新装版 とらんぷ譚 (2) 悪夢の骨牌 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765855

感想・レビュー・書評

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  • 『とらんぷ譚』シリーズ第2巻の連作長編。
    泉鏡花賞受賞作。
    『虚無への供物』や『幻想博物館』のような稠密な完成度ではなく、むしろ中井英夫らしい、幻想の「柔らかい連なり」による長編。

  • 4部作の二作目にして鏡花賞受賞作。幻想文学というととっつきにくいイメージですが、平易でかつ美しい文章と建石修志の謎めいたイラストが幻想世界へといざないます。

    謎の美しい母子の洋館に集められた青年達。
    失踪した青年の謎から話は思わぬ方向に転がっていきます。
    耽美とも言えるしSFとも言えるかもしれません。

    解決できない謎を楽しむ一冊。

  • 戦後にまつわる連作幻想短編小説。
    サロメのイメージ、
    タイムトリップ、
    愛し合う二人の美青年、
    いれちがう人々。

  • 再読。
    とらんぷ譚の第2集にあたるこの本では、「幻想博物館」の反世界的な耽美的作風を引き継ぐように始まります。全体を通したテーマは「時間」。しかし、徐々に当初の予定から変節し、中井英夫本人の戦後に対する複雑な心境が徐々に前面に出てくるようになっています。

    言って見れば幻想小説からはじまった連作短編集がいつの間にか私小説に近づいているかのような印象で、ある意味では短編集としては破綻しています。
    しかし、この本の面白さはまさに著者の思考に引きずられて物語が方向性を失っていくその危うさであって、破綻しているがゆえに価値がある小説とも言えると思います。

  • 昭和48年。「夢魔の館」にいるという失踪した青年からの便りを緒に、令嬢柚香(ゆのか)の犯罪記録と瑠璃夫人の時間旅行体験が明らかになる。2人によって24年前の戦後へ送りこまれ精神病院に閉じ込められた木原直人は、地上の半身を呼びよせ戦後から脱出する。

    残酷な仕方でしか男を愛せない柚香の存在感が際立ち、主人公木原を含め、男たちは影のように現実と非現実をさまよう。彼女がどのように罰せられるかに期待したが、肩すかしをくらった。
    木原の時間旅行後、現実と非現実は反転を繰り返し、いくつものパラレルワールドに分身が存在するような、更にはここにいる自分が借物でしかないような存在の不安に読者も巻き込まれる。夢野久作『ドグラ・マグラ』の堂々巡りの感覚を思い出す。
    ただ、とらんぷ譚の真骨頂は現実にひそかに息づく非現実の奇怪さだと思うのだが、そのトリックに時間旅行という実現不可能な手段をつかうのは禁じ手という気もする。

    とらんぷ譚1~3のなかでは、3『人外境通信』が好み。本作の薔薇と精神病院というモティーフは『人外境通信』へとつながってゆく。

    <好き>
    ・「大星蝕の夜」…繊細な少年詩人
    ・「ヨカナーンの夜」…生首幻想の残虐な美しさ

    <著者の好きな作家>
    江戸川乱歩、小栗虫太郎、夢野久作、メリメ、ドストエフスキー、バルザック、ポー、リラダン、谷崎潤一郎、川端康成、◎梶井基次郎、◎小川未明、村上知義、小林多喜二

  • 時代が

    一話の結がかなり気に入った

    探偵、犠牲者不在の事件の中で犯人でもないのに、しなければいけないようになって思わず両手を差し出すところが

  • 幻想的、という一言だけでは済まされないほど
    いろいろな多層世界を行き来する物語。
    短編の物語をめぐって物語りは終了するのですが
    特に「大星蝕の夜」 と「薔薇の獄」が好きですね。

    ネタバレになりますが
    終盤から、戦後の生々しい光景が出てきて
    そこが幻想譚から、一気にリアルへ終息する感じがしました。

    作者さん本人の戦争に対するトラウマが書かせるに
    至ったのだろうな、と思いましたがソレを入れたのは
    本当に正解だったのか 難しいところです。

    幻想的かはともかく、中井さんの書く本は
    個人的にはこの作品が一番好きですが。

  • 前作のとらんぷ譚からはまた変わった趣。各編もあまり独立したものではない。一ヶ月ごとサロンに届けられる手紙の話から魔性の少女の話を経て緩やかに時間旅行へと飛ばされる。前半では一青年の疎外感が色濃く表れた「暖い墓」、『お姉様』の誘惑を綴る「大星蝕の夜」が白眉。後半の作中人物を通して著者自身がぼんやり戦後を振り返るような展開は評価が分かれそう。それにしても(特殊な意味での)発展、という言葉をこの人の本で読むとは思いも寄らなかった。

  • 超越する反世界の美。
    1よりも好き!!

  • (2010.3)

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著者プロフィール

中井英夫(なかい ひでお)
1922~1993年。小説家。また短歌雑誌の編集者として寺山修司、塚本邦雄らを見出した。代表作は日本推理小説の三大奇書の一つとも称される『虚無への供物』、ほかに『とらんぷ譚』『黒衣の短歌史』など。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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