大学病院が患者を死なせるとき: 私が慶応大学医学部をやめない理由 (講談社+アルファ文庫 C 12-5)

著者 :
  • 講談社
3.64
  • (3)
  • (2)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 54
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062567787

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 30年以上前のこととはいえ、がんに対する医療行為の無惨に、読んでいて苦しくなってしまう。
    癌を切除する手術によって、体力が低下し、免疫力が低下し、傷口から入った細菌により感染症になったり、傷口が壊死したり。
    実は手術なんてしないほうが生存率が高くなる、と。

    現在はまた医療技術の向上や、有効な抗がん剤などで、必ずしも開腹手術に頼らない治療になっているけれど、もしかすると私が知らないだけで、今でも不当な治療で苦しんでいる人がいるかもしれないと思ったら、ちょっと耐えられない。
    友だちが乳がんの再発で、現在辛い治療中なのでよけいに。

    著者が患者ファーストで考えるのは、今でいうQOL(クオリティ・オブ・ライフ)。
    癌を切除すればいいってものではない。
    がん検診だって、手間とお金をかけて、さしたる効果はない、という。

    だけど、私自身がん検診でがんが発見されて切除した身なので、「こんなひどい目にあった人がいる」事例が次々と紹介されると、ショックがないとは言えない。
    そして、抗がん剤より体の負担が軽いホルモン剤を服用し続けているけれど、薬の副作用で骨粗しょう症になり、その治療薬の副作用で、いま大変胃があれている状態である。
    癌は、切ったら終わり、ではないのだ。
    そこからの治療が長くてしんどい(場合が多い)のだ。

    だから、自分がこのような状態になったらどうしようと思うと、やっぱり不安だ。
    今は元気なはずなのに。

    ”副作用のことを考えて悩めというのは高望みかもしれない。しかしそれでも、副作用が生じたときに後悔しないためには、患者は自分で考え、よく納得してジャンプする必要がある。”
    と言われても、やっぱり信頼しているお医者さんにお任せしたいと思う。
    余計なことを言ってお医者さんを煩わせるより、気持ちよく治療してほしいという思いがある。

    私は今現在、行われた治療に後悔はしていないけれど、再建した胸への違和感は思った以上で、未だに寒い日が続くと胸にプラスチックのお椀のようなものをかぶせているような異物感が気になってしょうがない。
    手術後しばらくしたら、傷の痛みなんてなくなると思っていたから、こんなふうに感じるとは全く思っていなかった。
    だけど、自分の体にメスを入れて、自主的に重症状態になるのだから、後遺症が残って当たり前なんだな、と自分に折り合いをつけている。

    全然話は変わるが、著者がロスアラモスに留学した時の記述。
    ”町には、研究員や職員とその家族、オヨに彼らを目当てとする商業関係者しか住んでいない。親たちの職業を反映してか、子供たちの平均学力は全米トップクラスで、戸締りをしないで寝ても安全だといわれた。”

    30年ほど前、茨城県つくば市に住んでいたことがあって、まさしくこのような研究者と公務員しかいない町だったけれど、痴漢や変質者が多くて、とてもじゃないけど安全ではなかった。
    変質者に襲われたら「助けて~」ではなく、「火事だ~」と叫べ、と学校で教えるくらい。
    「助けて~」だと係わりになりたくない人は聞こえないふりをすることがあるけれど、「火事だ~」だと必ず様子を見に来るから。

  • 「治癒率は同じなのに乳房を切り取るのは外科医の犯罪行為」「がん検診は百害あって一利なし」「切って治ったと思っているのは、がんではなく『がんもどき』」……。日本の医療常識に真っ向から対立する論文を次々と発表し、医学界を驚愕させてきた一人の医師。開業医の子として生まれたエリート医師が、いかにして革命・真実の道を歩み始めたのか。大学病院を舞台に、たった一人で医学界の常識や権力構造と戦いつづける医師の、壮絶なる闘争物語!

  • 「がん放置治療」提唱者,近藤誠先生のライフヒストリー。生い立ちから,医師という仕事を選んだ動機,がん治療の現状に対する疑問,なぜそうした疑問が芽生えたか,治療での失敗,人間の尊厳と死,著者の経験したさまざまなことがらが平易な言葉で綴られています。特段の使命感を持って入ったわけではない業界の現状に疑問を持ち,改革をする,それには人間としての誠実さと,情熱と,そしてちょっとした戦略が必要ということがいえそうです。★10個つけたいくらいです。

  • 医者の個人史として読むと、なんとなく医学の道を志したが、人生を賭ける放射線治療(癌治療)と出会い、自分の本音を話すという内面といい治療を患者さんに受けさせたいという突き動かすものがあったのかが分かって面白い。癌治療の時代の諸相、医局内の権力関係と患者利益もあからさまになっていて、興味深かった。医療が常に最善のものが提供されていると思い込んでいたが、権利関係や医者の信念によるところが大きいことは、ある意味でショックだった。
    近藤氏は従来の医療に批判的な著作を多くかかれているので、なぜ医者なのに同業者を批判するのか、医者(しかも個人開業医ではなく大学病院勤務医)でありながら同業者批判が可能なのかを不思議に思っていましたが、この本で背景がわかった。

  • 4062567784 396p 2003・9・20 1刷

  • 03.11.28

  • がんの外科手術を強く批判した一冊の本がきっかけで彼は目の前にあった大学での出世が泡と消えた、そのいきさつと現場を見てきた医師本人が医療の怖さを告発する。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1948年、東京都生まれ。医師。「近藤誠がん研究所」所長。
73年、慶應義塾大学医学部卒業後、同医学部放射線科に入局、79~80年、アメリカへ留学。83年から、同放射線科講師を務める。96年に刊行した『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)で抗がん剤の副作用問題を初めて指摘し、医療の常識を変える。2012年、第60回菊池寛賞を受賞。13年、東京・渋谷に「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を開設。14年、慶應義塾大学を定年退職。
ミリオンセラーとなった『医者に殺されない47の心得』(アスコム)ほか、『「健康不安」に殺されるな』『「副作用死」ゼロの真実』『コロナのウソとワクチンの真実』(和田秀樹氏との共著)『新型コロナとワクチンのひみつ』(以上ビジネス社)、『最新 やってはいけない! 健診事典』(講談社)、『医者が言わないこと』(毎日新聞出版)、『どうせ死ぬなら自宅がいい』(エクスナレッジ)など著書多数。
2022年8月13日逝去。

「2023年 『医者に殺されるなー僕が最後まで闘い続けた"医療不信"の正体」(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近藤誠の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×