A  (神の声か?ババアの世迷言か?)
    ・彼女たち  (河原の決闘)
    ・How to burden the girl  (少女の髪はいかにしてピンク色になったか)
    ・ダウンズ&アップス  (結局は上辺と金?)
    ・いかにして私がピクニックシートを見るたび、
                         くすりとしてしまうようになったか  (世の中、色々なお客様がいらっしゃいます)

    リアリティーを感じさせるものもあれば、海外SF?と思う様な話もあり、とんでもないホラーも、不思議なファンタジーもあり、この発想は何処から?と驚きながら読んだ。
    かなり面白かったので、カッコ内は自分の一言メモ。

  • ■第7回大江健三郎賞受賞 作品
    -----------------
    優しいピアノ教師の一瞬の狂気(「アウトサイド」)、ボディビルにのめりこむ主婦(「哀しみのウェイトトレーニー」)、カーテンの膨らみから広がる妄想(「私は名前で呼んでる」)猿山の猿が起こす奇跡(「マゴッチギャオの夜、いつも通り」)……奇想天外、前代未聞、野間文芸新人賞作家の想像力がはじけ飛ぶ、13の“アウトサイド”な短篇集!(初出:群像「13の“アウトサイド”短篇集」改題)
    -----------------
    <感想>
    短編だから?「自分を好きになる方法」を読んだ後に読んだから?少し作風が落ち着いてしまったように感じた。…と思ったのは途中まで。最後の方になるにつれ狂気じみた話が多くなっていく。本谷有希子の描く女性が好きだけど、こういう話も書くんだね!と、違った一面を知ることができた小説だった。

    ■アウトサイド★★★★
    親友とつるんで好き勝手していた中学生の女の子が、優しいピアノの先生に出会う。そして先生が見せた一瞬の狂気によって、真面目にピアノを練習するようになる。
     ピアノ教師のダークサイドが出ていて、とても面白かった。短編なのが残念。長編だったら、もっともっと深い心の闇が見れて面白そうなのにと思った作品でした。

    ■私は名前で呼んでいる★★★
    会議中にカーテンのふくらみがどんどん気になってしまい集中できなくなっていく。
    最後のオチが好きだな。「シューダダダ!」とダッシュした後の大きなシュミラクラ現象(笑)

    ■パプリカ次郎★★★
    屋台の少年と、定期的に台風や雷のように現れ露店を破壊していく暴ギャングのような人たちとの寓話。
    「いしいしんじ」みたいな短編だった。こういう小説も書くんだ。と新たな本谷有希子を知った作品。

    ■人間袋とじ★★★
    足の指にできたしもやけがくっついてしまった。それを彼に裂いてもらおうとする彼女。昔、お互いのイニシャルをタトゥーにしていた指だった。
    さらっと読めてよかった。最後は裂いたのかな?どうなのかな?と楽しませてくれる作品。

    ■哀しみのウェイトトレーニー★★★
    平凡な主婦が、ボディビルのトレーニングに目覚めてしまう。ムキムキになって明らかに変化しているのにも関わらず、気がつかない夫。
    最後は、夫婦仲直りってかんじだけど、なんで?かよくわからない。途中まではとても面白かった。最後は理解力不足でよくわからなかった。

    ■マゴッチギャオの夜、いつも通り★★
    サルの檻に入ってきたIQが高いチンパンジーのゴードン。夜中に忍び込んできた人間に花火や石を投げられて死んでしまう。しかし、サルの奇跡の力で蘇る。そんな力があれば、外に出られるのにと言うゴードン。
    宝の持ち腐れというか、なんというかね。さらっと読みました。

    ■亡霊病★★★★
    人生で一番幸せかもしれない、という瞬間にかかる病気。コンクールの入選セレモニーで、スピーチする直前に「人生で一番幸せな日」と噛み締めてしまい亡霊病になる。口からエクトプラズマを吐き出し、悪口雑言をまきちらして、消えてしまった主人公。
    最初は、意味が分からないと思って読み始めたけど、最後が笑えた。亡霊病こわいわーwww 
    こういう病気を考え出す本谷有希子が好きです。

    ■タイフーン★★★★★
    少年が台風の日に雨宿りしていると、おじさんが話しかけてきた。傘をさして必死に歩く人を馬鹿にしてはいけない。彼らは傘で人が飛べると信じてるんだという。よく見るとみんな傘で空を飛んでいた。おじさんも目の前で飛んで行った。それ以来、傘うを人をばかにするのをやめた。
    気持ちがほんわかするお話だった。

    ■Q&A★★★★
    輝く女性のご意見番として芸能活動してきた女性が、病室で最後の連載インタビューに答える。
    女性誌で取り上げられる輝く憧れの女性の内心をユーモアで綴っていて、面白かった。

