ロックの歴史 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882705

作品紹介・あらすじ

<本書の内容>
第一章  イギリス・ロック史とアメリカ
第二章  エルヴィス・プレスリーの限界
第三章  ビートルズが生まれた瞬間
第四章  「黒いブルース」から「白いロック」へ
第五章  「世界の音楽・言語」としてのロック
第六章  なぜリヴァプールだったのか
第七章  ローリング・ストーンズ登場
第八章  ロックと天才ギタリストたち
第九章  「アルバムの時代」の夜明け
第十章  ジミ・ヘンドリックスの衝撃
第十一章 「サージェントペパーズ」と一九六七年
第十二章 架け橋としてのウッドストック
第十三章 ボブ・ディランの揺さぶり
第十四章 「統合」と「分化」の時代へ
第十五章 ロックが帰っていく場所


若者による革新的な音楽、こそが「ロック」のはずだった。
しかし、いまもロックを長年にわたり現役で支え続けるポール・マッカートニー、ミック・ジャガー、ボブ・ディランは皆、七十代となった。
ロックは新たな局面を迎えるとともに、歴史となったのだ。

音楽評論家の中山康樹氏が、従来の枠組みにとらわれない斬新な視点で、
いかにロックが生まれたか、という大きなテーマを明快に解き明かしていく。
イギリスとアメリカが、互いの音楽を「洋楽」として受容し、
(ときに「誤読」しながら)進化させ、統合、分化させていく過程で生まれた現在のロック。
そのプロセスを丁寧に検証しつつ、大胆に意味づけていく文章には、
優れた歴史家が神のような視点から歴史を再定義・再構築し、
新しい世界観を示してくれた時のような知的興奮を覚える。

本書ではまた、いままでのロック史ではあまり表舞台に出ることがなかったミュージシャンたちが果たした重要な役割にも、光を当てる。
たとえば、クリフ・リチャード&シャドウズ、マディ・ウォーターズ、レオン・ラッセルなど、
既存の解釈では脇役となりがちだったミュージシャンの存在意義を知ることによって、
ロック史をより深く理解することができるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 「ロックの歴史」というより「ロックのルーツ」というべき本なのかもしれない。

    本書では「ロックンロール」という言葉のルーツから紹介されている。なんでもトリキシー・スミスというシンガーが歌っていた「マイ・ベイビー・ロックス・ミー・ウィズ・ワン・ステディ・ロール」という曲を当時の人気のDJアラン・フリートという人が命名したのが原点だそうで、「ロックンロール」のルーツは、アメリカのブラック・ミュージックにあるのだそうだ。

    当然この時代を知らず、感覚的にロックに入った我々世代には、ロックンロールとブラックミュージックは結び付かない。

    ロックンロールと聞けば、ツェッペリンの「ロック・アンド・ロール」が連想されてしまうのだが、本書で扱う情報はほとんどツエッペリン以前という感じだ。

    後付けで時折耳にすることのある「ロック・アラウンド・ザ・クロック」や「ハートブレイク・ホテル」などがロックの原点的な曲であることはそれとなく感じていたものの、それらがイギリスに上陸してイギリスに音楽的な影響を与え、独自のロックが生まれていき、それがブリティッシュロックを生み出していったという流れについては今回理解できた。

    特に70年代、80年代のハードロックに馴染み深い世代としては、「ブリティッシュロック」というワードをよく使っていたので、英国こそがロックの震源地であると思っていた。

    ビートルズやローリグストーンズも、リアルタイムではなく、中学生、高校生になってから後追いで興味を持ち始めた世代である。当時、クラスの中には洋楽好きの中にも、ビートルズ派、ストーンズ派があったように思う。兄貴がいるちょっと渋い奴は、ストーンズを語っていたように思う(笑)。

    米国から上陸したロックンロールからスキッフルと呼ばれる英国独自の音楽が生まれ、そこからビートルズというブリティッシュロックの第一種が生まれ、一方おなじく米国から上陸したジャズやブルースの音楽性を追求するなかからモッズサウンドというものが生まれ、そこからストーンズという第二種が生まれたようである。

    ビートルズのジョン・レノンも、ジョージ・ハリスンも、リンゴ・スターも皆スキッフルバンドの出身であったようだ。

    そういう意味では、スキッフルバンドの元祖ロニードネガンをブリティッシュ・ロックのルーツとする説があるようである。

    もう一つの特徴は、ギター・ヒーローの流れである。1950年代にブームを巻き起こしたクリス・リチャード&シャドウズのギタリスト=ハンク・マーヴィンやブルースギタリスト=マディ・ウォーターズの影響力が大きかったようだ。

    ヤードバーズが生んだ三大ギタリスト、エリック・クラプト、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジはそれぞれに彼らの強い影響を受けている。

    ヤードバーズ出身の三大ギタリストが、ブリティッシュロックを渓流から大河へと展開していく大きな役割を果たしたことを考えると、このギターヒーローの流れというのは、ブリティッシュロックを特長づける大きな柱であるように思える。

    そうした意味からか、自身としては、ヤードバーズがブリティシュロックの原点ではないかと思ってきたが、著者はまた少し違った観点で、ヤードバーズを原点と捉えているようであった。

    すなわち、本物のブルースを追求するエリック・クラプトンは、結局ヤードバーズでは「ブルースもどき」と思えるものしか実現できなかったと回想しているが、このブルースもどきこそが、実は英国でうまれた英国独自のロックだったのではないかという分析である。

    ロックのルーツ、特にブリティッシュロックのルーツを理屈づけた書籍ではあるが、ここから派生していく大河の歴史はなかなか簡単に語り切れるボリュームではないだろう。いずれ70年代、80年代へとつながる歴史を著者には語っていただきたいと願う。

