- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062195096
作品紹介・あらすじ
桃子は高校1年生。中学時代に親友だった綾美も同じ高校に入学したが、まもなく不登校になった。それは中学時代に体験した壮絶ないじめが尾を引いているからだったらしい。
一方、人数不足の「うた部」(短歌)に思いがけなく入部することになった桃子は綾美に対して、中学時代に起きたある事件の負い目から、高校で友達は作らないという宣言までしてしまう。
本当にこのままで良いのか悩み続ける桃子に、ある同級生が声をかけてくる。
そしてある日の放課後、うた部で短歌甲子園に出場しようという話が持ち上がって…
感想・レビュー・書評
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31文字。
のびやかに、はずんで、とどめておけない。
時にかすかに、時に打ち付けるような激しさで
自分の中からあふれでる、かたまり。
「うた部」という短歌を詠む部活に出会う高1の桃子。
部屋に引きこもってしまった友達の綾美。
個性豊かな「うた部」の先輩、いい距離感の顧問の先生。
それぞれが、それぞれに抱えていること。
そこから生まれてくる短歌が、どれもどれも愛おしい。
表題に一目ぼれして、手に取りました。
この下の句、気になりませんか?
うたうってすごいな、生そのものなんだなぁと
唸ってしまうお気に入りの一句になりました。
今まで短歌には、全然興味ありませんでした。
うた部のみんなが詠んだ短歌にビックリしてしまい…。
鮮やかで、艶やかで、
生きている言葉がその人そのものを、その瞬間に形作るんですね。
人としての成長がこんなに視覚に残るなんて。
自分で詠めるようになるかはさておき…。
遅ればせながら、いろいろ短歌を知っていこうって思います。 -
素直に感動してしまった。
中学時代に受けたいじめの影響で引き込もっている女子高生というありがちな設定で、平文だと理屈っぽかったり、くどくなりそうな場面もあるが、挿入された短歌の効果か全く気にならない。
試合以降に詠まれる短歌はどれもとても良いのだが、特に最終盤の2首、主人公二人の連歌と部長の惜別の歌は、何度も読み返して味わいたくなる。
巧拙含め、登場人物がいかにも詠みそうな歌を作れる作者の詠歌力には感心する。
さすが作家は言葉のプロだと思う。
伏線の中で、主要周辺人物1人の訳ありげな過去が回収されずに残されたが、敢えて回収しなかったか、それともいつか続編が書かれるのか。 -
うた(和歌、短歌)を読む部活、「うた部」で繰り広げられるお話。
先にクライマックスを読んで、印象に残っていて、あらためて購入した。
一年生の桃子が、清ら(せいら)という先輩に強引に部活に勧誘?されるところからのはじまり。
「誰とも友達を作らない」と言う桃子の背後には、いじめをきっかけに、引きこもりから抜け出せない綾美の存在がある。
この作品では、短歌が要所要所で取り上げられていて、地の文を読むのとは違ったスポットを当ててくれるのがいい。
特にタイトル「うたうとは小さないのちひろいあげ」にまつわるエンディングは、うるっと来てしまうくらい、ピッタリだった。
けれど、一方で、部屋から出て来ることのできない綾美が書くブログの文章もまた、いいのだ。
見えないながら、そこに生きている証がある。
文字は、息吹だ。
それを見過ごしてはならないような、気持ちになった。
どうやら三部作らしい。
続編に進めるのが、嬉しい。 -
題名に仕掛けがあった。
最後に気持ちよく拾ってもらえた。
桃子は友だちは絶対に作らないと今日も自分に宣言して、教室に向かう。
だけど、強引に連れて行かれた「うた部」の時間が心地よくて。先輩は友だちとは違うかな。友だちでなければ、許してくれるかな。
部活のみんなが詠んだ短歌がいいなあと。うっかり自分にも作れるのではないか。作ってみたいと思ったり。
ある女の子のブログが章の間に挟まれる。
回を重ねるごとに、ウニのようにトゲトゲになっていった内容が、少しずつトゲはあっても先が丸くなっていくことがわかった。
誰かに気持ちを聞いてもらうことを短歌を通して出来るようになって良かった。
この本は図書館で借りたのだが、誰かの貸し出しレシートが挟まっていた。
本のタイトルを楽しく眺めていたら、7年前に借りた自分の貸し出しレシートだった。多分。懐かしいタイトルばかりが並んでた。ビックリした。
読めずに返却したのを人に勧められたのだけど、思いがけず数年前の自分に会った気分。
なんか短歌がよめそうな気がしないでもない。 -
凄く良かった。
「うたう」ことを通して前に進んでいく…
いじめとか不登校とか友情とか。心臓をギュッと捕まれるようなことなのに、がっつり短歌、「うたう」話です。
タイトルの「うたうとは 小さないのち ひろいあげ」に続く下の句をよんだとき、泣けました。
短歌の授業のとき、そっと生徒に進めてみたい一冊でした。 -
言葉の力
伝えようとする気持ち
汲み取ろうとする気持ち
うたを詠むように、いつも言葉を大切に選んで使うことができたら、素敵なことだと思う -
心に傷を負った女子高生が、短歌によって救済される青春小説。
中学時代のいじめが元で不登校になった親友と、主人公の少女は、高校の短歌部での活動を通じ、苦しみながらも、徐々に静かに、心の殻を解きほぐしてゆく。
言葉に託し、あるいは言葉と格闘することで、心に巣食う恐怖や罪悪感、不信に克ち、自身の足で立ち上がり、道を拓こうとする。
その過程は、痛々しくも瑞々しく、荒々しくも繊細で、思春期の不安定な心情と連動し、彼女たちの歌は磨かれる。
若干、説明口調ぎみの台詞が鼻につく面もあるが、それを補って余りある、作中の歌の力が鮮烈。
表題にもなっている、二人が詠み合う連歌のシーンが、その言葉が、クライマックスであると共に、作品の象徴となっている。 -
とてもおもしろかった。
「うたうとは小さないのちひろいあげ」
タイトルを見た時から気になってはいました。
あらすじで「短歌甲子園」という文字を見て、「そんなのあるのか」とさらに気になりました。
しかしなかなか手に取るところまでいかなかった。
3部作完結!というのを見て、「あっそうだった」と思い出し、図書館の棚で見つけてやっと読んだ、わけですが、……これはおもしろいな……!
