アラミスと呼ばれた女 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762700

作品紹介・あらすじ

安政3年、坂の町、長崎。
「これからの世の中、おなごが通詞になったって、罰(バチ)はあたらねェ」
攘夷運動、大政奉還、戊辰戦争――1人、この時代を駆け抜けた女性がいた。

安政3年、肥前長崎。出島で働く父から英語や仏語を習う10歳のお柳。「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。激動の時代に消えた1人の「男装」の通詞。

※本書は2006年1月、潮出版社より単行本として刊行されました。

感想・レビュー・書評

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  •  幕末に通詞(=通訳)として生きた、或る女人の目を通して描く歴史小説。
     長崎の地で父に倣い、フランス語に慣れ親しんだ少女・お柳は、父の死後に江戸へ戻り、運命の相手と再会し、夢見ていた通詞となる。
     幼少から憧れていた榎本釜次郎(武揚)に乞われ、フランス語通詞として、男装して従軍し、函館の戦いにも赴く。
     敗戦濃厚な気運の中でも、彼女は役目を全うする。
     釜次郎の子を密かに育てながら、新時代に適応していく哀愁がしっとりと描写されている。
     敗軍の将として生き残りつつも、明治の世に果敢に立ち向かう釜次郎の気骨も素晴らしい。
     詳細は定かでないが、お柳のモデルとなった実在の人物がいたらしい。
     フランス軍事顧問団として来日したジュール・ブリュネのスケッチに、『最初にフランス語を話した日本人』として遺されているのだとか。
     本書では、激動の世に、才能を活かして情熱的に生き抜いた、一人の女性像として見事に再構築されている。

  •  榎本武揚と男装の仏語通訳田所柳。この二人の生き方を通して、宇江佐真理さんが幕末から明治への移行時代を描き上げました。「アラミスと呼ばれた女」、2006.1刊行、2009.4文庫。

  • 幕末から戊辰戦争終結後の長崎、江戸、蝦夷において、女性ながら男装して、お雇い外国人の通訳にあたった「お柳」の物語。箱館戦争から北海道の開拓に深く関わった榎本釜二郎(武揚)との関係を中心に描かれているが、お柳の潔さ、一途な姿勢が、湿っぽくなくてとても好感が持てる。当時女性は通詞(通訳)にはなれない文化であり、男装していたお柳の記録は公式には一切ない。記録と取材に基づいてはいるものの史料は少なく、かなりの部分が作者の想像の産物であるが、登場人物(お柳、榎本、土方など)の人生がこのようであったらなあと思わせる心地よい読後感を味わえる。幕末から戦中戦後の物語を読むといつも思うのは、志とか大義とか言って意思決定するのはいつも男性、それに巻き込まれて悲惨な目にあうのはいつも女子供。

  • 時代は幕末から明治。

    江戸の錺職人の父平兵衛は、外人の国への土産の簪
    などを依頼されて作っていた。名人。
    意匠を依頼主の外国人と通詞を介して話すのに、
    江戸っ子の父親は回りくどいと感じて、
    自分でオランダ語会話を独学で習得。

    そんな錺職人を幕府の役人が放っておくわけがない。
    通詞の最下級の「稽古通詞助」の少し上「小通詞並」
    として出島に派遣される。
    もともと外国語習得が得意な父平兵衛はみるみるうちに、
    英語、フランス語にも意欲を見せる。
    平兵衛の娘「柳」もフランス語を学びたいと父に教わる。

    平兵衛と江戸時代から懇意にしていたのが榎本釜次郎。
    子供の頃から密かに釜次郎に思いを寄せる柳は
    フランス軍の兵法を教えるフランス人たち軍人らの世話を頼まれ、
    男装して仕事をする。

    榎本釜次郎は五稜郭で官軍に反旗を翻した張本人だが、
    幕末から続く戦で坂本龍馬を始め
    多くの人材を失った政府は、釜次郎の人物ぶりを惜しみ、
    助命嘆願運動がおきた。

    アラミスと言うあだ名はフランスでも高く評価され、
    日本でも後から勲章を受ける生え抜きの
    フランス軍人ブリュネがつけた名前で、
    あの三銃士の小柄なアラミスを彷彿とさせるため名付けた。

    このあまりにも、ノンフィクションかと思わせる物語は、
    実はこのような男装の女性フランス通詞は他に本当に存在する。
    ブリュネによるスケッチにも描かれている。
    『田島勝』と言うらしいが、何しろ女性通詞は認められていないため、詳しい記録が残っていない。

    後から調べるまで、全部本当のことと、思い込みたくなる
    実にリアルな物語に仕上がっている。

    登場人物柳の家族以外は、かなり史実に則している。

  • 安政3年、肥前長崎。出島で働く父から英語や仏語を習う10歳のお柳。「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。激動の時代に消えた1人の「男装」の通詞。

    ラジオ(BOOK BAR)で紹介されていて、気になったので読んでみた。

    時代が大きく変わる中で、フランス語の通訳として男たちを支えた女性の話。
    1つの秀でた才能、自分の武器と言えるものがある人は強いと思う。
    歴史に疎いので、細かな情勢の描写はすっ飛ばして読んだが、それでも十分楽しめた。
    長崎に縁があるので、長崎弁も懐かしかった。

  • 宇江佐先生のあとがきによると、戊辰戦争の頃、歴史には残っていないけど、男装した女性のフランス通詞がいたらしく、何が何でもこの話を書かずにはいられなかったらしい。その強い想いがあってか、通詞をしていた父親から英語と仏語を習い、自身も通詞になりたいという夢を持つようになったお柳の人生が見事に息づいていました。幕末の情勢も丁寧に綴ってあり判りやすい反面、2人が思いを寄せていく描写が少なく、榎本武揚の側の心情や家庭の事情が文脈やお柳の想像から読み解くしかないのが物足りなかった。

  • 大好きな作家である宇江佐さんが11月7日に永眠されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

  • 幼い頃から榎本釜次郎に焦がれていた通詞の娘が、戊辰戦争で榎本と再会し、男装の通詞となり共に箱館へ渡る。
    公的な資料はないが男装の女性通詞は実在したらしい。

    旧幕府軍とブリュネたちフランス人の関係を間近で見たアラミスことお柳の視点は面白いが、女の感情まる出しでちょっとウザ…硬派な魅力に欠けると感じた。

  • 幕末の長崎で生まれ育ち、激動の時代を男装の女性通詞として奔走した主人公。
    実在した(と思われる)人物がモデルだそうな。

    地元的には、長崎弁がちょっと・・・・・惜しいというか・・・・・。

  • 通司の娘お柳が大好きな榎本武揚の元で働きたく、男装してフランス通司となり五稜郭の戦いまで供にする話。

    お柳と榎本の間に娘を授かったりするが、幕末の情勢を書くのに精一杯で細かな情愛は描かれていないので淡白な感じ。感情を入れにくい話。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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