アベノミクスとTPPが創る日本

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062186230

作品紹介・あらすじ

「アベノミクスの教祖」が徹底予測! 
 アベノミクスで日本経済はどうなる? TPPで日本の産業構造や社会はどう変わる? そして、株価は? サラリーマンの給料は? GDPは? 
 40のQ&Aで知る2015年の日本――大チャンスが到来した!!

感想・レビュー・書評

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  • 今日の書評は「アベノミクスとTPPが創る日本」浜田宏一著。大野は以前どちらかというと前日銀総裁の白川さんに同意見で、黒田・現日銀総裁には否定的だった。

    当然、所謂「リフレ派」の浜田先生のご著書もこき下ろした。すいません。安倍総理、浜田先生、日本の経済良くなっています。大野が間違っていました。

    という訳で、本書で浜田先生はまず何故、白川総裁時代の日銀が責められるべきかを詳述している。当時までの日銀には「金融政策はデフレにもインフレにも効かない」という根強い考え方があった。これは世界の経済学の常識からみれば、明らかな誤りだという。

    なぜなら「原則として日銀は民間の資金需要に対して資金を供給しているので物価の決定についても限定的であり、取りうる政策手段も限定的であり、政府の協調関係も限定的であるべき」と制限して、できない理由ばかり考えてきた。

    対するアメリカのFRB(=アメリカの中央銀行)は「買いオペ」を通じて9000億ドルのドル供給量を、5年ほどで3兆ドル位まで増やしている。一方の日本は3割ほどしか増加させていなかったそうです。

    FRBは買いオペの目標を「失業率が6.5%以下」になるまで続けました。イギリスでも通貨供給量を約3.5倍に増やした。世界主要国と比べても日本の通貨供給量は断然少なかったので、ドルやポンドといった通貨は下がり相対的に円は独歩高(一人だけ高いこと)になり、株価も上がらず、したがってデフレから脱却しなかったということです。

    また浜田先生は当時の民主党政権も戦犯に挙げています。「円高は日本にとっていいことだ」(藤井裕久元官房副長官)、「デフレでいい」(与謝野馨元経済財政担当相)。さらに菅直人元総理は「増税すれば経済は成長する」さらに元官房長官の枝野幸男氏は「利上げすれば景気が回復する」といった顛末。

    その後、現・日銀総裁の黒田東彦氏は十数年に渡るデフレの原因は「日銀にある」と明言しました。その後の為替相場・株式市場の結果については皆さんもご存じでしょう。やはりデフレの原因は「日銀にあった」のです。

    しかし当然反論もあります。ドイツのメルケル首相からは「出口戦略(市場に過度に供給した資金をどう回収するか)をどうするのか」、「通貨安競争になるのではないか?」といった疑問です。

    これには、大野も反論があります。FRBはもう金利を上げました。EUはデフレに陥るかもしれないので、金融緩和を続けています。今年はドルの金利高で新興国マネーがアメリカに向かう、といった懸念があります。黒田日銀総裁はインフレ率が2%に達しない場合更なる緩和を予告しています。(このような日銀の現政策をインフレ・ターゲットという)

    このように日本で金融緩和を大々的に行って、ハイパーインフレにならないか?との質問があるでしょうが、そもそもインフレ・ターゲットは、物価の上昇を抑えるための方策あり、「ここまでしか(インフレ率を)上げない」といったものだそうです。結論から言って現在の金融政策は極めて正しいと言えます。

    では、庶民にはこのアベノミクスで暮らしが良くなるのか?といった疑問が当然湧いてくるでしょう。浜田先生はこれについても解説されております。

    まず、株価が上がり企業の業績が良くなると、会社は仕事を増やす。つまり残業代が上昇する。それでも追いつかなかなくなると、人を新しく雇用する、と言われておりますがこれは正解です。現在の日本の失業率は3%台。摩擦的失業(労働者が今の仕事から職を変えたいと思って転職活動をするために必然的に失業状態になる)を考慮すると失業率は4%くらいなので、日本は現在、実質完全雇用状態だと言えるそうです。

    しかし、浜田先生はアベノミクス・三本の矢については手放しで誉めていません。金融政策は「A」評価、財政政策は「B」評価だというのです。何故かというと、変動相場制ではマンデル・フレミングモデルによると財政拡張により、高金利になり経済を悪化させるとのことです。

    また3番目の矢「成長戦略の実現にはお役人さんの頑強な抵抗等、不確実な要素が多く「E」評価をしています。そういう訳で、アベノミクスの総合評価は「A・B・E」でアベと述べています。

    以上、アベノミクスを金融政策を中心に本書から解説しましたが、第2部は「TPP」について言及しておられます。興味のある方はぜひ本書をご覧下さい。

  • 本書の前半はアベノミクスについての説明で、後半は日本がTPPに参加することで発生するメリットを著しています。TPPに参加することに対する不安が強かった時期に著わされた本なので、Q&Aという形式を採って、世に蔓延している誤解や不安に答えています。もっと、早い時期に読んでおくべき本でした。勉強になりました。