短歌かっこいい……っ
最後、連歌をよむところ(「うたうとは小さないのちひろいあげ…」)が最高にかっこいい。まず一人が上の句をよみ、それに対してもう一人が下の句をよむ、という形式はなんとなく知っていたけれども、これはしびれる。カーッこんなかっこいいことやってたんですか昔のひとー!
短歌初心者の主人公や、ひきこもりの友人が最初につくった短歌も、実に「それらしい」し、短歌巧者のいと先輩の恋愛短歌もものすごい。
ううん、早く続きを読みたいけれど、もう少しじっくりと余韻を味わっていたい気もする。 -
ことばがほら,想いを伝えるから。
高校一年生の桃子は,通学時に出会った関西弁の先輩・清らから「うた部」に勧誘される。クールな恋愛の達人・いと先輩,理屈的で水泳部の業平先輩,ちょっぴり情けない難波江先生。しかし桃子にはなかなか踏み出せない理由が。それは不登校中の友人・綾美の存在。新たなクラスメイト・彩の干渉も気になる中,桃子は歌を詠み始める。
青春小説である。挟み込まれている短歌がまたそれぞれの登場人物を描き,桃子の変化,綾美の変化を感じさせる。綾美に関しては,ブログも。ことばというのは,ただ発するだけでなく,伝えなくては力を発揮しないのだ,と。生の表現から,その感動を伝えられることばにする。それが短歌の表現。本当は短歌だけではなくて,すべてのことばがそうだけど,独り言から,届けられることばになれ。 -
短歌が素晴らしい。
うた部の各部員、顧問の先生のキャラクターが皆魅力的でバランスも良い。
このキャラクター、レベルに合った短歌を詠ませているのがこの小説の見所だと思う。
新入部員の短歌のレベルがたんだん上がってくる過程も面白い。
綾美へのメッセージとして桃子が詠んだうたとふたりの連歌が胸にせまる。普通の文章で説明しているのと異なり何度も読んでかみしめて鑑賞してしまう短歌の力を感じた作品。
長田さんの作品ですが、画家のいせひでこさんとの共作ともあって、...
長田さんの作品ですが、画家のいせひでこさんとの共作ともあって、「最初の質問」はイメージを膨らませながら繰り返し読んでいます。詩ではありませんが、長田さんの「なつかしい時間」も愛読書の一つです。
詩、短歌の世界はその時の自分の心の状態により、毎回感じるものも変わってくるのかと思うようになりました。若いときに読んだ高田敏子の「こぶしの花」も、季節ごとに読み返す今、穏やかに寄り添える気がしています。
いろいろな本のご紹介、楽しみにしております。週末の夜、皆さんのレビューを見るのが楽しみの一つです。
手に取った本からもそうですし、他の方が書いたレビューからも、
そして...
手に取った本からもそうですし、他の方が書いたレビューからも、
そしてこんな風に教えていただいたりして、狭かった私の世界と、広い広いまだ見ぬ世界をつなぐ扉がどんどん手元に集まってきています。
本当にそうです。何度読み返してもきっと同じ感じ方にはなりませよね。
私も8minaさんのように、長い時間をかけて本に寄り添うように大切に読んでいきたいと思います。
今日は少し暑さも和らいでいます。空を舞うツバメの姿も少なくなり、そろそろ南に帰るるのでしょうか。
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今日は少し暑さも和らいでいます。空を舞うツバメの姿も少なくなり、そろそろ南に帰るるのでしょうか。
古い本、手元においておきたい本、やはり処分できずにため込んでいます。高田敏子の詩集は絶版になっているかもしれません。最近は図書館で借りる方が多くなっていますので、ほんの山に埋もれなくても済みますが、繰り返し読みたい本は大事にしたいですね。
ブクログの多くの方から本の扉を開いていただきました。リアルな本友とも一生の間に読める本は何冊か?なんて話をします。これからも楽しい本のご紹介を、よろしくお願いいたします。