共生虫 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062736961

作品紹介・あらすじ

体内に謎の「虫」を宿した、引きこもり青年ウエハラ。彼はネットを通じ、インターバイオと名乗るグループから、その虫が殺戮と種の絶滅を司る「共生虫」であると教えられる。選ばれた存在であることを自覚した彼は、生贄を求めて外の世界に飛び出してゆくのだが…!?衝撃のインターネット文学、ついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍はどうも作品に思想を入れたがる傾向で、発表時の社会に対する批判や脈絡なく組み込まれるアーミー要素が楽しむ気勢を削ぐ。
    とはいえ、2000年当時普及も間も無いネット文化で文壇から放たれたこの作品は相当に鋭いとも感じる。
    回収し切れないメタファーもあるが、作中のアイデアも面白く、引きこもりとネット社会の共鳴が斬新に描かれた力作。

  •  引きこもりのウエハラと名乗る男の話。インターネットで自らが共生虫に取りつかれたと言われ、それを信じ自らの兄・父に手をかける。次いで、共生虫を教えてくれた人に言われ老人の殺害を企てる。
    しかし、共生虫の話は嘘であった。全く知らない誰かがネット上で彼を弄んだだけであった。それでも、もはや彼を止めることはできない。彼が老人を手にかける姿を見に来た人々は、彼の手にかかって殺されてしまった。。そして彼は、新たな標的を求め、山を降りる。。

     何か切れ味が悪い、と思うのは自分だけであろうか?村上龍にしては、今一つ鈍い切れ味だ。。

  • インターネットによって狂気と妄想は悪化するのだが、結局それにより引きこもりを脱し、社会に紛れ込むことができるというラストは独特だと思った。
    内容とは外れるが、ワードの検索結果の内容を全て閲覧することが可能、というところに驚いた。

  • 私の理解力では、読みにくく共感もしにくかった。
    2000年に書かれたインターネットの世界と考えるとすごいのかも。

  • 引きこもりのウエハラという青年が、サカガミヨシコというアナウンサーのサイトにメッセージを送ります。少年時代の彼は、死んでしまった祖父の体から這い出て来た細長い虫を、みずからの身体の内に宿すことになりました。その出来事をメッセージにして送信したところ、「インターバイオ」と名乗るグループから変身があり、その虫は殺戮と種の絶滅を司る「共生虫」であることを教えられます。

    インターネットを通じてウエハラが獲得する多種多様な情報は、彼のまなざしを外の世界へと向けることにつながらず、ひたすら彼自身の内側に照応するばかりで、彼の狂気は亢進していくことになります。そうしたインターネットのもつ問題的な側面をえがいているという点では、著者の現代という時代に対する感度の高さを実感させられたように思います。

  • 2000年に発表された作品ですが、2020年の今に読んだ感想としては非常にリアルで戦慄を感じる内容でいい本だと感じている。引きこもりがネット社会の情報をもとに使命感を感じて妄想に囚われて暴走していく筋書きが非常にリアルに感じられた。ネット社会の真偽のつかない情報を魔に受けるトランプ支持者のQアノンと同パターンに自分は感じた。引きこもりという設定の主人公だが、現実世界に適用して考えるとあらゆるネットに触れる人物が陥る可能性がある状況が今作で象徴的に描かれている。ネットを通じて病んでいく、最後のある人物の手記が一番印象に残っておる、それが今作の一番重要な内容だと自分は感じた。

  • 著者:村上龍(1952-、佐世保市、小説家)

  • 引きこもりが囚われた妄想を悪意を持ってドライブさせた結果……というような話。ある意味特徴的な人物として描かれるウエハラ。人の話を都合よくしか聞けず責任はすべて社会であったり環境であったり。どうしようもない奴のどうしようもない様が描かれている。「愛と幻想のファシズム」のトウジなら排除するだろうし「希望の国のエクソダス」のポンちゃんはきっと相手にしないだろう。落ち着いて人の話を聞き現状を認識し、受け入れることからしか正しいネクストステージはやってこない。改めてそんな事を思った。

  • パソコンという知識の匣から引き出される有益な情報、真偽不明の博学な知識。
    匿名性の胡乱さが掴み所のない読み味となって染み込む。
    引き篭った自室と雑木林を繋ぐもの。
    自意識と他者を結びつけてしまうもの。
    未来を確信することで見えてくる光の帯の中、起こる現代のサバイバル。

    ネットで与えられた共生虫に関する知識によって自分の狂いに正当性を得たウエハラは徐々に外に開き、目覚め、逞しくサバイバルしていくようになる。

  • 村上龍は文章がうまいばっかりに気持ち悪い描写がとことんえぐいので、なかなか人にオススメしにくい。本作品はまさにそういう一冊。非常にインパクトのある作品かつ社会風刺の切り込みが鋭いため、個人的には大好きなのだが、再読するにはなかなか手が伸びない。うーん。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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