太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062577137

作品紹介・あらすじ

「生命の誕生」を可能にし、生きとし生けるものすべてに恵みを与える。-「母なる星」のイメージは、間違いだった!11年周期で増減する黒点が、苛烈な太陽を演出していた。コロナ質量放出、磁気嵐、高エネルギー粒子線…。絶え間なく繰り出される太陽の攻め手を、地球はどうしのいでいるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館の入り口近くにいつも特集コーナーを作って関連本が並べてあるのだが、先日は宇宙特集だった。タイトルはさほど魅力的でないものの出版日付の新しかったのを1冊選んでみた。この分野は新しい知識の蓄積も多かろうと踏んでのことだ。

    太陽から地球までのジオスペースの様子と、太陽が地球環境や人間社会に及ぼす影響とを解説している本。人工衛星時代になってやっと知見が集まりだしたところで、まだ分からないことだらけの分野だそうだ。この本について注文をつけるとすると、語句の解説などもっと丁寧にできたのではないかという気がする。なんとなく思いのままに語っているような書きぶりで、繰り返しも多くて読んでいて少し散漫に感じた。

    ふつう太陽の大きさと言うと、可視光線を発している光球の大きさを指す。しかしプラズマの火の玉である太陽からは、太陽風、フレア爆発、コロナ質量噴出などの形でプラズマ大気が外へ噴き出しており、地球にまで及んでいる。地球は太陽圏の中におさまっていると言える。太陽からのプラズマや高エネルギー粒子線から守ってくれるのが地球磁気圏だ。地球磁気圏は、太陽と反対側に尾を引いたような格好をして、太陽からの攻撃を受けてたわんだりしながら頑張っている。太陽活動の影響により、地球上でオーロラや磁気嵐が起きる。

    太陽活動には周期がある。昔から観測されてよく知られるのが黒点の増減。黒点は周囲より冷たい所なのに、なぜか黒点が多いほど太陽から放出されるエネルギー、特にX線や紫外線が多くなる。これは11年周期の太陽周期と呼ばれる。黒点は低緯度に多く、そばからフレアが吹き出たりする。フレア以外にも、高緯度のコロナホールから吹き出ているものもあるようだ。こちらは黒点が少ないときの方が盛ん。11年周期よりもっと長い周期(極大期、極小期)もあり、気候に大きな影響を与えていると考えられる。

    磁気嵐による人間社会への影響
    ・人工衛星へのダメージ
    ・通信のかく乱
    ・高緯度を飛ぶ飛行機にまで放射線
    ・高緯度地方では、ひどいと変電所が火を噴いたり
    ・伝書鳩が迷子になる

    もっとも気になるのが地球磁力の減少傾向。ガウスが200年前にはじめて測定して以来、年0.05%のペースで減りつつあるらしい。このペースで行くと1200年ごろにはゼロになる計算。日本でもオーロラが見れる!と喜んでいる場合ではなく、放射線がビシビシ降り注ぐし、大気を太陽風に持っていかれるしで大変なことになる。普通に考えてこのまま減るって事はなさそうだ。N極・S極が入れ替わる現象さえ、地質学的年代スケールではたまに起こっているので、驚くことではないのかもしれないが、たかが200年間とはいえ足元で急速な変化が生じているのは何となく穏やかでない気がする。

  • 「母なる星」のイメージは間違いだった!コロナ質量放出や磁気嵐など、絶え間なく繰り出される太陽の攻め手を地球はどうしのいでいるか?

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB06453213?caller=xc-search

  • 最初、は?つまらん、と思ったけど、2章目くらいから面白くなってきたイメージ。
    最初は、読者をなめすぎな感が^^; あった気がしますが。作者が思うより、皆、地球と太陽のこと知っているのでは?と思ったものですが。
    少し読み進めると、なるほど、知らないこといっぱいで、それなりに初心者用に書いてくれているので分かりやすくて、面白かったかなぁ。
    オーロラに11年周期(というか太陽の活動の周期)があるのでは、って、はい、まさに私も思ってました、っていう(笑)。だって、知り合いにそう言われたんだもの。
    関係がないということでもないのだろうけれども、実は太陽活動が停滞する時のコロナホールからプラズマが出てきて、お蔭でオーロラが活発に出現する、っていう。
    へぇ、という感じでした。

    あとは、衛星なんてしょっちゅう太陽活動に影響を受けて壊されている、っていうこととか(やばいのはほんとに時々かと思っていたら、思ったより頻繁にいろいろあるっぽかった。)。磁極狂いの影響は飛行機にももちろんあるわけだけれども、飛ぶ前に毎度関係者が集まって議論・確認をして、時機のみだれの影響のない航路を決めるんだ、っていう話とか(もしやこないだ乗った時の急な変更はそれだったのかな・・・technical problemくらいにしか言ってなかったと思うけど)。

    宇宙は放射線がすごいから、スペースシャトルで働く人はそんなことにも命がけ。太陽活動があまりに活発なときは、シャトルの中ですらどこか安全な場所に隠れなければならないらしい、とか。

    すんごい細かいことでは、極地方に近い所では、なにせ北極と磁極は必ずしも一致していないがゆえに、コンパスの北が完全に180度南を指すことがある、っていうのには! 考えたら確かに!て感じだけど全く考えたことなかったので軽い衝撃を受けました。
    オーロラのカーテンのひだはすべて平行なんだ、とか。

    いるかの大量座礁とかも、太陽活動と関連がありそうだ、とか。伝書鳩や渡り鳥は実は磁力を頼りに飛んでいるんだ、とか。
    プチトレビアがいっぱい。

    紛争と太陽活動の関係を、開発学・心理学含めて研究したら、面白い論文が結構かけるんじゃないかと思いました。

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号 408//B59//1713

  • 太陽物理の入門書である。太陽の黒点の変化、それに伴う磁場の変化がいかに地球に大きな影響を与えうるかを理解できる。最近の観測によると2013年に向けて活動の極大期に入ると報告されており、それによって宇宙にある人工衛星のみならず、送電線やデータ通信、石油やガスのパイプラインといった幅広い場面に影響が出るのではないかと言われている。また、太陽の活動の変動は地球の気候変動との関連があるのではないかとの疑いもある。特に宇宙、環境、通信に関連した分野に興味のある方に読んでいただきたい。
    (システム創成学科)

    配架場所:工2号館図書室
    請求記号:444:Ka37


    ◆東京大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2002993946&opkey=B148056178103941&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=6&cmode=0&chk_st=0&check=0

  • 太陽。見て当たり前のこと。と思ったら大間違い。むちゃ面白い。私たちが生きていることは、奇跡と知る。景気分析にも最適。

  • 人間が太陽と認識しているのは人間が見えている光を太陽と思っているだけで、もっと大きな視点から見れば、地球も太陽の中にあるのだということ。

  • 20110911ブックファースト阪急山田

  • 環境問題を追及していくと太陽にたどり着く。もっとも身近な星なのに分からないことだらけ。

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著者プロフィール

名古屋大学・名誉教授(太陽地球環境研究所)

「2011年 『総説 宇宙天気』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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