陪審法廷 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762823

作品紹介・あらすじ

市民が市民を裁く意味とは――裁判員制度に一石を投じる法廷サスペンス
少年は無罪か終身刑か?

米国フロリダに住む日本人少年、研一。隣人の少女パメラは、養父からレイプされていることを彼に打ち明ける。彼女を救うため研一は養父に向けて拳銃の引鉄(ひきがね)をひいた……。第一級殺人罪で裁かれる少年は、終身刑か無罪か。陪審員である12人の普通の市民が出した評決は? 国際派作家が描く迫真の法廷サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 楡さんの小説。
    今回は、日本の裁判員制度をにらんで、
    アメリカの陪審員制度を舞台にしたお話。

    アメリカ在住の日本人少年は、
    隣人の少女が父親にレイプされていることを知り、
    少女の父親を銃殺する。
    そんな彼が陪審員制度で、無罪or有罪を争う法廷サスペンス。

    世の中には白黒つけれないことがたくさんある中、
    それに対して白黒つけないといけない立場になったら
    自分はどうジャッジするのか?
    この本を読みながら考えさせられた。

    下手な教科書よりも考える勉強になりました。

  • 面白かった
    アメリカの陪審員裁判での法廷サスペンスストーリー
    アメリカの陪審員制度の勉強になります。

    ストーリとしては、
    中学校卒業間際の日本人少年、研一が、隣人のガールフレンド、パメラの養父を殺害
    第一級殺人罪で裁かれる研一は終身刑か無罪か
    陪審員の出した結論は?
    といった展開です。

    パメラは、長年養父からレイプを受けており、それを研一に打ち明けます。結果、パメラを救うため、短絡的に養父を殺害します。

    パメラを救うべく起こした殺人事件、その背景に対する研一の気持ち。
    これに対して、検察側、弁護側、陪審員といったそれぞれの立場から心情が描かれています。

    弁護側の論理の組み立てには正直無理があると思いますが、それをもっても考えさせられる展開。
    それがこの物語の核と思います。

    自分が陪審員として選ばれた時、この事件をどのような結果を出すのか、考えてしまいます。

    陪審員の由紀枝の陪審制度にたいする言葉にこころうたれます。
    「なぜ、法律知識のない一般市民を陪審員として法廷に呼び、有罪無罪の判断を求めるのか。私は、そこに人間が持ち合わせる「情」が加味されることを期待されているのではないかと思うんです」

    その結果、別の陪審員のことば
    「..事実と法に基づいてと言っている一方で、人間として、一市民として許せる罪なのか、そうでないのかを実は法廷は求めているのかもしれないね」

    そして、最後の由紀枝の手紙

    あっというまに読み切ってしまった!

  • 牧田研一はジュニアハイスクールの卒業式の翌日、ダンスパーティーの夜に隣人のクレイトンを射殺する。
    グアテマラから必死にアメリカを目指し、養女となってようやく安寧の日々を手に入れたパネラを守るために。
    養父であるクレイトンは、妻に隠れてパメラに3年間も性的虐待を続けてきた。
    養父を殺害しようと決意しているパメラに代わり、研一はクレイトンに向けて銃を放ったのだ。
    法廷での検察側と弁護側の攻防。
    緊張感にあふれ、一進一退のまま最終弁論を迎える。
    すべては12人の陪審員の判断に委ねられ、いよいよ評決の話し合いが開始された。
    面倒なことは少しでも早く済ませて日常の生活に戻りたい者。
    15歳の少年の人生を左右する責任があることをまったく自覚しない者。
    所詮他人事でしかない者。
    殺害したことは事実なのだから有罪が妥当だと単純に考える者。
    陪審員たちの話し合いはなかなかまとまらない。
    評決への道筋をつけたのはひとりの陪審員の発言だった。
    彼女は訴える。
    陪審制度は何故あるのかと。
    法にのっとり、事実だけを検証し、有罪か無罪かを決めるだけであれば陪審員は必要ない。
    事件に関わるすべてのデータを判例に照らし合わせてコンピューターが決めればいいと。
    法の専門家でもない市民が陪審員として評決の場に呼ばれるのは、機械では測ることの出来ない「情」をくみ取れということではないのかと。
    他人に起きた不幸を自分に置き換えてみる。
    もしも自分だったら。
    もしも自分の娘だったら。
    もしも自分の妻だったら。
    評議の場で交わされる会話のすべてが、リアリティのあるものに感じられた。
    殺害という最悪の選択をした研一とパメラ。
    贖罪の気持ちを忘れずに、強く生きて、出来れば良い未来を作り出してくれると信じたい気持ちになった。

