アイとアユム: チンパンジーの子育てと母子関係 (講談社+アルファ文庫 F 47-1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062569712

感想・レビュー・書評

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  • パソコンで勉強するチンパンジーのアイと、2000年に生まれたアイの息子アユム。その子育てについてまとめられている読みやすい1冊です。

  • アイとアユム、この2人の名前を知っていますか。アイは母親、アユムがその子ども。愛知県犬山市の京大霊長類研究所に住んでいるチンパンジーの親子です。松沢さんはこの母親であるアイと40年近くも共同研究を続けてきました。そう、アイは松沢さんの共同研究者なのです。いろんな課題をこなしています。パソコンなども使いながらいくつもの言葉を理解するようになっています。そのアイが5年ほど前に子どもを生みました。アイが覚えたことばなどが子どもにどう受け継がれていくかが現在の研究テーマです。すでに、生まれたときからアイがやっていることを見ていたアユムは、知らぬうちに勝手にいろいろなことをおぼえているようです。本書は新聞の連載ということで、1節ずつつながりがなく、まとまったお話にはなっていません。が、その分、直接アイとアユムに関係のないところで興味のある話に出くわしました。1つは、ドイツのライプチッヒにあるマックス・プランク研究所のこと。実に面白そうなことをやっています。個人的には20年ほど前にライプチッヒを訪れたことがあり、まだ旧東ドイツの名残があって、英語が話せない人がホテルにいたりでけっこう大変でした。でも、もう一度訪れてみたい、こじんまりとした素敵な町です。もう1つは京大総合博物館のこと。できたのは知っていたけれど、そんなに面白そうと思えなかったので、一度も行っていませんでした。アイがやっている実験が実際に試せるということで、ぜひ子どもをつれて近いうちに行ってみたいと思いました。こんな面でも収穫のあった本です。その後、京大博物館に行ってきました。うーん、まあまあかな。動物のあごの骨など見せてもらって、お姉さん(大学院生?)に説明もしてもらえました。

  • (2006.01.14読了)(2005.11.24購入)
    副題「チンパンジーの子育てと母子関係」
    「おかあさんになったアイ」の続編です。単行本「アイとアユム 母と子の700日」(2002年8月刊)の文庫版です。
    「本書は、チンパンジーの三組の親子の観察記録です。生まれたばかりの子供が成長していく最初の二年間を記録しました。子育ての様子、親子のきずな、仲間との関係などが描かれています。」(3頁)

    ●8ヶ月(20頁)
    最初の一ヶ月、母と子は片時も離れなかった。最近(8ヶ月)、子供はようやく母親から離れるようになった。でも、すぐに胸に戻っていく。夜寝るときは、いつも母親が胸の上に抱き上げて眠る。つまり、一日のほとんどすべてを、母と子は一緒に暮らしている。子は母にしがみつき、母は子を抱きしめる。
    ●ゲノム(54頁)
    「ゲノム」は英語で「Genome」とつづる。遺伝子(Gene)と染色体(Chromosome)という語を合わせて、ゲノムと言う言葉ができた。ゲノムとは、人なら人と言う種が持っている、すべての遺伝情報のことだ。
    ●人間とチンパンジーの違い(70頁)
    人間の場合は、生まれたときから母親と赤ん坊は離れている。そばにいるかもしれないが、しがみついてはいない。抱きしめてもいない。チンパンジーの赤ん坊は静かだ。滅多に泣かない。でも、逆にいえば、泣く必要もない。なぜならいつも母親にしがみつき、抱いてもらっているからだ。人間の赤ん坊はよく泣く。泣いて母親を呼ぶ。人間の母親は赤ん坊に語りかける。いわば、声で抱きしめている。
    ●指差し(152頁)
    人間との関係が希薄なチンパンジーだと、指差しをしても指の先端をしげしげと見てしまう。コミュニケーション障害を持つ人間の子供でも、同様なことが起こる。「人差し指の先にある空間を辿ってその先に目を向ける」と言うのは、きわめて高度な知性と言えるだろう。
    ●チンパンジーの子育て(184頁)
    アイがアユムの手を取って教える事はない。「ああしなさい、こうしなさい」と子供に何かを強いる事はない。だからと言って無視しているわけでもない。子供からの働きかけに対しては、きわめて寛容に答える。親は、子供が必要とするときに手を差し伸べる。
    ●子供の成長(216頁)
    生まれてから毎日ずっと、親の後姿を見続けながら、ある日突然、子供は親のまねをし始めます。自分でしたい、親と同じことをしたい、と言う強い動機があるようです。親はそれを見守っています。上手にできたからと言って、ほめることもありません。

    チンパンジーの知能の高さには驚かされます。遺伝子レベルでの、人間との違いは2%ぐらいしかないと言うことですので、当然のことなのかもしれません。
    ●関連図書(既読)
    「チンパンジーはちんぱんじん」岩波ジュニア新書、1995.06.20
    「おかあさんになったアイ」講談社、2001.04.24
    「進化の隣人チンパンジー」NHK人間講座、2002.04.01

    著者 松沢 哲郎
    1950年 愛媛県生まれ
    1974年 京都大学文学部哲学科卒業
    1978年 アイ・プロジェクト開始
    1986年 アフリカの野生チンパンジー調査開始

    (「BOOK」データベースより)amazon
    天才チンパンジーのアイが、アユムを産んでから5年。アユムの乳幼児期からアイはどのような母子関係を築いてきたのでしょうか。いつまでも乳首に吸いつく子どもを母はけっして叩かないし、叱らない。母性という本能を経験から引き出すことはヒトもチンパンジーも同じですが、成育環境の違いから方法論は違っています。克明な研究記録からヒトとチンパンジーの相違と同一性が解き明かされていきます。

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著者プロフィール

京都大学霊長類研究所 行動神経研究部門 思考言語分野 教授 理学博士
1950年生まれ・1974年京都大学文学部哲学科卒業、大学院進学。
京都大学霊長類研究所助手、助教授を経て現職。

「2003年 『チンパンジーの認知と行動の発達』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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