世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881463

作品紹介・あらすじ

偽書・世界征服計画の書『プロトコル』、フランス革命とメーソンの関係、新世界秩序陰謀論の論理、日本でたびたび巻き起こる震災デマ…偽史を紡ぐのは誰か。

感想・レビュー・書評

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  • オウムは陰謀により不当弾圧を受けていると主張した。
    ユダヤ人陰謀論は20世紀初頭のシオン賢者の議定書の流通が契機である。世界支配的内容だが、ロシア秘密警察による偽書とされている。そもそもユダヤ人は人種による区別ではなく、定義困難である。イスラエルはユダヤ人の母から生まれるか、ユダヤ教に改宗したものとしている。よく知られている割に実態がよく分からないところが陰謀論の対象となる所以である。
    東日本大地震は地震兵器による攻撃というデマがあった。地震兵器論は古くからある。田中義一が昭和天皇に支那征服、世界征服計画を上奏したとされる田中上奏文は、米国の対日プロパガンダに使用されたが、偽書とされている。
    フリーメイソンは18世紀にイギリスで設立された友愛団体である。教皇から異端とされた。自由や平等を是とし仏革命など王権や伝統的宗教の超克に寄与した。米独立革命はメーソンの支援を受けた。一枚岩の組織ではなく秘密にもされていない。
    イルミナティは18世紀の反イエズス会系の啓蒙組織であるが、同世紀頃には消滅した。20世紀になってから小説などで取り上げられ、フリーメイソンをも支配する組織というイメージができた。

  • 辻隆太朗(1978年~)氏は、京都府出身、北大文学部卒業、北大大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学の宗教学者。
    本書は2012年出版で、私は今般たまたま本屋の新書棚で見つけて購入したのだが、それは、昨年の米国大統領選挙の際に、トランプ氏には何故あれほどの盲目的な支持者がいるのかという疑問を持ち、これまでに、森本あんり『反知性主義』、渡辺靖『白人ナショナリズム』、水島治郎『ポピュリズムとは何か』等を読んできて、更に、支持者の中には陰謀論を信じる人々も多数いたことから、陰謀論について考察した(個別事例に留まらない)「陰謀論」論・「陰謀論」学とでも言える本を読みたいと思っていたことによる。
    本書は、前半で、日本における陰謀論の実例(オウム真理教、東日本大震災等)、ユダヤ陰謀論、フリーメーソン陰謀論、イルミナティ陰謀論、新世界秩序陰謀論を解説し、後半で、現代の陰謀論の一大中心地である米国で陰謀論が受け入れられる背景、陰謀論を支える論理、人々が陰謀論を求める理由を考察している。
    (私の関心の中心である)新世界秩序陰謀論以降の論旨は概ね以下である。
    ◆「新世界秩序陰謀論」とは、グローバル化した現代において、世界中のあらゆる出来事に陰謀の存在を見出し、それら全てが「統一世界政府の樹立」という目標のもとに統一された陰謀のネットワークを形成していると見做す陰謀論。その本質は、少数エリートによる全人類の管理・奴隷化であり、目指すのは、オルダス・ハクスリーの『すばらしき新世界』やジョージ・オーウェルの『一九八四年』に描かれた世界である。二度の世界大戦、地域紛争、社会主義革命からソ連崩壊、国際テロ、エイズなどの伝染病、メディアや娯楽産業など全てが、その陰謀のコントロールによるものである。
    ◆アメリカの陰謀論のベースにあるのは、主に政治的・道徳的保守主義とキリスト教原理主義である。前者によれば、連邦政府の規制・課税・社会政策や対外戦争・グローバリゼーション・国際協調は、いずれも、個人や国家の自由と独立に不当に干渉するものであり、後者によれば、社会主義的運動・社会福祉政策・多様な価値観の共存や融和・マイノリティ尊重など、およそリベラルと言われるものは、キリスト教的秩序に反する行為である。そして、それらは全て、唯一普遍的な「正しい」ことに反する「間違った」こととされ、その原因を邪悪な陰謀に求めるのである。
    ◆全ての陰謀論の根底には、自分の考える「世界の本来の姿」と「世界の現状」との乖離から来る「世界は間違っている」という認識があるが、陰謀論者はそれを受容できず、「世界の現状」は何者かにより意図的に操作されたもの(=陰謀)と考える。それは、明確で単純な因果関係に限らない現実世界を、わかり易い虚構に置き換えたいという心理にもよる。陰謀論は、結論ありきで、それに合うように各パーツを解釈するため、如何様にでも組み立てられ、また、「事実は隠されている」ことが前提であるため、正当な反証も受け付けない。

