タイムトラベルの哲学: なぜ今だけが存在するのか過去の自分を殺せるか (KODANSHA SOPHIA BOOKS 魂 25-1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062691635

感想・レビュー・書評

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  •  タイムマシンがもしできたとしたら、今と言うこの時には戻れない気がする。今という時間はどこにあるのかは分からなくなるのでは無いか。

     この本は今まで意識に上がってなかったことを意識させてくれた。確かに一つの疑問であり、考えぬかれた論理的な解釈でした。もし、タイムマシンなるものができて、過去という時間軸の現実に戻れたら今という客観的な現実世界には戻れないような気がする。何処が現実的だったのかが分からなくなってしまう。今よりも一日前の世界であっても五分前のものであってもいけない。こういうことに考えを巡らす度に感じることは、過去にいくことも、未来にいくことも、僕にはバーチャルの世界のような気がしてならない。科学に裏打ちされた客観的な今この「現実」が大事に思えるし、尚更ひかり輝いてみえるのだ。
     

  •  この本は過小評価されていると思う。
    『タイムトラベルの哲学』というSFチックなタイトルから、あるいはかわいらしい表紙および挿絵や、ソフトカバーという体裁などから侮ってはいけない。本書は正真正銘の哲学書であり、哲学初心者から哲学ファンまでをも納得させる優れた時間論入門である。
     タイムトラベルとは何か。タイムトラベルの実現可能性以前に、まずこの問題から問われなければならない(というより実現可能性については本書では論じられていない)。その問いは当然「時間とは何か」という問いへと掘り下げられてゆく。透明な文体で語られるその論述はクリアであり、読者を全く選ばない。
     とりわけ八章の「アキレスと亀の遺産」は、日本哲学界の大御所野矢茂樹が、その応答論文(『他者の声 実在の声』所収)を『思想』に書かずにはいられなかったほどであった。「時間軸が運動によって伸縮するこの設定においては、アキレスは亀に追いつく必要はない」という青山の説明は、このパラドックスを論じた他のどの論文よりも分かりやすく説得力があるように思われる。
     本書が発売されたとき、著者の青山は弱冠二十六歳の大学院生であった。冒頭の永井との対談では「哲学歴三年」などとうそぶいている。半信半疑で読み始めたものだったが、本を閉じる頃には著者の哲学的才能および本書の哲学的意義を確信していた。アウグスティヌスの問いに応えた最後の二行には感動すら覚えた。

  • タイムトラベルを題材に、「タイムトラベルの理解可能性」「なぜ今だけが存在するのか」といった時間に関する哲学的な興味深い議論が展開されているが、正直自分のレベルでは、半分も、どういうことを言っているのかの理解ができなかった。

  • 丁寧に考察しているところがいいところだと思う。

    文体に、とげとげしい印象を受けるところもあるが、それを含めても良書であったと思う。

    永井さんと青山さんの違いは見えにくい。というのも、お互いに影響を与え受けているからだろう。強いて言えば、永井さんが「私」から出発しているのに対して、青山拓央さんは「今」から出発しているところにあるのかもしれない。

    この本の一番のテーマではないかもしれないが、レコードの例が気になった。完結した世界がレコードであり、それを外部から神の視点で見るという形の議論があったと思うが、その神が住まう場所もまた世界であるとしたらどうなるのだろう。

    それから、今の位置に針をさす順番をデタラメにしても我々は少しもわからないというのも、妙な話だと思った。私にはわかるのではないだろうか。永井さんなら、端的な今という言葉で表現して、私の今が分かると思うかもしれない。

    青山さんの場合、そのレコードは無時制であるようにも思える。なんだか回転していないレコードを思い浮かべてしまう。どこも均等に存在を主張していることがこの問題を問題にしている。

    大化の改新が645年に繰り返し行われ、関ヶ原合戦が1600年に繰り返し行われ、そして新元号発表が2019年に繰り返し行われ、というように変な設定である。

    でも、タイムトラベルというのは、ただの西暦の違いだけではないはずだ。内容が伴われないと、意味がないはずだ。でも、どうして内容が伴わないと、ダメなのか。ずっと変化のない宇宙に住んでいたとしたら、タイムトラベルは魅力的でないだろう。

    その真逆で、何の脈絡もなく、ずっと変化してばかりの宇宙でも、タイムトラベルの意味がわからないはずだ。すでに、タイムトラベルができているからだ。でも、これがいいのだ。問題点としては、自由意志で行けないところだろう。それに、日常の時間推移もある意味でタイムトラベルと考えてしまえそうである。

    まだわからないことだらけだ。でも、それが面白いのかもしれない。

  • 人の意識を物理的でないものとしているので、その前提で意見が違う人には無駄な議論に見えるかもしれない。

  • 時間論について。
    こういう本は初めて読みました。
    大変興味深い!

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    対談 この本を読むにあたって―アキレスとグルーの時間論
    序章 タイムトラベルとは何か
    1 タイムトラベルの理解可能性
    2 時間モデルとタイムトラベル
    3 誰が時間を語るのか
    終章 失われた時を求めて

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • タイムトラベルについてまじめにちゃんと哲学してる珍しい本。再読したい

  • 中学生の時分に本書を読んで、そのときからタイムパラドックスに興味を持つようになりました。
    大学の卒業論文の一資料として本書を活用するつもりです。
    内容は主にタイムトラベルをしたときに問題となる点の解説です。
    4コマなどの絵を使ってわかりやすく解説してあるので、読みやすい一冊です。

  • 読もうと借りたが進まなかった・・・・

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著者プロフィール

1975年生まれ。千葉大学大学院社会文化科学研究科単位取得。専攻は哲学(慶應義塾大学より博士号授与)。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。主な著書に『時間と自由意志』(筑摩書房)、『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』(太田出版)、『心にとって時間とは何か』(講談社現代新書)、『分析哲学講義』(ちくま新書)などがある。

「2023年 『〈私〉の哲学 をアップデートする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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