金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062729741

作品紹介・あらすじ

「いつでも核を撃てる」。
核大国化する一方で、当局も手を焼く不正・賄賂・麻薬。
荒廃する北朝鮮社会と、それでもしたたかに生きる人々を、インテリジェンスに精通する朝日新聞ソウル支局長が活写する。

<本文より>
金正恩の母・高英姫は存在が深く秘された存在だった。在日朝鮮人の娘として生まれ、金正日や高級幹部を接遇する「喜び組」に選抜されたことが契機となって金正日の3番目の妻として迎えられたとされる。在日朝鮮人は、北朝鮮では「帰胞(キポ)」と呼ばれ、二級国民としての扱いに甘んじていた。金日成ら抗日パルチザンの密営があり、金正日もそこで生まれたと宣伝した「白頭山血統」という金看板で着飾った北朝鮮指導層とは対極をなす存在だった。
よりによって、そんな結婚が許されるというのか。
金正日は高英姫を、ただの一度も父・金日成に会わせることはなかった。次男の正恩も祖父に会うことはなかった。高英姫と3人の子どもは金正日の別荘、特閣に住み、外界とは厳しく隔離された。1984年1月8日に生まれた正恩は1996年9月にスイスに留学するまでの間、この特閣暮らしを強いられた。この間、竹馬の友とも言える友人を持つことを許されなかった。いつも一緒に遊ぶ人間は兄の正哲か妹の与正。それ以外は過剰なまでの阿諛追従を連発するお付きの人間しかいなかった。
こうしたゆがんだ生活がいったい、正恩に何をもたらしたのか。過剰な自己愛と母親への同情心、父親への憎しみだった――。

感想・レビュー・書評

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  •  おどろおどろしい書名はともかく、核・ミサイル問題そのものというより金正恩自身及び彼の時代の北朝鮮の内部事情が中心で、それに関係国の動きを少し加えている。全般的に読みやすい。
     金正恩自身については、「自己愛性パーソナリティー障害」「危険・暴力・予測不能・誇大妄想」という日米各当局者の分析を紹介している。北朝鮮内部では、恐怖政治と粛清が行われる一方で、一般人次いでエリート層の人心離反が進んでいるという(が、全体的な経済の底上げは少しずつ進み、崩壊というわけではなさそう)。
     本書出版の2017年2月以降も核実験とミサイル発射、それに伴う経済制裁が進んでいる。米はトランプ政権が始動し、武力行使の可能性も噂されるようになってきた。韓国でも文在寅政権の誕生で対北姿勢は本書の頃から変わってきているのかもしれない。他方、2017年後半に日本を賑わせた木造漁船に本書で既に触れられているなど、現在そして今後の北朝鮮を見る上でも参考になる。

  • 2017年3月1日出版。
    17年2月は、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や金正男の暗殺などによって北朝鮮がいつにも増して注目を浴びている。
    そんな中、金正恩のおいたちから彼の政策(と、いえるならば)、最近の平壌の状況、北朝鮮で生きる人々の生活に至るまで、比較的「最近」のデータを読みやすくまとめた同書は非常に参考になる。新聞記者である著者が直接見聞きしたことも織り交ぜられているため、北朝鮮がリアルに感じられもする。
    こういった本は、メディアの情報をひたすらまとめただけのものも多いのだが、同書はメディアで報じられたあとにさらに追跡調査されているのか、北朝鮮関連のメディア情報をかなり丁寧に追っているはずの私も知らないことが書かれていて興味深い。

    北朝鮮についてよく知らない人にもお勧めしたい一冊だ。

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著者プロフィール

朝日新聞ソウル支局長。1965年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大阪商船三井船舶(現・商船三井)に勤務し、1991年、朝日新聞社入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員などを経て現職。著書に『北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕』(文春新書)、『戦争前夜 米朝交渉から見えた日本有事』(文藝春秋)がある。

「2017年 『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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