灯台の光はなぜ遠くまで届くのか 時代を変えたフレネルレンズの軌跡 (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062579391

作品紹介・あらすじ

ニューヨークタイムス、ウォール・ストリート・ジャーナル、ネイチャーほか、海外メディアも大絶賛!

1800年代、海難事故が相次いでいたフランスで、暗い海を明るく照らす灯台が求められていた。
小さな光を効率よく、より遠くまで届けるにはどうすればいいか――その難題に挑んだのがオーギュスタン・ジャン・フレネルだった。
多くの命を救い、人々を魅了し、世界中に広まった「フレネルレンズ」とは何か。
いわゆるオタクで内気だった青年が、信念を貫いて築きあげた19世紀の偉大な業績に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 灯台の光はなぜ遠くまで届くのか。
    ――それは、遠くをのぞむ人々の希望を担っているためである。
    そんなモノローグが似合いそうなタイトル。
    フレネルレンズの発明までの過程と、その後の世界史のなかで灯台がどのように扱われてきたのかがまとめられている。

    灯台というものに、やけに心惹かれてしまう。
    それは、大きいからだ。
    昼間に見る灯台は、不必要なのではないかと思えるほどに、ただ白くのっぺりと大きい。灯台の白い大きな躯体は、夜に海をてらす光を支えるためだけに存在している。そしてあの、ガラスのレンズ。あれもまた、光を届けるというその目的のためだけに、あんなに巨大で分厚いものが用意されている。
    ただひとつの目的のためだけに、あんなに巨大なものが。
    陸の喧噪を離れて、ただ静かに生みを照らし続ける、その寡黙でおおきな存在に、
    どうにも心惹かれてしまうのだ。

    本書はあの巨大なレンズを中心に、灯台のこれまでを語ってくれた。
    「光」といえばここ数年、HIDそしてLEDが急速に発展し、我々の生活に身近になってきている。これからの光がどうなっていくのか、そしてそれは灯台の新たな歴史にどう関わっていくのか。そもそも、技術の発展がいちじるしい今、灯台の形状は今後もあの白く巨大なモニュメントであり続けるだろうか。灯台というものが、そもそも灯台というかたちで必要とされるだろうか。
    それは分からない。

    けれど、灯台というものがなぜか心をざわめかせ、魅了する存在であることは間違いないような、そんな気がする。

  • 19世紀世界史をフレネルレンズと灯台が担った役割という視点から紐解く意欲作。
    前半はフレネルの伝記、中盤以降は欧米でフレネルレンズ搭載の灯台がどのように浸透していったか、またそれは戦争においてどのような役割を果たしたかを描く。

    光は粒子であるのか波動であるのかをめぐる対立や、フレネルとアルゴの友情、フレネルレンズをフランス全土で設置するまでの戦い、フレネルレンズ設置に世界から後れを取り頑迷な政治家の強硬な反対にあいながらも、最終的にはほぼ全土で設置に成功したアメリカ、南北戦争での灯台の奪い合いなど見どころが多い。

  • 人命を守ることを最優先に発明、発展した灯台の光。戦争では真っ先に戦略起点となり次々と灯りを消されていったことからも、いかに重要なものかが分かる。

    星の位置やかそけき篝火を頼りに真っ暗な海を漂う船にしてみれば、岸辺から届く光明はまさに命の灯りだったのだろう。

    灯台の革命とも言えるフレネルレンズ発明後は海難事故が大幅に減ったという。発明者フレネルは、自身の命を削るかのように研究に没頭し若くして没したが、その魂はいまだ海を照らし続けている。

    GPSレーダーにより今後不要となっていくとも言われる灯台だが、レーダーを搭載していない小さな船舶や、レーダーが故障した時の為にもやはり存在価値はまだまだあるのだ。
    何よりも命を見守る光明として、ひとりぼっちで屹立するその姿は凛として神々しく、美しい。

  • 20190916読了。

    ネットのレコメンド記事をみてたのがきっかけ。

    19世紀前半までは灯台というのは大事な存在だった。商業取引をする上で、航海は欠かせないものであり、その安全性に灯台は大きく寄与していた。
    しかし一方で、灯台の光の弱さは問題になっており、灯台の明かりを探すあまりに船が陸地に近づきすぎて座礁することも少なくなかった。

    当時の一般的な説では光は粒子と考えられていたが、フランスのフレネルは緻密な実験を行い、波であることを突き止める。そのうえで光の指向性を高めて今までを遥かに超える距離を照らすレンズをつくりあげる。
    当時の最高のレンズでも20kmほどしか光が見えなかったところ、フレネルのレンズは100km先からでもみえた(それ以上でも見えるそうだが地球が球形であるため、それ以上遠くから計測できなかった)ため、まるで魔法のようだったという。

  •  近代史の陰にフレネルレンズあり、と言っても過言ではないかもしれませんね。
    それくらいフレネルレンズは革新的な技術であり、それは産業革命が可能にしたまったく新たな技術でした。

     そしてその技術をひらめいたオーギュスタン・フレネルという天才。理論は完璧だったのに、その巨大なレンズを製作する技術がなかったがために、比較的小型の完成品しかみることのなかったフレネル。その使命を受け継いで大型のレンズを完成させた弟レオノール。想像以上にドラマチックです。

     フレネルレンズの物語は、世界史でもおなじみの人物と繋がっています。光の回折をめぐって論争したラプラス。アメリカからフレネルレンズを買い付けに来たペリー。それほど世界にとって革新的な技術だったということですね。

     そしてまったく革新的すぎるがゆえに、それを受けいれられない人も居たわけですね。「既存の反射鏡の方がいい!安い!すごいんだ!」と。でも、実物を見れば一目瞭然。反射鏡の何十倍もはるか遠くを照らし、多くの船乗りを救ったのは、まぎれもなくフレネルレンズだったんですね。そうやって受けいれられてゆく様子は、文明史として見ても面白いのではないでしょうか。

     そのまま読み物として読んでも面白い本でした。おすすめです。

  • 100殺!ビブリオバトル No.67 夜の部 第9ゲーム「三位一体ビブリオバトル」

  • ブルーバックスでこの手のタイトルだから、純粋に科学的な説明などが書いてあるかと思いきや、灯台の光を明るくするフレネスレンズを考案した人物象から、灯台に関する歴史(アメリカ南北戦争など)なども絡めたストーリーになっている。
    もはやあまり利用されていないらしい灯台だけど、個人的には灯台のある風景は好きだ。なにより写真にするとなかなかにいいものがある(と思っている)。

  • 身近なレンズなわりに地味な印象が強かったフレネルレンズ。最近は一眼レフの高級レンズ採用されたりして、再び脚光を浴びている。フレネルがレンズを開発することになる経緯、またそのフレネルレンズがその後灯台という拠点を軸に歴史の中でどう扱われてきたのかを解説する。

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著者プロフィール

ミシシッピ大学のマクドネル・バークスデールカレッジ歴史学科長、准教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業後、アイオワ州立大学で歴史学の修士号、ハーバード大学で博士号を取得。アメリカ国立科学財団(NSF)より研究助成金、フルブライ財団と国際教育協会(IIE)より特別研究奨励金を授与され、多岐にわたる科学論文や記事を数多く発表している。

「2015年 『灯台の光はなぜ遠くまで届くのか 時代を変えたフレネルレンズの軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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