    実際にアメリカで起こった「性的虐待を受けているガールフレンドのために、彼女の父親を殺害した少年」の事件がベースになっているらしい。
    その事件では、加害者の少年は終身刑の判決が下されている。

  • 米国在住の日本人少年が犯した殺人の罪状の有無を陪審制で問う、というものですが
    重たいテーマでありながらも、集中して一気に読んでしまうほど、考えさせられる作品です。

    陪審制で判決が下される米国の地で、
    日本人が殺人を犯し、米国の法に基づき裁かれ、
    一方で(米国籍ではあるが)日系人が陪審員に選出されるので、
    色々考えるきっかけが沢山散りばめられています。

    白黒しか存在しない(ここで言う有罪か無罪か)という米国と
    グレーゾーンが存在する日本との文化や国民性の違い、
    認識・見解の違い、そして個人の考え方の違い、と
    様々な背景が読み手に与えられるので、すごくエネルギーを使います。


    この作品の世界に入り込んでいけるのは、
    殺人を犯した少年、
    この事件の引き金になったこと、
    裁判における陪審員、
    この3つの視点のストーリーが序盤に描かれているからかな。

    事件の発端も、各人物の心情も、殺人に至るまでの経緯も分かった上で、
    「果たしてこの裁判の判決はどうなるのか。」とドキドキし、
    読み終わっても、安心だとか、がっかりだとか、
    そういう感情に浸ることなく悶々と考えてしまいます。


    陪審員に問われているのは、被告が犯したことに対しての罪状の有無を決定する事、
    というのは認識してはいるものの、
    ならば何故、法の専門である裁判官のみで判断を下さず、
    一般市民が陪審員として参加する必要があるのか。

    陪審員に求められているものは果たして、
    検察側、弁護側が用意した物的証拠や弁論から汲み取れる
    事件の真偽なのだろうか。難しい。

    日本と米国の有罪・無罪の見解、そして罪状の度量?には
    大きな違いがあるように思えました。

    日本でも裁判員制度が導入されたのが最近のことなので、
    他人事として割り切れない作品。

  • 現在の視点から読んでるからかもしれませんが、ストーリー面白くなかった。まだ12人の怒れる男の方が面白いよね。あり得ない変な最後の手紙も蛇足だし。

  • 陪審員制度の本家?アメリカ
    犯罪?私刑?それとも人助けなのか…?

  • アメリカでの裁判の模様を描いた小説です。フィクションですが。ストーリーはわかりやすいし、なかなか面白い。そして日本の裁判員制度について考えさせられる。アメリカは陪審制で裁判員制度とはちょっと違うが、それでも日本の裁判制度に関して考えられさせる。

  • #fb こういう結末しかないのだろうが、言葉を交わせずサラバなところに妙に感情移入して、ごめんなさい。

  • 2017 1 28

  • 楡作品。
    プラチナタウン、フェイクを読んだが、なんかつまらない作家だ!ビシッと決まらない。と思っていた。
    今回の陪審法廷。やっぱりつまらない。
    最初から、結末も見えている。朝倉恭介シリーズに手を出そうかどうか?迷っている

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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