新幹線50年の技術史 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578639

作品紹介・あらすじ

1964年に世界初の高速鉄道として日本に誕生した新幹線は、2014年で50年を迎えた。新幹線の技術的ルーツが初めて世間に向けて発表されたのは「超特急列車 東京-大阪3時間への可能性」という1957年に開かれた講演会のことである。そこを起点とすれば57年になる。
当時、急速に劣化が進んでいた日本国有鉄道という組織の中で、新幹線は営業面でも技術面でも唯一の明るい部門であった。国鉄末期には停滞した時期もあったが、1987年に国鉄の分割・民営化が断行されて、新生JRによって再び活気を取り戻した。
極東の小国が自力で世界一の高速鉄道を造り、営業的にも大成功を収めたことに、鉄道先進国を自負していたヨーロッパ諸国は急追の動きを見せた。1981年にはフランスが新幹線を参考にして、また他山の石としてTGVというシステムを作り上げ,明確に世界一の座に就いた。
さらにその後、鉄道技術では後進国とのイメージが強かったスペインや中国によって、世界の高速鉄道の地図は大きく塗り替えられた。そのかげで、元祖新幹線には時代遅れや色あせたイメージさえつきまとうようになってきた。
一方で、災害大国でもある日本で、新幹線は奇跡ともいえるような安全実績を更新中であり、なお日本の新幹線には世界に貢献できる優れた技術も少なくない。日本の優れた技術と諸外国に見られる積極的な発想とを組み合わせれば、国の内外で鉄道の社会的役割が一層高められるであろう。
このように、新幹線が歩んできた50年の歴史を技術の視点で振り返りながら、リニア中央新幹線の建設も見据えて将来像を考えていく。新幹線ともに鉄道技術人生を歩んできた筆者による渾身作。

感想・レビュー・書評

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  • 鉄道関連に関する見識もないのですが手に取ってみました。
    申し訳ないのですが私の興味の枠は超えません。力学的な技術と雑学として読みました。

  • 新幹線が歩んできた50年の歴史を技術の視点で振り返りながら、リニア中央新幹線の建設も見据えて将来像を考えていく。新幹線ともに鉄道技術人生を歩んできた筆者による渾身作。(出版社HPより抜粋)

    ◆◇工学分館の所蔵はこちら→
    https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT21972333

  • 新幹線の設計思想・高速化へのチャレンジに加え、欧州や中国の高速鉄道との比較やリニアとの比較までを網羅。よくまとまっています。
    続きはこちら↓
    https://flying-bookjunkie.blogspot.com/2018/09/50.html
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  • 1964年に誕生した新幹線は、大量の高速輸送を安定的に実現するため試行錯誤を繰り返してきた。新幹線50年の歩みを技術中心に振り返り、将来を展望する。

  • 引用省略。

     中国に輸出した新幹線が改造されて中国製と主張されたり、同じく中国での新幹線事故が起きた際にも、パッケージ輸出論が盛んになる。しかし、本書を読んでみると、中国では日本製だけでなく、ドイツ製、イタリア製の技術情報が一般書で公開されたり、フランスのTGVが新幹線を、新幹線がTGVを研究、切磋琢磨することで技術が進歩してきたことが分かる。

     日本人は新幹線は世界に誇る最高の高速鉄道システムと思っているが、本書を読んでみると意外にも世界的に見れば決して最新式ではない、むしろ旧式のシステムであることが分かった。

     国鉄末期の労使問題が新幹線の技術開発の停滞につながっていたとは。

  • 新幹線の歴史をまとめた上に、国際的な視点から日本の技術のいる位置を概観した視点が貴重。日本の優れている点は認めた上で、諸外国に大きく立ち遅れている点がよくわかる。
    大局観を持たずに、日本に特化した「新幹線システム」を現状のまま環境の異なる国に売り込もうとすることのナンセンスさも、指摘されると目を覆うよう。視野の広い人が出てきて欲しい。
    磁気浮上鉄道についての一章もある。現在の予定線を使って、国際水準の鉄輪鉄道を敷く方が有効に思えてならない。
    青函トンネルについては、新幹線が 140km/h に制限されることを知らなかった。その代案として、トンネル部分を単線並列とし、片方を新幹線、他方を貨物とし、輸送力の必要な貨物列車を続行運転しつつ、追い越す新幹線との相対速度を現在案と同じに抑える具体的なダイヤグラムが示されている。それを含め、日本だけが単線並列を採らず走行方向固定の設備しか持っていない現実と、その不利益を突きつけられる。
    50 年の歴史という観点では、同時代を生きてきた人間には当たり前のこともこのようにまとめておかないと同じ失敗が繰り返されそうだ、と感じた。

  • 海外の新幹線との比較や、国鉄時代の労使問題が技術開発が止まってしまった話など、興味深い。

    技術論以外にも、なぜ東北新幹線がスピードを出さないのか?新幹線と在来線の行き来が不便なのは?
    その理由を読むとバカらしくなる。

  • 1964年に誕生した新幹線は、大量の高速輸送を安定に実現するために、重量オーバー対策での線路の作り直し、ダイヤの改訂など、さまざま試行錯誤を繰り返してきた。開発された技術が海外に大きな影響を及ぼした一方で夜行列車や貨物新幹線など、実現しなかった構想もある。本書では、新幹線50年の歩みを技術中心に振り返り、整備新幹線やリニアなどの将来像を展望する。新幹線と人生を共にした筆者による渾身作。
      
    新幹線開業50周年の太鼓持ち的一冊かと思って読んだら、これが実に辛口! 営業的にも安全性でも成功していると「一般に思われている」新幹線の負の側面を初めて知りました。「自由席を導入したことによる重量オーバー」「車内サービス・設備が消え、海外からは『よくできた通勤列車』と揶揄される」「もっとスピードを出せるのに政治的な理由で出せない整備新幹線」などなど、国鉄時代の問題、JRになってからの試行錯誤といまだに残る多くの課題が厳しく指摘されます。一方で世界初の高速鉄道として成し遂げてきた栄光についても語られ、新幹線と人生を共にした著者の知識と新幹線愛に圧倒される一冊です。とても面白く読めましたが、専門用語がバンバン出てくるのに図解は一切ないという、鉄道素人には技術的に理解できない部分もたくさんあるので、この辺を改善してくれたらなあと思いました。別の本で勉強してから再読しようかな。

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著者プロフィール

工学院大学特任教授、東京大学名誉教授。
1939年東京都生まれ、1962年東京大学工学部電気工学科卒業。
東京大学助教授、東京大学教授、工学院大学教授を経て現職。
工学院大学の鉄道講座を主宰している。
2005年から8年間、JR西日本の社外取締役を務めた。

「2016年 『徹底カラー図解 電車のしくみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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