されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間

著者 :
  • 講談社
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感想 : 66
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208888

感想・レビュー・書評

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  • 当事者ならではのリアリティがあり、非当事者の自分でも非常に納得感がある。

    やりたいのに出来ない、という感覚はどうしても出来る側からすると理解が難しい。
    不定形発達の方じゃなくても、仕事中に上司からのザックリとした指示が飛んで、完璧にやったつもりでも上司の求めるクオリティに達しておらず怒られて、じゃあお前がやれよとふてくされる、というケースは非常に多いと思う。家事の話では非常に既視感を得た。

    「やれて当たり前」の価値観を押し付けないよう、やれる側は環境を改善することでみんなが行きやすい世の中になればいいなと思う。

    お二人には末長く幸せに暮らして欲しい。

  • 《「お妻様、言葉が止まらないよ。考えたこと全部口に出て、窒息しそうになる。上手く話せないのに、止まらなくて、めちゃ苦しいけど。でもこういう話し方する人たちも、取材でいっぱい見てきたよ。大体空気読めないってハブられてた。いるじゃん、オタとかバンギャちゃんとかで自分話止まんなくなって浮きまくってる子。いま俺、スゲーそんな感じ。お妻様も昔のアニメの話とかするとそういうキモい感じになるときあるよね」
    「はいはいわかったから、キモい言うな馬鹿」
    訳のわからない興奮状態にある僕をなだめると、お妻様はこう言ったのだった。
    「ようやくあたし(ら)の気持ちがわかったか」》(p.110)

    《いや、今でこそ飄々としているお妻様よ。僕はその「いちいち凹んでた」時期の君を知っているよ。その手首に残る大量の傷跡が、生まれ育った家の家族にも配偶者である僕にも自分の障害を理解してもらえず責め続けられたお妻様が、その都度凹んで「わたしは駄目な子」と自分自身を責めた過去の証拠だ。やれないことはやれない、しょうがない。いちいち落ち込んでいたら、逆にやれることまでやれなくなってしまう。目の前に、痛みを乗り越えて自身の障害を受容した大先輩がいた》(p.171)

  • 脳梗塞で高次機能障害を体験した「脳が壊れた」の著者が、これまたある意味脳の壊れている大人の発達障害の奥さんとの18年間を描いた一冊。不自由を障害にするのは環境である、という著者の結論だとか、発達障害に関する諸々とか、特段新しいことが述べられているわけではありません。が、研究者とか記者が他人事として述べるのではなく、当事者が自分自身とその家族にについて記録しているのでリアリティがあります。しかし、奥さんが発達障害だとしても、著者の鈴木さんも相当な変人のようだし、程度の差こそあれ、常人とは思えない。どっちもどっち。ここまで特異な状況でなくても、著者が夫婦での家庭生活を改善して行く様は、他人同士が共同生活を始めるという意味で大なり小なりどの夫婦にも参考になると思います。っていうか、家庭を続けている夫婦は多分みんな何らかの工夫をしているはずだろう。

  • 2018.2.5 amazon

  • サブタイトルに堅苦しいものを感じましたが中身は結構カジュアル、それでいて的を得た感じで読みやすいです。あとがきも頷ける内容です。よくある発達障害にはこうしましょう、のような教科書みたいな本とは違うわかりやすさがあると思いました。是非。

  • 916
    闘病記文庫(障害7 発達障害)

  • これはいい本。
    全編を通じて軽妙なタッチで読みやすいが、内容は「自分や相方との向き合い方」という点において、重く、かつ、本質的。特に、著者のように脳梗塞を発症しなくても、誰しも加齢でだんだん心も体も劣化することが避けられない中、遅かれ早かれ直面する困難さに対する心構えを教えてくれる。

    「何事も経験しなければ分からない/分かり合えない」と書いてしまうとネガティブだが、逆に「経験により分かり合える」なら歳を重ねることも悪くないかもしれない。

  • 高次機能障害になった夫が自分の困り事を通して発達障害の妻を理解し、支え会える関係になるまでを書いたノンフィクション。
    発達障害の特徴は人によって様々なので全てが当てはまるわけではないけれど、自分の気持ちや考えをうまく言葉にできない当事者(うちの息子もASDで知的障害はないけれど気持ちを表現するのは不得意)の苦しさを推察する手がかりになる。
    支援級に在席していても「やればできる」と言われがちで困っている息子。だからといってやること全部をとりあげてしまうのも本人のやる気や自信を失わせるそうなので見極めが大事だなと思った。

  • ふむ


  • この本は、
    発達障害の人の事を理解できないand支援したい定型発達の人
    発達障害の子供を持つ人
    発達障害じゃないかと自己分析したい人
    発達特性のありそうな精神病の家族がいる人
    などにオススメ。
    発達障害があると具体的にお互いどういったことに困るのか、がわかる。

    私自身ADHDの診断済みでストラテラ服薬しているアラフォー女性で、立場的にはお妻様と同じなので、お妻様の気持ちもわかるし、家事を一人で取り仕切る主婦の立場からすると著者の気持ちもわかる。
    だから、どちらの困り感も具体的によく書かれていて、わかるわかる!!の連発だった。
    ちなみに私は成長と共に普通に溶け込む方に全力を注いだので、お妻様ほど家事ができない事はないが個性的さは消えてしまった。
    小さい頃こうゆう行動をとった。大人になってからは行動的には隠しているので周りに発達障害だとバレないが、内面はそのままなので仕事や人間関係は長く続かない。

    私の現在の一番の困り感は、発達特性を持つ子供がお妻様状態からくるものだが、
    私は確かに著者やお義母様と同じ様な対応を子供にしていた。
    悲しいが、発達障害があると成長は遅い。できるようになるまでとても時間がかかる。時間がかかりすぎてできるようになる前に、できるようになりたいというモチベーションが保てなくなる。
    でも、私たちは本当はできるようになりたいと思っている。
    そして時間はかかるけど、ある程度成長する。
    前向きに自己理解、発達特性の子供の理解が進んだ本だった。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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