- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062816717
作品紹介・あらすじ
国に守られ、政治家と癒着し、甘い汁を吸って世界に大きく羽ばたいた“国策”企業。その内実は、親方日の丸体質が染み付いた、危機感欠如のデタラメ経営そのもの。25年前の御巣鷹山事故が、内部に溜まった腐敗を一掃する絶好のチャンスだったが、なにひとつ手は打たれなかった。高給をヌクヌクと享受する社員は派閥抗争を繰り返し、保身に走る経営陣は為替取引で失敗し、抱え込んだ巨額赤字をひた隠す。度重なる運航トラブルで乗客のJAL離れが進み、2010年1月、とうとう2兆3000億円もの負債を抱えて倒産した。59年間にわたる堕落ぶりを描いた、組織と人間のドキュメント!
感想・レビュー・書評
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本作では、破産に至る道のりが書かれているけど、今吹き荒れるコロナ渦によって、改めて重大な局面が突きつけられている。だからこそ今のタイミングで、と思ったんだけど、これだけ入れ替わり立ち替わり馴染みのない固有名詞が出てくると、正直ツライ。一部にとっては超重要名詞なのかもしれないけど、個人的にはあくまで、数ある会社の歴代社長。綿々と繰り返される政治との癒着、トップ層の足の引っ張り合い、は何となく分かったけど、ただそれに目を通しているだけなのはしんどい。という訳で、最初の三章、および最終章を読んで、あとは止めました。読み直すことも、きっとないでしょう。
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航空業界に興味がある分非常に面白い。
会長や社長がたくさん登場するため、整理しながら読まないと混乱する。
JAL再生を読まないと後味が悪い。JALのイメージも悪い -
『JALには、さながら伏魔殿のような恐ろしさが潜んでいた。数多くの利害関係人が会社に巣くい、さまざまな算盤感情が渦巻いている。日本の政官財それぞれの立場でJALを利用し、不明朗な利権構造の温存を容認してきた。
下手につつくと、どこから鬼や蛇が飛び出すかわからない。JALは、そんな不気味な企業体質を抱えつづけてきたが、体内の膿が噴き出しそうになるたび、絆創膏で傷口をふさいできた。そうした体内の膿が栄養となり、巨大な経営赤字という怪物を育ててきたのではないだろうか。』
32年前の惨劇を通奏低音に、腐った翼がいかに腐っているのかを描いている。
最近もやたら不具合が多いが、安全第一をよろしくお願いしたいところだ。
ナショナル・フラッグ・キャリアというプライドだけ守り、大切なたくさんのものを蔑ろにしてきた末路がよく分かる。
国民の血税も大量に流れているのに、水に流すように許すことなんて出来ないよなぁ〜。 -
同じテーマを扱った町田徹『JAL再建の真実』講談社現代新書,2012年と合わせて読むと良い。本書は,2010年刊行の単行本を文庫化。定価900円(税別)と文庫本にしては高額だが,400頁に及ぶルポルタージュには読み応えを感じる。最終章の最後に書かれた「真剣に会社を思い,社会的な意義を見出して,経営の舵を握った社長がいただろうか。少なくとも政治家や官僚の悪癖や利権構造の壁を打破しようとした経営者は,見当たらない。なにより,ここまで企業を腐らせてきた責任は誰がとったのか。」(406頁)という文章は,そのまま東日本大震災後の東京電力にも該当しよう。それが,「日本型経営システム」の公共事業版であるならば,このうえなく残念な話である。
公共事業の今後という点では,JR北海道とJR四国も経営面で限界を迎えつつある。航空業界と鉄道業界との相違はあるものの,いずれ債務を税金で肩代わりしなければならなくなった時,JALの経験がどのように活かされるのか,我々はしっかり見極める必要がある。 -
歴代続いてきた無経営、政界との癒着、マスコミとの癒着、金融業界との癒着、従業員の相応しくない待遇、安全への実態、労働組合問題、民主党政権の無責任・・・といった原因の一つ一つに丁寧に切り込んだ、JAL倒産のノンフェクション。
9.11のテロが・・・JAS統合が・・・などまことしやかに語られる原因が、倒産の本質とは全く関係ないことはもちろん、JAL特有というよりは、没落する巨大企業がどのような内情なのかを明らかにしてくれる一冊です。
そして、本質的には規模の問題ではなく(JALは巨大企業だったからこそ、考えうるあらゆる問題を同時に抱えながらも、何年も存続することができただけ)、同様・類似の事象は簡単に身近なところでも起こりうると思いました。
つまり、私にとって、自分達の行動を振り返り・見直すのに貴重なヒントを提供してくれる一冊でした。