  •  一般にはジャズ評論家として知られる著者による、ロック史の概説書。

     著者のロック関係の著作は、『これがビートルズだ』と『ビートルズの謎』という2冊を読んだことがある。
     その2冊を読んだときにも思ったことだが、思い込みの激しい独自の論を展開する人で、本書もビックリしたり首をかしげたりしながら読んだ。

     かなり偏りの強い内容で、ロックを聴き始めた10代などが最初に読むべき概説書にはふさわしくない。
     そもそも、1970年代初頭で話が終わっていて、そこからの40年余にはほとんど触れられていないのだ。これでよく『ロックの歴史』なんてタイトルがつけられたものである。

     俎上に載せるアーティストも偏っている。ビートルズの話の比重が極端に高く、ほかもイギリスのロックが7、アメリカが3くらいの割合。実質的には「ブリティッシュ・ロックの歴史」になっており、しかもブリティッシュ・ロック史としてもかなり偏っている。

     もっとも、「おわりに」によれば元々は「女王陛下のロックンロール」なるタイトルの連載だったそうで(書籍化にあたってアメリカのパートを加筆したという)、英国に話が偏っているのはそのせいでもある。

     「なるほど」と膝を打つ卓見もいくつかあったから、駄本とまでは言わない。が、ロック史の概説書としてはまったく不十分。
     
     同じ講談社現代新書からは、かつて北中正和が『ロック――スーパースターの軌跡』という本を出している。
     85年刊だから古いが、ロック史概説書としては本書よりずっとバランスの取れたよい本である。本書とは対照的に著者の主観は抑え、客観的な記述に徹している。

  • とても勉強になった!
    60年代から始まるイギリスのロックの大きな流れはなんとなく理解していたつもりだったけど、こんなにアメリカのアーティストとの絡みがあったとは。
    やけにジョージ、ディラン、クラプトンが連んでたのはそういうわけだったのか!と。ザ・バンドがフィーチャーされ、サイケカルチャー以降のロックに置いて重要な役割を占めたことがきちんと書いてあって嬉しかった。

    新世代のツェッペリンなどあえてスルーしたことで、旧世代と言われるバンドの歩んだ道筋が分かりやすく伝わったと思う。

    事前知識ゼロだとちょっとキツいかもだけど、古ロックに興味を抱い出る人にはきっと良書になると思います!

  • ロックのイギリスとアメリカの間の変遷と、その時々のアーティストをピックアップしながら説明する本。普通はエルビスプレスリーやビートルズを話の筋にしていくところを、その周辺の名アーティストに焦点を当てていく。

  • 1960年代の主にイギリスのロックに焦点を当てたロックの歴史について書かれたもの。

    ポイントを絞っている分、ロックの歴史全体を概観することはできない。ビートルズに関する話が多いが、筆者はそれだけロックの歴史におけるビートルズの重要性を強調したいのだろう。

    もちろんそれに異論はないが、他のミュージシャンに関する記述がもう少しあってもいいのではないかと思った。

  • 60年代のロックを一通り聴いていないと厳しい。

  • 今のパンクがパンクと呼ばれなくなる日が来るかもしれない、過去のものになるかもしれない

  • 中山康樹的には、ジャズの本より納得力が強いけど、当方があまり詳しくないロックの話だからかな。(ロックよりロカビリーなので)
    これまで、公式見解的に「ビル・ヘイリーが」とか言われてもピンと来なかった(いわゆる「ロック」と繋がるとは思えない)んだけど、英国におけるマディ・ウォーターズの影響って話にはヘェと感心する。
    レオン・ラッセルの名前が出てきたりすることとかね。

  • なかなかよし
    the beatlesがロックを作ったに一石を投じている

  •  ロックという音楽ジャンルの大筋を理解したくて手に取った。しかし本書で言及する時代は60年代に限定されており、ロックの歴史が俯瞰できるような内容ではなかった。それでもビートルズの登場前後からジミ・ヘンドリックスまではロックを語るうえで欠かせないところだろう。ただ著者は従来のロック史とはところどころ異なる見解を示しているが、その根拠が明確でない。だろう、かもしれない、などの推測も目立つ。また本書ではアーティストがイギリス、アメリカに帰属しているイメージが強いが、実際国ごとに分けることはロックミュージックの実態に即しているのだろうか。他にもロックに関する本を読んで比較検討したい。
     巻末の参考文献の少なさも気になった。ロックについて書くならもっと英語の文献がないと、信頼性がないと見做されてもしかたがない。というよりも明示されている文献がすべて邦訳なのでなんというか脱力する。

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著者プロフィール

1952年大阪生まれ。『スイングジャーナル』編集長を経て音楽評論家。ロックにも造詣が深くビートルズ系の本の中でも『ビートルズを笑え!』は辛口でありながら面白く書かれている。オノ・ヨーコに批判的で日本語が読めるオノに対して批判する評論家としては希有な存在。主な著書に『マイルスを聴け』(双葉社)『エヴァンスを聴け』(ロコモーションパブリッシング)『超ブルーノート入門』(集英社)『Jazz名曲入門』『Jazz名盤入門』(宝島社)『ジャズを聴くバカ、聴かぬバカ』(KKベストセラ-ズ)『スイングジャ-ナル青春録』(径書房)『ビートルズ アメリカ盤のすべて』(集英社)『ビートルズ全曲制覇』(エイ出版)『ビートルズを笑え!』(廣済堂)『ディランを聴け』(講談社)『音楽中心生活』(径書房)『超ビートルズ入門』(音楽之友社)『クワタを聴け!』(集英社新書)『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』(NTT出版)等がある。

「2012年 『かんちがい音楽評論[JAZZ編]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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