- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062584371
作品紹介・あらすじ
コレラにインフルエンザ、国民病とも言われる「肺病」とあふれる梅毒患者たち。出産は命がけだし、母乳の出だっておぼつかない。常と死と隣り合わせだった江戸の人びとは、ユーモアあふれる諦観と温情に満ちた人的ネットワークで乗り切った。江戸文化のエキスパートが、近世日本の新たな一面を明かす。
感想・レビュー・書評
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江戸の人々と病気とのかかわりを、主に『官府御沙汰略記』という幕臣の記録に出てくる記事をベースに、病気、出産、医者、薬、看病などの視点から描くもの。
いろいろなケースが出てくるので、江戸の病気や医療を網羅的に見るのに参考になる。
本当に効くのか不安になる薬や、信頼ならない医者がはびこっているようにも見えるが、一方で、実用的な医療や助産マニュアルもあり、それらを駆使して病気や出産に対峙しつつ、温情・人情・相互扶助で病気や育児を乗り切ろうとする人々の様子も垣間見られる。切り口によって見え方も変わり面白い。
本書で扱われているのは主に18世紀後半のことなので、19世紀になって西洋医学が普及してくる状況を本書と同じ視点でみていくとどうなるのか、少し興味ある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸の病や薬、病人への対応などがよく分かった一冊。
延享(1745)~安永(1773)の幕臣の日記「官府御沙汰略記」を中心に描かれているので、どちらかというと武家の話が多いかもしれない。私的にはそちらの方がありがたいので二重丸。
結核には黒猫を飼うと良くなるという迷信や、薬食としてオットセイの肉を食べていたなど、初めて知る話も多かった。
とても面白かった。 -
すっげーお医者さん いいかげんだなぁ
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江戸時代成人の半分が梅毒にかかっていたというのがだいぶ驚き。
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江戸時代の日本では多くの病が蔓延した。当時の人々は死と隣り合わせだったとされる。前近代の人々が強力な病とどのように向き合い、その中からどのような人間関係や感情が生まれたのかに焦点を当てている。
新生児の授乳にも触れ、「乳付け(ちづけ)」と呼ばれる出産経験豊富で乳の出る女性に、新生児を抱かせてその乳を飲ませる習慣が当時は当たり前で、乳縁ともいうべきつながりがあったことも紹介している。また、「飼い殺し」とはもともと病で働けなくなった後も主人の家に死ぬまで住まわせる温情的慣行を表すものだった。
相互扶助によって病苦を少しでも和らげようとする、現代のセーフティーネットだ。
都立中央図書館蔵書