中古店で¥110で購入。
舞台、映像化と並び何度もコミカライズ化されている江戸川乱歩の代表作の一つのコミカライズ。
カバー折り返しの作者コメントによると作風を変えた記念すべき第一作目との事。
雨宮潤一が黒とかげを裏切り部下に撃たれるといった若干の改変はあるが ほぼ原作通りに漫画化されているので以降の作品の様に探偵が登場しない、主人公(性別)が変更される、ストーリー、設定等の改変がある以降のコミカライズ作品を先に読んでからこの作品を読んだ自分としては、えっ?探偵(明智小五郎)出てくるの!?、早苗が主人公じゃないんだ?と、ちょっとした違和感を感じたりもしたが 、むしろ原作通りの展開は逆に新鮮にも感じた。
ただ一つ、大したやり取りも無いのに黒とかげの明智への想いが唐突すぎるのが残念。(原作もそうだった様な気もするが)
ページ数の都合もあったのだろうがその辺(明智と黒とかげの愛憎劇)は高階良子によるオリジナルの描写があっても良かったように思う。
それでも、ラストの二人の「悲恋の別れ」はミステリーというよりも見事に恋愛漫画していてそれはそれで良しといったところか。
同時収録は「血とばらの悪魔」。
これも乱歩作品の代表作の一つ「パノラマ島奇譚」のコミカライズ。
主人公 人見広介が入れ替わる菰田源三郎の名を西条三郎。
原作ではヒロインで三郎(広介)の妻の千代子を婚約者と名前をさえ子に。
そのヒロインを妹、名前を千代子から子を取って千代に。
原作のクライマックスでのんびりと湯に浸かるといった呑気さが災いし後のコミカライズでは謎解きの役目を明智小五郎に取って変われたトホホな北見小五郎は雑誌編集者で千代の恋人 姉小路 真に変更し、広介の夢(パノラマ島)の共謀者に青年たかしを設定している。
尚、以前 本棚登録した江戸川乱歩妖美劇画館で主人公を女性に変更と書いたが これが完全な記憶違いで主人公は人見広介のままだった(トホホ)。
ストーリーの方はカットされている所もあるがほぼ原作通り。
但し、婚約者(原作では妻)ではなく三郎(源三郎)の妹を愛してしまうようになるのはオリジナルの展開。
この「犯人」がいつしかヒロインを愛してしまい、その愛故に「死」という形で罪を償うというのは「ドクターGの島」「地獄でメスがひかる」でも見られるパターンだが、後の作品でも流用する程 高階良子はこのパターンが気に入っていたのだろうか?
ミステリーとは言え少女漫画なので読者の少女達が喜ぶ(であろう)「許されない愛」という要素を意図的に加えたファンサービスとも取れなくもないが............
原作は人見の人間花火で終わるが こちらでは数年後、パノラマ島はどうなったのか?そしてパノラマ島に魅せられたかのような千代のモノローグで物語は終幕を迎える。といったオリジナルのラストは原作とは別に不思議な余韻が残る。
因みに「黒とかげ」では早苗の下着姿「血とばらの悪魔」では人魚の乳首がしっかり描かれていて当時(昭和46年)の少女漫画にしては大胆とも言えるエロティックなカットには驚かされた。
個人的には「黒蜥蜴」はJET版、「パノラマ島奇譚」は丸尾末広、上村一夫版がベストで、この高階版は上記の三作品に比べたら物足りない所もあるのでベストとは言えないが昭和40年代にそれも少女漫画で乱歩作品のコミカライズが描かれた事は評価したい(勿論作品自体も面白いと言う事も含めて)。