決戦!本能寺

  • 講談社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062198035

感想・レビュー・書評

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  • 本能寺は、明確な対立構造ではないので、これまでのシリーズのような決戦という感じがしない。
    それもあって、どの作品も主人公の内面を掘り下げて描かれている印象を受けた。
    なので、どうもわくわくはしない。
    どれも重たい。

    そして、関ヶ原や大坂の陣と違って、本能寺の変自体に物語はないということがよくわかる。
    一瞬の「出来事」でしかないのだ。
    そこに至る道、その後の道にこそ、うねりがあるということかな。

    光秀を描いた冲方丁が良かった。こうだったのなら納得するな。
    そして葉室麟、短い作品なのに印象に残る。
    結局好きな作家は、変わらない。

  • 決戦!関ケ原、大阪城につぐ第三段。最も期待していただけに、残念です。ブクログレビューの平均も関ケ原3.57、大阪城3.37、本能寺3.25となっています。個人的な評価は関ケ原5、大阪城3、本能寺2となります。今回の評価の基準は、当時は織田信長の評価筆頭であった光秀の謀反理由を1.秀吉が惟任退治記でとってつけた旧態依然の怨念説から脱却して斬新さがあるか2.猜疑心の強い信長が光秀の京への進行をなぜ許したのか3.説得力があり読んで面白いかの3点で評価したいと思います。

     覇王の血(織田信房)伊東潤 評価1
     信長が武田に人質としていた実子の信房を黒幕としています。光秀の怨念とダブルというわけですが、全く説得力がありません。謀略成功のポイントは本能寺から妙覚寺への信房の移動ですが、光秀軍の攻囲の中で奇跡的に成功しています。また信長は家臣の恨みをわざと増長していたとのことですが、あっけなく死んではなにも残りません。

     焔の首級(森乱丸) 矢野隆 評価0
     乱丸は本能寺の最後の戦闘で快感を得たとの話。このシリーズに乗せる意味がわかりません。

     宗室の器(鳥居宗室)天野純希 評価2
     主役を博多商人の鳥居宗室として、信長の天下に危惧を持ち、信長を殺そうと思う。しかし肝心な光秀の動機がかすんでいるが、最後に黒幕として千宗易や秀吉の陰が見えるところは面白い。
     
     水魚の心(徳川家康)宮本昌孝 評価3
     家康の人質時代からの信長との心情を物語っていて面白い。また伊賀越えの際、穴山梅雪を家康が謀殺するところも説得力がある。しかし本能寺の変のスピンオフに終わってしまった。

     幽斎の悪采(細川幽斎)木下昌輝 評価4
     本作でもっとも魅力的。細川幽斎の黒幕。光秀もそうとう悪にしあがっていて、斬新です。

     鷹、翔ける(斉藤利三)葉室麟  評価3
     美濃守護代斉藤氏の末裔、斉藤利三の物語。光秀の筆頭家老で、乱の首謀者。光秀の陰が薄いのが残念。余談ですが丹波平定戦の後、黒井城をまかされたに利三の娘が城で生まれ、後に三大将軍家光の乳母春日局となる。裏があるはずですが?

     純白き鬼札(明智光秀)冲方丁 評価4
     主役の光秀の登場。美濃から越前に逃げ延びた光秀の朝倉時代が斬新。光秀は叡山焼き討ち等、信長の意向をもっとも良く実行した忠臣であった。動機は怨恨では無く、信長の将来構想にたいする不満。

    結果1+0+2+3+4+3+4=平均 2.4

    前半3作の人選ミスではないか。本能寺を謀略戦とすれば、やはり豊臣秀吉を欠いているのは失敗。他に細川幽斎と共に、光秀の与力大名であった筒井順慶や、変直後に大坂で殺された大溝城の城主であった織田信澄も面白い。

  • 今までのシリーズが合戦に関わった各武将たちの視点から描くという連作集であり、合戦に至るまでの防諜戦という観点で短編であるがゆえに各作家の自由な発想で描かれた話が心地よかった。本作は合戦ではなく、変であるが故に、戦いというよりもミステリー的なフーダニットという点でより自由な発想で書かれており、他のシリーズとは趣がことなるものの、これはこれでよかった。

  • 本能寺は、決戦とはイメージが程遠いけどいろんな視点から見て黒幕がいて楽しかった。

  • このシリーズは好きだが、やはり「関ヶ原」を超えることはないなぁ、というのが最初の感想。
    関ヶ原や大阪城は決戦!という感じがするけれど、本能寺は「変」だけあって、合戦のイメージではないからか……。
    要するに「信長を討つ側」の話ばかりだったのが残念。
    もちろんそれぞれの著者が切り口を工夫していて、各主人公の人物造形、信長との関係などを味わいつつ読めた。

  • 20160125読了

  • シリーズ第3弾。今回でシリーズ引退を宣言している伊東潤さんがトップバッターでかっ飛ばしてくれている。織田信長の五男・信房(勝長)を主人公にした「覇王の血」。他の執筆者が光秀や家康、乱丸などを主人公にしているのに比べて、今回もまたマイナーな武将に光を当てている。こんな人物が歴史に埋もれていたのかと何やら掘り出し物に巡り合えたようで嬉しい。「王になろうとした男」の彌介を登場させているところも抜け目ない。

  • 大好きな伊東さんが旗振り役となっている「決戦!」シリーズ。

    「関ケ原」、「大阪の陣」に続く第3弾がこの「本能寺」です。



    戦国時代最大のミステリーの1つ「本能寺の変」を題材に

    信長、光秀という当事者だけではなく、色々な視点で書かれ

    色々な黒幕が出てくる、しかもそれぞれ書いている作家が違うという

    歴史好きにはたまらない一冊です。



    それでもやはり伊東潤さんが書いた「織田信房」が一番自分は惹かれました。

    甲斐武田へ人質に出されて信長の五男。

    武田毛衰退後に織田家に戻り、長男信忠の側近となった人物ですが

    まさか彼を変の黒幕に設定するとは・・・・この奇想天外な発想

    それでいて「あり得るかも」と思わせる説得力のあるストーリー展開。

    史実をしっかりとひも解いて描いた話だけに、読んでいても

    自分の鼓動が高鳴るのを感じます。



    時間を忘れて半日ほどむさぼり読んだ一冊です。

  • 本能寺の変にどう関わったか。
    戦ではなく突然の変。
    それぞれの武将の思いはいかなるものだったのか。
    それを楽しませてもらった。
    個人的には、出身地美濃の話に思いが熱くなった。

  • 宮本昌孝「水魚の心」と、冲方丁「純白き鬼札」が印象に残る。
    前者は、信長、家康と家臣たち、人物がいちばん魅力的。
    ラストも痛快。
    後者は、信長の先見性が際立つ。
    光秀の動機と関係性の描き方も、独特に感じた。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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