    ■彼女たち★★★★★
    彼女から決闘を申し込まれて河原に行くと、同じように決闘している男女が沢山いた。彼女のことをおとなしすぎると思っていたために狂暴化していく彼女。男の願望が女性を暴走化させてしまう世界。
    男性に対する皮肉が、痛快でおもしろかった。逆の世界もあるだろうねー。

    ■How to burden the girl★★★★
    家族を悪の組織に殺されてしまった隣の家の女の子。同情心からか告白をしてしまった。すると、彼女は父親を誘惑して母親を追い出した。悪の組織は母親だという。そして彼女は男に言った。私のことを理解するためには、自分の父親を誘惑すべきと。男は恐ろしくなって逃げた。
    途中まではグイグイ引き込まれて、凄く面白かったのに、最後のオチがいまいちだった。

    ■ダウンズ&アップス★★★★★
    お世辞で塗り固められた世界で生きてきた主人公。本音を言ってくれる若者に出会い、本音を言う若い人たちを集めた事務所を作る。しかし、本音をぶつけてくる世界も、お世辞を浴びせる世界も実はそっくりだと気づいてしまった。ある日、急にバカバカしくなって本音を言う彼をののしってしまう。少し後悔したが、自分にはお世辞シャワーを浴びる上辺の世界が合っていたとさとる。
    面白かった。上辺の世界。本音の世界。どっちだっていい。結局、わざわざ違いなんて強調しなくていいんだな。媚びずに自分らしく生きたいね。

    ■いかにして私がピクニックシートを見るたびに、くすりとしてしまうようになったか★★★
    気に入る服が見つからず、試着室から全く出てこないお客様のために、試着室ごと街に出る。試着室を坂の上まで引っ張り上げたが、勢いよく下って行ってしてしまう。お客さんの正体はドロドロした物体のようだった。それ以来、あらゆるものは自分の想像を超えているもかもしれないと思うようになった。
    挿し絵が入っていて笑った。最後はなんだか、ふーん。と思ってしまったので★3つ。

  • 単純に面白かった。

    特に「哀しみのウェイトトレーニング」がお気に入り。

  • やはり奇妙で奇天烈。
    短編なのでそれがよく際立っています。読み終わった後はぶわーっとハリケーンが通り過ぎたかのような何とも言えない感情になりました。

  • 短編。
    不良娘が最後の頼みの個人宅のピアノ教室でわずかな
    間だけピアノに目覚めたこと。

    会議中にカーテンの膨らみの正体が気になり過ぎて
    家でも同じ現象のそれに名前をつけていたこと。

    前触れもなく露店をめちゃくちゃにしていく集団と
    パプリカ次郎の戦い。

    長く付き合うカップルの彼女が見せた足の薬指と小指のくっついた霜焼けを
    彼氏が剥がそうとする前に過ぎる別れ。

    なんの取り柄もなかった主婦が筋トレを始めて
    自信を取り戻し、夫との関係も修復するまでの道のり。

    動物園の猿山に連れてこられたチンパンジーとの交流。

    表彰式の最中に亡霊病になり
    気をしっかり持とうと思いながらもうまくいくはずもなかったこと。

    台風の日に必死に傘をさして歩く人を
    馬鹿にしていた少年の心を見透かすように
    見知らぬおじさんが傘で空を飛んで行ったこと。

    恋愛相談のプロの高齢になった女性が
    人生を振り返るように雑誌のインタビューに答えていく様。

    隣に引っ越してきた家族の正体を知った引きこもりの男。

    仕事の成功者が若手と組んだ結果。

    不思議な世界観。
    鹿島田さんとか思い出したなあ。

  • ショートショートみたいだった。

    最初はなんじゃこれ、という感じだけど笑、ペースにはまると面白い。

    突発的なアイディアを短編にとどめて「逃げ」ていると個人的には思うけれども、そういうものなのかなぁ。

  •  不穏な雰囲気、静かな狂気、そっと背筋が寒くなる感覚。どことなく切なさが漂っていたり、滑稽さが滲み出たりしているところも良かった。なかでも、「人間袋とじ」、「How to burden the girl」が好き。

  • あれ?本谷有希子ってこんなんだったっけ?正直ちょっと残念っていうか、あれ?という感じ。自意識過剰の女とか、ちょっとおかしいけど、普通みたいな人とか、そういうのが、書くのうまい!って思う。正直「天才•本谷有希子」を感じられず。無理して、変な設定にして、がんばって無理して書いたのかなー?と思ってしまった。

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著者プロフィール

小説家・劇作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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