長安の都市計画 (講談社選書メチエ 223)

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062582230

作品紹介・あらすじ

皇帝の居住地として天の子午線に対応する軸線をもつ王都長安東西九・七キロ、南北八・六キロのグリッド・プランはどのような宇宙論に基づいているのか。唐代最大の世界都市の構造と繁栄の様相を探る。

感想・レビュー・書評

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  •  最初のページは「大雁塔にのぼってみよう」という文から始まる。西安にある大雁塔には私も登ってみた。一番上の窓からは四角に区切られた整然とした街並みや街路が見え、計画的に作られた街だということが即座にわかる。小雁塔が遠くに見えていた。1984年のことであった。

     長安の都市計画の最大の特徴はグリッドプランを取り入れていることである。(後に我が国においても取り入れている。)方格状街割は土地の授受がし易く、統一的に把握することができた。そこに易経や風水の思想を取り入れて各施設を配置したそうだ。

     8・9世紀の世界都市は、コンスタンチノープル、バグダード、長安が三大都市だった。コンスタンチノープルが放射状、バグダードは円形なのに対し長安は方形であった。それは長安が「都市は、大地を表象する方形の形態をとることによって、大地にかぶさる円い天の中心と、宇宙軸を通して結ばれる」という中国の都市計画の伝統に基づいていたからだという。

     本書の面白いと思ったところは、導入部の第一章でユーラシア大陸の三つの都市(コンスタンチノープル、バグダード、長安)の比較をしている点にある。例えば、いわゆる民族の大移動といわれる現象が、ヨーロッパでのゲルマン人だけでなく、アーリア人の移動、トルコ族の移動、モンゴル族の西への膨張などが挙げられる。また同じ緯度には同じような歴史がやどるそうだ。農耕地帯、牧畜地域、農耕と遊牧が結合した複合地帯などあるが、長安の場合は農業と遊牧の境界線付近に接していることが重要だったという。人々が集まる要素がある、ということなのだろう。

     グリッドプランもさることながら、長安の立地場所が、川もあって道もあり民衆が集いやすい交通の結節点だったということが、長安が大都市として成立する大きな要因であったのではないか。

  • 都市の発生のしかた、東洋の四角と丸いアラブ。目から鱗でおもしろい。

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著者プロフィール

中央大学文学部教授

「2020年 『アフロ・ユーラシア大陸の都市と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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