- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062581530
作品紹介・あらすじ
1807年。哲学界に未曾有の書が現れる。「無限の運動」の相のもと、およそ人類がもつ、知の全貌をとらえる究極の書。目前の木の認識に始まり、世界全体を知りつくす「絶対知」にいたるまで。文明の始原から近代ヨーロッパの壮大な知まで-。人間精神のあらゆる領域を踏破する、哲学史上最難解の書を、「ヘーゲル翻訳革命」の著者が、明快に読みつくす。
感想・レビュー・書評
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『精神現象学』の新訳で知られる著者による入門書です。著者の翻訳から引かれている多くの引用文が本文となじんでいて読みやすく感じられます。
ヘーゲルの『精神現象学』は、若さが全編にあふれている書物です。この本の執筆中にヘーゲルが馬上のナポレオンを目にしたというエピソードはよく知られており、ヘーゲルはみずからの時代を、いまだ封建支配が強いドイツにおいて近代的個人の自由がもたらされつつある「誕生の時代」だと見ていました。このような時代背景のもとで書かれた『精神現象学』には、産声を上げたばかりの「近代」という時代の躍動を感じとることができます。
「みずからが分裂し媒介する存在こそが主体と呼ばれる」とヘーゲルは述べます。みずからを否定する事実に直面しながら前へ前へと進んでいくのが「主体」であり、この主体を突き動かしているのが「理性」への確信だとされます。「理性とは、物の世界のすべてに行きわたっているという意識の確信である」とヘーゲルは述べ、このような確信を現実のものにしようとする主体の能動性を高らかに歌いあげています。こうした運動そのもののうちに、ヘーゲルは絶対の真理の現われを見てとります。著者は、「絶対者や絶対の真理は、否定に否定を重ねたそのどんづまりにあらわれてくるというより、否定に否定を重ねる運動の相対をさして、それこそが絶対的なものであり、絶対の真理だといわねばならないのだ」と説明しています。
本書の第四章は、おおむね『精神現象学』の順序にしたがって解説がなされており、とくに奔放な展開を示すヘーゲルの議論にみなぎるパトスを伝えることに力が注がれているといってよいでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
えらくわかりやすい解説書であった。
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物語の比喩とヘーゲルの思考がしばしば混在している、と言われているけど、その境と法則を見極めるのが学問かと思うけど、この本では混在する、で終止している。入門編だからか?
今度セミナー受けるので、考えてみる。 -
ヘーゲルの書きながらの苦悩を示してくれた著。これを足がかりとすれば、おどろおどろしく思えた『精神現象学』の思考の嵐の中に、身を任せる覚悟も決まるはずだ。再び原著に対峙するのが楽しみになる。
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解説書。ヘーゲル新訳革命を起こした長谷川宏氏の訳。いちおう参考までに。少しだけ参考になった。2008.3.14-27.
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ヘーゲルの「精神現象学」っていうのはどこがどう難しい、というのを言い当てること自体が難しいっていうくらいのシロモノですが、それを言い当ててくれているのがまずありがたい。