照柿(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752596

感想・レビュー・書評

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  • 下巻はおもしろかった。達夫がかわいそうというか、はまりこんでしまった道から抜け出せないのが見えてしまって、つらかったな。

  • (上巻より)

    もっとも興味深かったのは、解説かな。
    「小説の土台になっているのは、スーパー・リアリズムとも呼んでみたい、徹底的にリアルな現実の描写」だそうだ。
    どうも、スーパー・リアリズムは好きではないらしい。
    工場や男心とか興味がないだけかも知れないが。

    それと、作者はミステリーを書いているつもりはなく、
    小説を、恋愛小説とか純文学とか私小説ではない小説を書いているともあった。
    良かった。
    これが警察小説というならジャンルごと拒否しそうだった。

    私小説でないのはわかっているが、
    心情をうだうだ語っているという意味では、
    同じジャンルに入れてほしい。

  • 難航するホステス殺害事件で、合田雄一郎は一線を越えた捜査を進める。平凡な人生を十七年送ってきた野田達夫だったが、容疑者として警察に追われる美保子を匿いつつ、不眠のまま熱処理工場で働き続ける。そして殺人は起こった。暑すぎた夏に、二人の男が辿り着く場所とはー。

  • 単行本との違いを読みたいために。
    全体的に単行本のゴツゴツした感じのほうが好み、最後のシーン「達夫、好きや!」のセリフがなくなってるなあ。
    とはいえ内容が変わっているわけではないので評価に変わりはない、壊れてゆく様と背負う罪が明らかになる衝撃は凄いです。

  •  正直、ミステリーとしては下の部類(>_<)
     ホステス殺しに関しては、結局唯一の怪しかったやつが犯人で、トリックらしきトリックもどんでんも何もない(>_<)
     もう一つの殺人事件の方は、あれで犯人の動機が理解できる人はいまいし、いたら病院に行ったほうがいい(>_<)

     じゃあ、つまんなかったかと言えばぜんぜんそうでなく、これがめっぽう面白いんだなあ( ´ ▽ ` )ノ
     解説にある通り、ミステリーと言うより「小説」だね( ´ ▽ ` )ノ
     ジャンル分けなんか意味がない( ´ ▽ ` )ノ
     京極夏彦の妖怪シリーズも、背表紙のジャンル表示がいつの間にか「ミステリー」から「小説」に変わったけど、それと一緒だ( ´ ▽ ` )ノ


     ただ、ずっと読んでてドストエフスキー、ましてや「罪と罰」は連想しなかったなあ……(´ェ`)ン-…
     薄汚い人たちがカビ臭い世界でゴタゴタやってるところはたしかにそれっぽいけど、ドスト特有のユーモア感覚が本作にはまったく見受けられないからなあ……(´ェ`)ン-…
     カオルちゃんはどこまでも大まじめ。アリがコツコツ地下に巣を掘るように、ただ黙々と人間心理の奥底に潜り込んでいく( ´ ▽ ` )ノ
     合田も野田も徹底して自らの心理を探り続けていくけれど、なんというか、愛情を注ぐことによってアイデンティティを保つべき対象を持たないから(もしくは対象を間違っているから《上巻のレビューで書いたとおり、潜在的同性愛者である自覚がないので》)、この自己探索は常に見当外れのものになっている(>_<)
     で、正気を失うハメに……(´;ω;`)
     そういった点から、「罪と罰」より「タクシードライバー」とか「シャイニング」「アメリカン・サイコ」に近い作品のように感じた( ´ ▽ ` )ノ

     あらすじだけだとまるっきり面白くない(被害者もなんで自分が殺されたんだか、まったく理解できないだろうな)こんなストーリーを、よくぞこれだけ重量感のある作品にまとめ上げたもの( ´ ▽ ` )ノ
     ここまで徹底したキャラクターの心理描写をすると、書いてる作者までおかしくなるんじゃないか?、と心配になるくらい( ´ ▽ ` )ノ

     どっしり読み応えがあった( ´ ▽ ` )ノ
     歪んだ心理をリアリティたっぷりに描きこんだ本格小説( ´ ▽ ` )ノ
     やっぱり、これは映像化しても意味なしだ( ´ ▽ ` )ノ

    2018/01/03


     とはいえ、「マークス」「照柿」のあと、さらに「レディージョーカー」と続けるのはさすがにキツイので、次はカラッと明るい本を読もう……(´ェ`)ン-…

  • 読み応えはそこそこあったのだけど、1人の男が殺人を犯すまでの経緯が事細かく描かれているが…私には理解出来ない。
    合田刑事が偶然出会った1人の女に執着し、女と愛人を引き離そうと妄想して画策する所も、やはり理解しがたい。

  • 苦痛だった。ドストエフスキーの「罪と罰」を思わせる緻密な描写。最後の解説に日本のドストエフスキーで罪と罰を意識してかかれた作品と書かれており納得した。

  • 合田刑事って、こんな人だったっけ?とずっと思いながら読むw 「マークスの山」を読んだのが昔過ぎて、面白かったのに内容は忘れてるしww 一目惚れって・・・ねぇ、そこまで執着されるとコワいよ、逆に( ̄ω ̄;)
    刑事としても、どうよって感じだけど、人間臭くていいのかもしれないなぁ。。。読めてよかったです、ってことでw

  • 照柿「上」のレビューご参照。

  • 「照柿(上・下)」髙村薫◆殺人事件を追う合田の前で電車への飛び込み事故が発生。現場にいた女と、18年ぶりに再会した幼馴染が合田の心を揺さぶるー。狂ったように暑い夏、熱処理工場、渦巻く感情、作品全体が熱く赤く燃えているようです。冷静なイメージだった合田の感情の動きが生々しい。合田雄一郎シリーズ一作目の「マークスの山」が雪山の話だったので青黒い氷に覆われたイメージでしたが、二作目の「照柿」は赤黒い炎が燃え盛っているイメージ。意識が朦朧としそうな今の季節にぴったりでした。

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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