ユーラシアの双子 下 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775786

作品紹介・あらすじ

会社を辞めシベリア鉄道で旅をする男・石井は偶然、自殺を決意し同じルートを先行して旅する若い女性・エリカの存在を知る。男はその女性の死を思いとどまらせようと、女性の足跡を追う・・・。舞台は東ヨーロッパを越え、パリ、バルセロナ、リスボンへ。悠久の大地・ユーラシアを列車で走り、生と死の根源を問いかける、著者畢竟の大河ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 好きな著書の1人、本屋で読んだことがない本が売られていたので、購入。

    自殺した娘がいた50代男性が主人公。仕事を辞めシベリア鉄道にてヨーロッパへの旅行中、娘のような暗さを持つ女の子の存在に気付き、軌跡を辿る話。

    話が都合の良い感じに進み過ぎるところは、著者の衰えを感じる。ヨーロッパの国々の描写は楽しく、この本を持って、主人公の行った町を巡りたいという気持ちにはなる。

  • 自分にはいまいち共感できなかったかな。前沢さんはかなり好きです。

  • 個人的には、ラストが再生へと向かう序章を匂わせて終わる感じで、ちょっと宮本輝的な感じがした。だから好きなのかも。さて、上巻を読んだ時にふと浮かんだ、宮本輝の「ここに地終わり、海始まる」が気になるので、そちらも読んでみよう。

  • ホッとしました。
    エリカの自殺を防ぐために、追いかける主人公の足取りを追いつつ、自分が追い詰められていく気分でした。
    全くの他人が、人の生き方に自分の娘を重ねあわせて、口出しするのはエゴと思いつつも、救ってほしい思いがどんどん強くなりました。
    最後の香織の命を生きるというマトリョーシカに込められたメッセージによって、結局救われたのは主人公だったのだと思いました。

  • 下巻も通勤時間にゆっくり読んだ。
    ポーランドの旧市街地復興の話、素直に感動。
    コルマールの街並み、葡萄畑の写真、奥さんとの思い出。
    「何もかも通り過ぎちゃったわね。」最後あたりに出てくる奥さんのセリフが印象的。自分や周りに対する赦しのような。
    サグラダ・ファミリアの出来事は何だか共感できなかったんだけど、エリカも同じ体験をしたってことでちょっと納得。
    結末は多少消化不良なものの、石井にしてみれば暮らす環境も精神的にもいい方向に転がったって事だよね。
    ながーい時間ときっかけが必要。

  • ユーラシア大陸を横断する話。

    全体的にほの暗いけど
    暗い話は嫌いじゃない。

    シベリア鉄道がそんながっかりとは思わなかったけど
    ドイツやらポルトガルやら良さげな国には行ってみたいな。

  • うーん、終わり方が難しかったですね。長編だけに、最後のポルトガルでのやり取りにもう一波乱あるのではと思いつつ。帰国後のエピソードの収まり感に少し物足りなさを感じました。

  •  シベリアを越え舞台はヨーロッパ。死ぬために旅をするエリカをついに捕まえる。エリカと会い同じ部屋を共にしたりするのに、なぜあくまで「後から追う」ような旅をするのか。一緒に行こう、とはなぜならないのかが不自然に感じてしまう。それに行ったことがあればわかるが、エンリケ航海王子のモニュメントから身を投げようとしているけれど、モニュメントの先は海ではなく川だしそれこそ都会の中の観光地。日本でいえば京都の鴨川に身を投げようとする感覚。旅の最終地点としては、最西端のロカ岬か深夜特急のサンビセンテ岬がよかったのではないか。
     終わり方ももっと何かあったのではないかと思ってしまう…。

  • 鬱病だった長女が自殺、それが遠因となり妻と離婚、その後会社を早期退職した主人公が、咄嗟の思いつきでウラジオストクからリスボンまで、鉄道を乗り継いでユーラシア大陸を横断。
    ユーラシア大陸の最西端で自殺をするために、主人公よりも5日間早く同じ経路を進むエリカの存在をウラジオストクで知り、エリカの自殺を止めるためにその後を追う物語です、やっぱり一文では書けない。。


    >学生時代からそう大きな問題意識も持たず、ただ流されるように就職し結婚し家庭を設け、二人の娘を育て、ほとんど何も考えることなく会社や派遣先と自宅を通う生活を三十年近くも続けてきた。

    >その生活は人間らしい感覚のどこかの神経を圧迫しブロックし続けていたに違いない。

    >自分の人間としての感情豊かなどこかの部分が完全に痺れて、やがて疼痛も感じなくなってしまっていった。

    何も感じない考えないようにしてきたサラリーマン生活、それでも長女を死なせてしまったことへの絶望と後悔。

    長い長い鉄道旅に相応しく、これらを振り返り、折り合いや意味をつけていく過程がゆっくりとゆっくりと描かれています。

    本文は非常に長く、とにかくゆっくり進んでいきます。
    大崎さんのファンや、大崎さんの表現を受け入れられる人じゃないとつらいかもしれません。

    とは言え、自身の再生や再出発のために長女の自殺を見つめ直し、エリカに相対する主人公の姿は心に迫るものがあります。


    なお驚くほど唐突に性描写が出てきます、その唐突さが全体を通して唯一解せないポイントです。
    でも私はリアリティ一辺倒ではない大崎さんの表現が大好きです。

    >まるでそこから何かが溶け出てしまうのではないかと思えるほどのキスをした。

    >それはキスというよりも粘液と粘液の融合といってもよかった。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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