  • アベノミクスとTPPに関する疑問に浜田先生が答えます。
    人口が減ったからデフレになった説は一蹴されてました。

  • ・この15年、デフレで悩んできたのは世界でも日本だけ。その理由の一つが、市場に出回る通貨、円の量が少ないこと。円が供給されないことで消費活動が低下し、デフレになって物価が下がる。当然、企業は儲かりませんから、給料も下がってしまうし、失業も増える。
    ・民主党時代はひどく、総理の菅直人氏は、「増税すれば経済は成長する」、枝野幸男氏は、「利上げすれば景気が回復する」という言葉を残した。政治家に経済の基本的な知識がなく、あったとしても日銀がそれを阻止しようとする。これがデフレが長引いた原因。
    ・TPPに関して、アジアは今後の経済発展に大きな期待が寄せられています。豊かになっていく国々で、関税なしの値段で日本製の自動車や機械などが販売されれば、日本の輸出企業にとっては強い味方になることは間違いない。
    ・重要なのはTPPに参加するか、しないかの選択ではなく、TPPに参加して何を選択するか。
    ・アメリカの狙い アジアに輸出する量を増加させること

  • おかたい本かと思ったけど、一問一答形式になってて読みやすかった。
    TPPは、お互いの国の長所を活かし、短所を補うという意味があるのだと知った。知財保護など、締めるべきところを締めていれば推進した方が良いと思う。

  • 政治語りと、自分語りはほどほどに。勉強にはなります。

  • アベノミクスとTPP賛成派の主張。
    主張を裏付けるようなデータが少ないように感じたが...

    ・デフレの原因は日銀
    ・自動車や電機の輸出大企業の業績を上げることが日本の景気にとって大事
    といった内容だった。

  • 昨年(2014)の今頃に読んだ本です、この本はアベノミクスとTPPの有効性について書かれたものです。

    この本の著者である浜田氏がこの本を書いた時には、消費税増税がなされたことは想定外であったので、この本に書かれていることが現在の状況にそのままあてはまるかは難しいと思いますが、浜田氏はTPPに参加することで日本には良い影響を与えるとしています。

    TPP参加による日本への影響は、あと10年くらいすれば明らかになると思います。この結末を楽しみにしながら残り10年程度の社会人生活を送りたいですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・アベノミクスの第三の矢が有効に働くためには、TPPへの参加が必要になる。貿易の自由化を推し進めて、農業部門を含む日本産業全体の効率化を実現する必要がある(p5)

    ・デフレ、通貨高がこれだけ日本で続いたのは、市場に出回る通貨が少ないこと。このため消費活動が低下、デフレになり物価が下がる。企業が儲からないので給料がさがり失業が増える(p19)

    ・人口減少はインフレの原因になってもデフレの原因になりえない(p33)

    ・不況時には財政政策しか効かない、とは固定相場制の時代には正しくとも、変動相場制ではあてはまらない。金融政策が効果ある(p36,102)

    ・リーマンショック後には、米英よりも日本の方が損害が大きかった。円高の大波を日銀が手をこまねいていたから(p39)

    ・デフレはモノに対して貨幣の価値が高すぎるから起きるので、それを是正するためにも円の量を増やす必要がある(p45)

    ・アメリカはトラック輸入で25%の関税をかけているが、これがなくなれば追い風になるだろう(p179)

    2015年1月2日作成

  • 良書である。
    今日、日本経済を賑わすアベノミクスによる政策とTPPについて、痒いところまで著述されていた。そしてなんといっても完結していてわかりやすい。
    それぞれの政策の改善点や、反省点が述べられているのもよかった。

    これは私的な内容であるが、先日課題制作に参考にした『アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる』(講談社)の中で、この本の著者である浜田宏一イェール大学名誉教授のことが紹介されており、今回のこの本の末尾では、これまた先日読んだ『90分解説 TPP入門』(日本経済新聞出版社)を参考にしたと書かれていた。意図したわけではないのだが。
    これらの著書のおかげで、全くの初心者である私でもアベノミクスとTPPに関してはかなり理解が深まったと思う。

  • タイトル通り、アベノミクスとTPPについて、内閣官房参与も務める著者が語っている本。

    概ねアベノミクスについての部分は著者自身がすすめている政策でかなりわかりやすくなっていました。

    ブログはこちら。
    http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4643724.html

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著者プロフィール

浜田宏一(はまだ・こういち)
1936年、東京都に生まれる。第2次~第4次安倍内閣(2012~2020年)官房参与。イェール大学名誉教授。東京大学名誉教授。国際金融論に対するゲーム理論の応用で国際的な注目を浴びる。日本のバブル崩壊後の経済停滞については金融政策の失敗がその大きな要因と主張、日本銀行の金融政策を批判する。
1958年、東京大学法学部卒。1957年、司法試験合格。1960年、同大経済学部卒。1965年、イェール大学にて経済学博士号取得。
1969年、東京大学経済学部助教授。1981年、同学経済学部教授。1986年、イェール大学経済学科教授。2001年から2003年まで、内閣府経済社会総合研究所所長を務める。法と経済学会の初代会長。著書に20万部のベストセラー『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)、『経済成長と国際資本移動――資本自由化の経済学』(東洋経済新報社)、『国際金融の政治経済学』(創文社)など。世界の有識者による論考・分析を配信する国際的NPO「プロジェクト・シンジケート」定期寄稿者。


「2021年 『21世紀の経済政策』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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