針谷の短篇集 (講談社BOX)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062836760

作品紹介・あらすじ

思春期を脱せない大学生 VS 思春期を脱したい高校生
第13回 三田文学新人賞衝撃の受賞作「針谷の小説」を収録。

「駄目なんすよ、好きな女の子ができても結局何も行動できなくて。どう思います、こういうの」

“カラカラ”しながら恋のデフレスパイラル(!)に嵌っていく「針谷の小説」、“あなた”へ向けられた狂気の愛がほとばしる「仇枕」の荒くれ大学生篇と、青春の正体をさわやかに描いた「ファイアボール」、万能生徒会長が八面六臂に暗躍する「生徒会長小見山禅悟」(書き下ろし)の穏健(アパシー)高校生篇とが収録された、駆け出しの暴走作家・針谷の出発点!

感想・レビュー・書評

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  • ”針谷の短編集”針谷卓史著 講談社BOX(注意:2008/06/03発売)

    ・・・短編四篇
    ”針谷の小説”・・・想い人に対して(分量的に)過剰な妄想する内気な大学生。
    ”仇枕”・・・想い人に対して妄想で止まらずに行動、空回りする大学生。
    ちょっと印象の近い二作品。とはいえ、少なからず”こうなったら”と考える事は誰にでもありそう。
    というかある。自省しようっと・・・。

    ”ファイアボール”・・・万年一回戦敗退の野球部。助っ人として試合に出ている主人公は、コールド負け必至の状況の中、エースとの一か月間を思い出していた。
    エースの男の子がDVに悩む想い人の相談に乗るのだが、結果には爆笑してしまった。
    まぁ、エースからしてみたら可哀想なんですけどね・・・。

    ”生徒会長小見山禅悟”・・・生徒会長小見山禅悟は来週に控えたディベートに悩んでいた。テーマは”中絶の是非”なのだが、彼のクラスには中絶経験のある女子がいるのであった・・・。
    クラスメイトや後輩女子とのドタバタ劇。後輩女子の掴みどころのなさが可愛かった。

    ・・・ちょっと経験のありそうな話をテンポよくおおげさに苦味を含んで描いた作品群。
    ”あー、これに近いのはあったなー。”などと思ってしまいました。

  • (2010.10)

  • ▼「「彼氏がいる」という情報を得ると、あ、ならいいや。ということになる。萎えるのだ。コストパフォーマンスのことをついつい考えてしまうのだ」p.12 いやあ、カラカラと笑った。序盤からトバして来るね!
    ▼なんだ。短編面白いじゃないか……長いやつは「なんだこりゃ……」だったけれども。向き不向きってあるよね。
    ▼表題作『針谷の小説』。第一印象は「変な話」。たぶん誰が読んでも大体そう思うだろう。森見と同じように腐れ大学生を描いているんだけど、森見の大学生からロマンを抜いてシュールで飾るとこうなるのかもしれない。「繊細過ぎて考え過ぎて」のお手本のような妄想系自爆型主人公が、「恋を間違えて」いろんなことをしでかす話。それをメタな視線で笑えるか笑えないかで、面白さが大きく変わってくる。長編だと、主人公への愛着が湧かなくて笑いもオチもへったくれもねーという気分だったのだけど、短編だと笑える、いや嘲える、のが近いか。胃にダメージを与える笑い。
    ▼『仇枕』。滑稽。だけど悲愴な恋の鞘当ての話。男にとって最も魅力的な女は「惜しい女」なんだなと思った。結末が哀し過ぎる。でも私にとっては純愛だし、つまりアリだった。
    ▼『ファイアボール』。パンドラ連載時に「いい」と思ったのだけど、やっぱりこれが一番良い。高校三年の引退試合、やるせないけど、まだ青春、という感じが、爽やかでない悲壮感と徒労感を同時に醸し出す。その癖、最終的には泣けるところが、堪らなくよい。臭みのある風情に魅力が感じられる。女に振られ、青春を無為にし、怒りをパワーに変えた一球が(無駄に)美しい。
    ▼『生徒会長 小見山禅悟』。土星と乙女座の雰囲気がビシビシした。顕著に。ふと思ったんだけど、この人はオムニバス形式でものを書いたら面白いんじゃないか。舞台の大学だけ決めて、あとは自由に。それで長編。つまり、米澤穂信の『氷菓』みたいなイメージ。
    ▼総評。読み終わったあとのこの頭の重さ。やっぱり「変な小説」という感想。ただし、これはこれでよし。(09/11/1 読了)

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著者プロフィール

針谷卓史(はりや・たくし)
慶應義塾大学文学部国文学科卒業。現役の高校教諭。
2006年に「針谷の小説」で第13回三田文学新人賞を受賞、同作で講談社BOXよりデビュー。
純文学作品を発表する傍ら、エンタメ作品も発表。児童向けの掌編ホラー作品にも参加、高評を博す。

「2021年 『前夜祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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