吉村昭の平家物語 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062760089

作品紹介・あらすじ

いつか読みたかった古典現代語訳決定版!

ほろびゆく者、その運命の哀れさを克明に描き出した古典の傑作を、吉村昭が、わかりやすく臨場感に満ちた見事な訳で鮮やかに再現。約70年にわたる平清盛を中心とする平家一門の興亡が、壮大な物語を貫く大きな骨組みをそのままに甦る。時代を超越した真髄を味わえる、いつか読みたかった古典現代語訳の決定版!

※この作品は、2001年10月に小社より刊行された『吉村昭の平家物語 全一冊』を改題したものです。

感想・レビュー・書評

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  • 吉村昭氏を初めて知りました。
    あの有名な平家物語をこんな読みやすい現代語訳にしちゃうなんてすごい。
     祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり...
    って冒頭部分は中学生の頃だったか暗記させられた記憶しかなく、読んでみたいっていう好奇心だけではどうにもならない高いハードルがありますからね。
    大河ドラマで見た『平清盛』と今放送中の『鎌倉殿の13人』の理解を深めるのにいいと思う。

    こんな読みやすいのに、正直言って清盛の孫たちの名前を把握してるわけじゃないから、途中で飽きてくる。あはは。
    でも読み切りましたよ〜
    終盤の平家没落の物悲しさが痛々しい。

    身内を信じない頼朝の哀れも痛々しい。

  • 吉村昭の作品は色々と読んでいるのだが、本作は「異色作」と言えるのかもしれない。が、なかなかに興味深く読んだ。
    本作は「古典文学を現代語訳というようにすることで、少年少女向けとして世に問う」という企画で登場しているのだという。言わば「現代語訳『平家物語』 吉村昭 訳」というような一冊なのだ。
    吉村昭は熱心に取材を重ね、そういう成果を踏まえた、作中世界で流れる時間や景色が強く感じられるような、濃厚で精緻な描写で知られていると思う。本作は必ずしもその「本来のスタイル」ということでもない。「翻訳」なのだ。同時に、伝えられている『平家物語』を詳細に訳出しようというのでもない。好いテンポで、「普通の小説」として読み易いように整理して綴っているのだ。そういうことで、作品の起りは「少年少女向け」ながらも、自身も含めて「嘗ての少年少女」、「少年少女と呼ばれた時期も在った筈」という人が読んでも、「有名な『平家物語』はこういう感じ」と興味深く愉しむことが叶う。
    『平家物語』は、通読したことがなくて―と言うより、個人的には「通読した」という方に出遭った記憶が無い…―も、題名は多くの人に知られ、作中に登場する史上の人物達の一部、描かれる挿話の一部も意外に知られていると思う。そういう訳で、『平家物語』にも言及が在る人物や挿話に題材を求めたような小説も色々と在るとは思う。が、本作はそういうモノとも違う。
    巻末の解説によれば、吉村昭は随分と悩みながら本作を完成させたようである。各作品で吉村昭が示した流儀を半ば封印して綴り続けたのだから、「産みの苦しみ」は大きかったのかもしれない。が、それだけに「『平家物語』とは?」に判り易い回答例を示してくれる一冊に仕上がっている。
    『平家物語』で取上げられる所謂「源平合戦」に関しては、物語と史実との違いが指摘されている事項も色々と見受けられる様子である。が、所謂“琵琶法師”の「弾き語り」という芸能の題材となって伝播し、継承され、時代が下って読物となって伝わっている『平家物語』の内容は、「俗にこういうように信じられている歴史」という観方が出来るかもしれない。それが判り易く整理された本書のようなモノに触れるのは、それ自体に価値が在るかもしれない。
    本作を読んでいて思った。「源平合戦」の時代は「遠い昔」である。が、実に「不透明な時代」で、当時の色々な人達の葛藤のようなモノが渦巻いている。そういう「時代の不透明さ」というような要素は、多分この『平家物語』の「源平合戦」のもっと以前から、現代に至る迄、「各々の時代なりに…」という具合に存在し続けているのではないだろうか。
    『平家物語』の原本のような、所謂“古文”を読むのは敷居が高過ぎるかもしれない。が、本作はその内容を「普通の小説」という感じで知ることが叶う。なかなかに好いと思う。

  • 「吉村昭の」に魅かれて読み始めたが、テンポよく一気に読み進めることができる。面白い。

    • hs19501112さん
      同感です。
      まだ読み始めたばかりだけれど、自分も同じく「吉村昭著」に惹かれて手に取りました。
      同感です。
      まだ読み始めたばかりだけれど、自分も同じく「吉村昭著」に惹かれて手に取りました。
      2017/10/25
  • 刀剣乱舞好きなので、お勉強に…と思って読みました。
    だいぶ時間かかった。
    平家万歳!の話と思ってたんですが、平家が滅びてく話なんですね。
    あと誰がどっちの勢力なのかよくわからずページ戻って確認してました。
    ところどころ大河ドラマや学生時代どっかで聞いたなーみたいな話がありました。
    大河ドラマの影響で頼朝あまり好きじゃないんですが、やっぱり嫌いでした。
    なんて疑り深い人と思いました。
    ついでに梶原景時が嫌いになりました。
    解説で最初子供向けに書かれてたとあって、これ子供向けなんだわー…と思いました。

  • 諸行無常。記録文学の名士が描く平家物語。歴史の証跡を辿るのではなく古典の記述そのものを再現する。盗作しているようで後ろめたさを感じたという。膨大な登場人物。それぞれの運命。少ない感情描写の中にその思いを想像する。流れる歴史を一話一話でも完結させてる。全盛期の驕り高ぶり。根にもたれた恨みは衰えた時に表出する。頭を丸め感傷に浸りながら生きる。敗れた後はそれすら許されない。栄枯盛衰。賢者は歴史に学ぶ。権力交代は何某かの進歩をもたらす。…栄えてなくても終わらぬ政権。過ちが正されることもない。現代日本の衰退は続く。

  • 読みやすい。きちんとした力強い文章で、人物がいきいきと書かれている。

  • 祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり。
    誰もが一度は耳にする平家物語の冒頭であるがその内容は初めて読んだ。
    独特の死生観を持った吉村氏による現代語訳で読みやすかった。

    清盛の横暴、それを諫めバランスを取っていた子重盛。その重盛の死後、一気に破滅へと突き進む平家一族。源平の戦いとその間で激流に巻き込まれる子や女性たち。頼りない法皇。イメージとは違う気性の荒い義経と嫉妬深いが情に厚い頼朝。

    様々な思惑とサムライたちの尊厳が栄枯盛衰の儚さを際立たせている。

  • 2016.12―読了

  • 軍記物、というにはあまりにも面白い。
    あっさりと読ませて、あまり泣かせようとはしていない訳のように感じた。

    人間を突き動かすものは何か。
    富、権力、名誉、道義、誇り。
    どうしても抗えない運命を強く感じた。

  • 読んだことがなかった平家物語。1冊にまとまっているので読みやすい。その分、ダイジェスト感が強くていまいちのめり込めないところがあるけれど、終盤に向けて平家の人びとが大人はもちろん子どもも罪人としてはりつけになったり河原に首がさらされたりする様子はなかなか凄惨。そういう風習が明治初期まで続いていたかと思うと日本もなかなか野蛮だったなと思う。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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