- Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062637930
作品紹介・あらすじ
有栖と火村の名コンビ、国名シリ-ズ第2弾! スウェ-デン館と呼ばれるログハウスに招かれた有栖川有栖が遭遇した驚愕の殺人事件!
感想・レビュー・書評
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新作の取材旅行で雪国にやってきたアリスは、泊っている宿泊施設【サニーデイ】の主から聞かされた【スウェーデン館】を訪ねた。そこは童話作家の乙川リュウの住まう館で、妻でスウェーデンの血を持つ美しい女性ヴェロニカ、リュウの本の挿絵などを描いている綱木叔美、その妹の輝美、スウェーデン館を建てた建設会社社長の等々力、ヴェロニカの父のハンス、リュウの母の育子が暮らしていた。そこでお茶会に呼ばれたアリスは、ヴェロニカに館を案内してもらった。
夜にリュウはもう一度アリスと話したいとスウェーデンの酒をもって話をしに来た。そのまま夜も更けての退室になったリュウを見送り、眠りについたアリスを起こしたのは宿泊施設のオーナーだった。彼はスウェーデン館で人が殺されたという。そこでは雪の中に残された足跡、折られて雪に埋められた煙突、少し開いていたドア、いくつもの謎をはらんで死んでいたのは昨日のお茶会にいた画家の叔美だった。
これ以上の悪いこと起こらないよう願うように、アリスは友人の火村に電話を掛けていた。
久しぶりの作家アリスシリーズ。国名シリーズの一作。
やわらかで美しい情景描写と、人物たちの(アリスからみた)的確で親愛のある描かれ方。本当に私はこの人の書く文章が好き。
推理の場面、ミステリのこういう場面は胸躍るものなのに、こんなに胸を苦しくさせるなんて。アリスという人を知っていくと、とても苦しいような気持ちになる。
人をこんな風に思いやりながら、火村さんの隣に立ち続けようとする姿が、痛々しかったり、苦しいばかりではなく、人を想うあたたかさが残るから、この人の作品は読みたくなるんだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぶっちゃけ地味なんだけど、その分正々堂々としたミステリが楽しめました! 作者の作品全般に言えることだが、リーダビリティの高さ故にサクサク読むことが出来た。 犯人は正直なんとなく分かってしまったのだけど、トリックは全然分からなくて、解明シーンでそうだったのかと唸らされた。
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'22年7月1日、Amazon audibleにて。
本当に,大好きで…大好きな作品です!もう、何度目かな…聴く読書では、初体験ですが。
本作は…僕が好きな、火村の「氷のような怒り」という感じではなく、なんというか…石坂浩二さんの演ずる「金田一」のラストシーンのような火村、というイメージです。優しげな、現実のせつなさを憂うような、火村&アリス…泣けます。
うーん…と、今回も、唸ってしまった…やはり、優しい有栖川さんのミステリーが、大好きです! -
やっぱり短編よりも長編の方が読み応えがあって好き。
今回はアリスが取材旅行先で遭遇した殺人事件。
もしや安楽椅子探偵みたく、火村先生は出てこないか?と思ったけれど、しっかり登場してくれて嬉しい。
トリックは奇抜すぎたり凝りすぎて複雑なものでは無いので何だか安心する。
だからと言って火村先生より先に解けることは無いけれど。
今回も一つ一つの謎を解き明かしてくれてすっきり。
あと火村先生の発言には色々過去がありそうな雰囲気を漂わせているけれども、それは明らかになる日が来るのかな?
次も楽しみ! -
火村、有栖コンビはいつ読んでも面白い。火村先生の冷静な推理考察が好きなので、長編をゆったりと楽しむ事ができて満足。
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取材で雪深い裏磐梯を訪れたアリス。縁があって招かれたスウェーデン館と呼ばれるログハウスで巻き込まれた殺人事件。童話作家の主人と温かい家族に秘められた悲しき過去。アリスは火村を呼び寄せ、その謎に挑む!
江神シリーズをここしばらく読んでいたので、火村とアリスの軽快なかけ合いが懐かしい。風のように駆けつけた火村の心強さと言ったら!大人だけでなく、子どもの心も開く鮮やかさ。問いただすのではなく問いかけるやわらかさが滲み出るシーンが素敵。「な?」って言う火村のお茶目なところ好き。
雪に残った足跡で謎が深まる事件。出題された家と川のパズルのように、解けてみれば単純に思えるのに気づけない絶妙なトリック。不可解な証拠から論理的に組み上げる火村はさすが。そして、火村が的中させた犯人の言葉が痛烈。糾弾する火村の言葉と犯人の悔恨が入り混じる苦い読み味がよかった。頭のところが欠けた釘で打ち付けては、大切なものは零れ落ちてしまう。
「世間の大人みんなに童話を書かせてみるのもいいかもしれない。どんな人生観や世界観を抱いているのか、どんな希望や疎外感を抱いているのか、顕わになる。あるいは、懺悔室でも聞けないような告解がもれて出るかもしれない」
火村のこの言葉からのアリスとのやり取りもお気に入り。本気で書かせてみたら、普段は気づかないものが浮かび上がってきそう。子どもを勇気づける童話なのに、大人の懺悔になってしまうかもしれないというのも皮肉だよね。 -
国名シリーズ2作目であるが、どうも私は逆行しているようだ。しかし、これまで読んできた短編はそれら自体が執筆時期が前後しており、どこから読んでも楽しめる本格ミステリーだと思う。
福島裏磐梯のペンションに有栖川有栖が宿泊、童話作家の乙川リュウの館は別名スウェーデン館と言われている。そこで客人の一人が殺される事件が発生する。
時期はバレンタインデー、冬、そして場所が館なので、足跡トリックか。ペンション、バレンタインとくれば、これまた恋愛絡みか。有栖の心の中が透けて見えるのも珍しい作品である。
因みに火村は前半は登場しない。火村ファンはもどかしさを感じて後半に入り、前半のもどかしさを取り戻せる。
有栖川有栖の作品の楽しみは文章を丁寧に読むことで散りばめられた言葉のひとつひとつに布石が見え隠れするのがわかることだ。これも人気の理由ではないだろうか?作家としての考え方も面白い。
後書きは火村ファンである宮部みゆきが書いている。本人が後書きを書いている作品も比較的多いことや内容も面白いので、これも楽しみのひとつである。書かれていない作品もあると残念だが、宮部みゆきの後書きは、より一層火村に対する見方を深めてくれる。 -
火村シリーズはやっぱり面白い。
地道に論理を組み立てて真相にたどり着く様子は読んでいて楽しい。
消えた凶器、折れた煙突、犯人の足跡の行方。
苦味を伴う結末には、やはりなと思いつつも胸がきゅっとなった。
でも無事解決して良かった!で終わらないところが好きだな。