- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062586313
作品紹介・あらすじ
なぜ夢の中では架空の他者になれるのか、あるいは実在の他者になれるのか。なぜ夢の中では未来も過去もないのか。夢という体験世界の構造原理はどのようなものなのか。
夢は古代以来、未来予示あるいは想い人からのメッセージとされ、近代ではフロイトによって充たされない願望の幻覚的充足と解釈されたりした。また、脳科学や進化心理学によって夢研究は大きく進展しているように見える。しかし、そのような「解明」は私たち自身の夢実感に納得のいく説明を与えるものだろうか。
本書では、著者自身の夢日記や学生からの夢報告を材料として、夢という「世界」がどのような原理によって構成されそれをどのように体験しているのかを、現象学の方法によって、実際に解読していく。
現象学的方法は、現実が「世界」なら夢も「世界」であるという、これまで気づかれなかった認識を鮮やかに与えてくれるものである。
感想・レビュー・書評
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脳科学によって外側から夢を研究するのではなく、夢を見る
者の当事者研究として、夢をその内側から現象学的に解き
明かそうという試みであり、その端緒と研究への入門の仕方
を解説した本。その試みは面白いと思うし、夢を現象学的に
見ていくことで現象学そのものへの入門編になっていると
いうのもなかなか良く出来ていると思う。まぁ毎回のように
「読んでいる間だけわかった気になる現象学」という
パターンはそのままなのだけれど(苦笑)。
この「夢の現象学」において最大の問題点は「夢」と「夢
日記」との関係性に一言も触れていないことだと思う。
睡眠状態の脳が見ている夢と、覚醒状態の脳がその夢を解釈
してつづる夢日記のとは、決してイコールでは結ばれない
はずだ。そこにはどうしても覚醒した脳による再解釈という
要素が入ってくるはずだし、さらには文章にしたその瞬間に
言葉にならずにこぼれ落ちていく要素は山のように存在して
いることだろう。もちろん夢を夢のまま保存開示することは
出来ないのだから、これ以外にやりようはないとは思うの
だが、現象学として夢を取り扱う以上、その点は視野に
入れていなければならないような気がするのだが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夢を題材にしたフッサールの現象学の入門書といったところ。夢の構造を明らかにすることを目的としているので解釈や説明はなくとにかく、タイムトラベルや他者になる夢がなぜそうなるのか、そうなるようにはどういう構造である必要があるかを求める作りになっている。現象学を知らなくても分かるように書いてあるとはいうものの、やはりある程度の予習は必要だったと思う。