    読了して、こうした素地のある米国において、トランプのような人物が陰謀論者に支持される理由はよくわかったが(もちろん、陰謀論者と異なるカテゴリーの支持層もいるが)、読後感はスッキリしたものではなかった。何故人間はこんなに愚かなのか。。。政治思想的に保守なのかリベラルなのかは、それこそ本人の自由で尊重されるべきものであろうが、自らの思想を正当化するために、陰謀論やフェイクニュースが蔓延し、暴動や炎上が起こる世の中は嘆かわしい限りである。
    著者が最後に語っているように、「自分の判断が正しいかどうかをつねに問う」ことが大事であろう。
    (2021年10月了)

  • ノンフィクション
    社会
    ネタ
    トンデモ

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  • 本書は、世の中の陰謀を解説・擁護する書ではなく、「陰謀論」の解説を試みた書である。「陰謀論」とは、荒唐無稽で妄想的な主張のことである。ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティという世界三大陰謀論、日本やアメリカでの陰謀論、そしてなぜ人々は陰謀論を求めてしまうのか?を解説する。

    荒唐無稽な妄想だとは笑ってはいられない。事実、オウム真理教は、自分たちこそが陰謀にはめられている、自分たちこそが世界を救う正義だ、だからこそ陰謀者たちに攻撃されるという論拠の元、地下鉄サリン事件を起こした。また、第一次世界大戦から第二次世界大戦の黄禍論の陰謀論の一種である。清の崩壊による中国人のアメリカへの大量移民、日露戦争勝利による日本脅威論が黄禍論を生み、第二次世界大戦への遠因となっている。

    陰謀論とは妄想ではあるが、時によってきわめて強烈な被害者意識ともなる。被害者意識が暴走した時、空想の陰謀論は、現実の暴力、テロ、戦争となって現れる。

    現在も、リーマンショックの陰謀論、911陰謀論、東日本大震災は人工地震という陰謀論等、陰謀論には枚挙に暇がない。われわれは、陰謀論とはあくまでも空想であり、フィクションとして楽しむにはいいが、決して鵜呑みにして暴力へとつなげてはいけないのである。

    <目次>
    第一章 日本ーコンスピラシー・セオリー・イン・ジャパン
    第二章 ユダヤー近代陰謀論の誕生
    第三章 フリーメーソンー新しい「知」への反発
    第四章 イルミナティー陰謀論が世界を覆う
    第五章 アメリカー陰謀論の最前線
    第六章 陰謀論の論理ーなぜ私たちは陰謀論を求めるのか?

  • "これまでに語られてきた陰謀の数々をひも解きながら、惑わされることが無いように陰謀がどのように作られてきたのかを検証している。末尾の参考文献の多さからも陰謀論は巷にあふれている。
    陰謀論を語る人は、恣意的だが物事の裏を常に考え、自分の発想・思想に結び付ける人々。
    こうした人々からも学ぶことはある。ある意味洞察力の優れた人は、恣意的な誘導なく、世の中の事実・点と点を結び付けてみたり、ひっくり返してみたりしているのだろう。健全に洞察力のある人物を考える上でも本書は役に立つ。"

  • 2012-2-18

  • 陰謀論は見たいものしか見ないの典型といえる
    あらゆる反証は偽物と決めつけられ、都合のいいことだけを真実とする。
    自分が正しく、世界が間違っていると信じて疑わないというのは最も嫌いな人種で、陰謀論者はそういうものなんだなぁ。
    由来から陰謀論は保守的であるとの指摘
    既存秩序と相いれないものへの反発
    このへんは若者文化VS年寄の構図にも似ている。
    陰謀論は似たような陰謀論を取り込み膨張する
    結果どの陰謀論も構造が同じになる

  • 陰謀論の歴史とそれが生まれた背景を知るための一冊。
    また陰謀論と宗教の関係、プロパガンダとの関係についても知ることができた。陰謀論についてよく知らなかった自分にとってはなかなか面白い内容でした。

    ただしタイトルにある「読み解く」というよりも、「陰謀論を分析して否定できる箇所は否定する」という風で「そもそも、その陰謀論のことをよく知らない」ような自分にはちょっと読むのが面倒だった。なので陰謀論を一通り知っているというよりもどっぷり浸かっている人向けか。
    それはこちらにも問題はあるのだけど、欠点は、とにかくイスラエルについての記述がほとんどない点。ほとんどの章でユダヤ陰謀説に対して反証をしていながら、イスラエルという国家は陰謀論にどのように反証しているのか、そもそも反証しているのか、モサドは何かやってるのか? というのがない。ベン・グリオンの名前は出てきても、「イスラエル国家と陰謀論との関係」が見えない(もちろんイスラム諸国とこれらユダヤ陰謀説の関係も見えない)。なのでかなり不満足。というか『モサド対ユダヤ陰謀論 闘いの全記録』みたいなのが読みたい気がする。

    オウム真理教を例にして陰謀論についての説明を始めている点はわかりやすい。陰謀論者とその支持者というのは、こうした教祖と信徒という関係に近いのだろう。だが、いくら教祖が支配しているとはいえ、支配できているのは教団の中の信徒だけで、世の中は支配できていない。それどころか「法の支配」を受けていて、その法によって与えられた権利を元に選挙に立候補したりする(そうかんがえるとオウムはこの時点で詰んでたのだろう)。
    著者の結論とは異なるのだけど、自分としては、こうした教祖と信徒、つまりは支配と服従という人間関係で物事を捉えていると、こういった陰謀論に行き着きやすくなるかと思う。どう考えても「たいして支配できていない自分」がいて、なので被支配者という「立場」で世の中をみる。そうすると必然的に「そこには支配者がいるはずだ」となる。だがすでに神は死んだ世界であり「大きな物語」も死んだばかりのポストモダンな世界にある。そうなると自分たちで支配者を作る必要があるので、ちょうど良い支配者っぽいのを探して「このイルミナティってのでよくね?」的なノリ。本書の陰謀論の歴史から見ても、この見方はそれなりにいけてる気がする。
    こうしてみると結局のところ陰謀論とは、ルサンチマンとしての自分の正しさを手に入れて安心したい、支配者への怒りは手放したくない、という自然な欲求が現れただけでしかない。こう結論してしまうとチープな気もしないでもないが、「世の中への不平不満が」という結論よりはいいと思う。

  • 単なる「トンデモ批判」だけではなく、陰謀論に与してしまうメンタリティとか、「普通の人」がすべき心がけとかに触れつつ締めているのはなんか新書っぽくてよい。
    もちろん、ただ陰謀論ってどんなのがあるのかなあ、という好奇心を満たすために読んでも、それはそれで面白い。

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著者プロフィール

1978年生まれ。北海道大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(文学)。專門は宗教学。著書に『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』(講談社現代新書)があるほか、共著書に『よくわかる宗教社会学』(ミネルヴァ書房)、『面白いほどよくわかるキリスト教』(日本文芸社)、『情報時代のオウム真理教』(春秋社)がある。

「2023年 『コンスピリチュアリティ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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