真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884259

感想・レビュー・書評

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  • 涙出そうになった。
    最近回り回ってMMT(現代貨幣論)と遭遇し、「お金」に関する認識を180度変えさせられた上で、これを読むと本当に涙が出そうになる。
    なんていうか、元々古典的素養教養がない上に、こっちがいい、あっちがいい、これを知らないとバカだ?という情報商材屋的なものにも大いに振り回されて、結果何も残ってない…的な現状に「いったい私は何をやってるんだ…?」というモヤモヤの答えがここにあった。

    刊行当時にも気になっていた1冊だが、MMTを理解していなければやはり金融関連のことが理解できなかっただろうから、今読むのが私にはちょうどよかったのかもと思う。遅いけどねぇ~。

    この「リアリズム」「当たり前」の軸感覚を養う教育というのが、自分の軸の無さ&揺れ加減を顧みてもすごく大事と思う。「正しい痛い目」には早めに出会っておくに限る。また「正しい痛い目」にちゃんと誘導してくれる大人との出会いも大事ね。自分がそういう大人になれていってるといいんだけど。

  • ★7つくらいつけたいくらいに面白かった!
    現在のオープンイノベーションが短期的な成果を上げるのには効果的でも長期的にはイノベーションを失っていくこと、アメリカのハイテクベンチャーは国家が育てたこと等、新しい学びが多い。
    また文中に参考文献も多く紹介されるため、次の学びもしやすくなっている。
    オープンな関係性とクローズドな関係性の良し悪しを把握することが大事だと気付かされた。

  • 経営に関する本で久しぶりに良い!と思った本

    通説に対する事実からの示唆、イノベーションの本質、組織論な視点等々

    目から鱗(自分がコレって本当?って目で物事を見られていない証左汗)でした

  • 起業という幻想
    アメリカのIT企業の成功はアメリカ国民の成功とは同じではない。
    アメリカのベンチャーは、安全保障政策が産み落としたもの。
    アメリカのIT産業と軍事との官民癒着は、日本の比ではない。
    濃密な人的ネットワーク
    最大最強の起業家は国家
    オープンイノベーションを活用することによって、短期的に企業が急成長を遂げたように見せかける事が可能。
    また、自社株買いとストックオプションを併用することで、単に大企業の株主と経営層が儲けるだけの仕組と化している。
    ビジネススクール出身者の弊害
    長期雇用の労働者こそが、イノベーションの源泉
    ROE改善を目的にした自社株買い。
    会社を老舗にするという目標

  • 中身はイノベーション論に近い。データに基づいており、長期的な企業経営の視点を養うには良い。

  • 早速、内容ですが
    第1章 日本でベンチャー企業を増やすには
     あるコンサルタントの提言
     アメリカの国家戦略?
     自分の頭で考える
     ①ベンチャー企業を増やしたいのか、イノベーションを
      促進したいのか
     ②なぜ、シリコンバレーだけなのか
     ③なぜ、外国人の企業を優遇するのか
     ④なぜ、「英語実践力の抜本的強化」(企業の)英語
      公用語化」が必要なのか
    第2章 起業大国アメリカの真実
    第3章 ベンチャー・キャピタルの目利き術
    第4章 最強の起業家は誰か
    第5章 オープン・イノベーションの本質
    第6章 なぜイノベーティブな企業の方が負けるのか
    第7章 なぜ日本経済は、いつまでも停滞から抜け出せない
        のか
    というないようです。
     この本の筋立ては、第1章であるコンサルタントの御説が、日本経済、アメリカの実態の上っ面だけみた論説であるあをひとつひとつ丁寧に化けの皮をはがしていくということになっている。
     著者の、いままでからの考え方は一貫していて、日本人社会が培ってきた経済運営のあり方のすばらしさ、重要性をもういちど原点から紐解き、如何にコンサルタントが言っている内容が、今のアメリカ、日本の実体経済からかけ離れたものでるかを立証しながら、各章が進んでいく。
    日本社会の閉鎖性が米国のスタイルから遅れをとっているという戦後の丸山節の同根の考え方で、そういう思考の延長線に現在の日本経済もあるという認識で、まるっきり進歩がないと断罪する。
    最後に真のイノベーションとは、安定的な長期雇用、安定的な社内風土、外部企業との信頼の中でしか生まれない、ましてやオープン・イノベーションなんぞやは、真逆の結果しか生まないだろう。
    日本の所謂停滞は、いつに金融政策の失敗が原因であり、企業活動が原因ではないのである。
    久々に中野剛志さんの本を読んだが、言っていることに首尾一貫性があり、すっと読めました(笑)。
    また、引用された本をこれからまたボツボツ読んでいきます。

     

  • 漠然と「なんで世の中こんな状況になってしまったんだろう?」と疑問に思っていたことが、クリアになった気がする。

    ①なぜイノベーションが起こらなくなったのか?
    ②なぜ短期で成長し続けることが求められるようになったのか?
    ③なぜM&Aが盛んに行われるのか?
    ④なぜシリコンバレーだけ最先端を行く企業が生まれるのか?

    たくさんの文献から数値や背景を明確にして、鋭く分析されている。
    本当の部分も多いと思うけど、これが最先端の実態だとするとやってられない。

  • 組織学会主流派の考えに基づいて、著者独特の論理展開で、一見、一般的と思える主張に批判を試みる刺激的な良書。

  • 細かい事実では異論があったものの、書いてあること全般的に同意。

  • 「真説・企業論」中野剛志


    1980年代以降の米国はベンチャー開業率が下がり続け、2009年以降では1997年の半分しかない。

    アメリカの若者が起業する比率は下がり続け、2013年には1989年の三分の一に。

    2015年の「Top100グローバルイノベーター」は日本企業は世界最多の40社。2年連続で米国を上回った。

    米国の高卒以上比率は先進国中11位。25-34歳までの高卒以上率が55-64歳までのそれより低い唯一の国。

    15歳を対象にした国際学力テストPISAでは、2012年の米国の順位は、読解力が24位、科学が28位、数学が36位。日本は、読解力が4位、科学が4位、数学が7位。

    アメリカは過去40年、低い生産性を記録し続けている。

    社会で全体ではベンチャー企業こそが非効率部門。

    政府が支援すべきでない企業
    ・ライバル企業から市場を奪って成長しただけで、市場全体を大きくしたわけではない企業。
    ・海外ばかり工場を建て、国内に雇用を生み出さないで成長した企業。
    ・市場シェアや利益は世界トップクラスではあるが、一握りの経営層と高度な専門技術者だけで構成されており、雇用をたくさん創出しない企業。

    1980年代のシリコンバレーはミサイル、衛星、軍事関連及び宇宙関連の電子技術に関わる企業が多数立地していた。彼らは収入の多くを防衛関連の政府契約に依存していた。

    アメリカ初のVCは、その創設の目的は軍事的なものであった。

    アメリカがITベンチャー大国でシリコンバレーにハイテクベンチャーが集積している理由は米国が世界最大の軍事大国だから。

    ハイテクベンチャー企業の7割が最後に資金供給を受けてから2年以内に倒産している。

    ハイテクベンチャー企業の半分以上が100万ドル以下の資金調達で倒産している。倒産したハイテクベンチャー企業が調達した資金額の中間値は130万ドル。

    ベンチャーキャピタルはイノベーション全体ではなく、その後半であるハイテクの事業化に対して投資している。

    技術が革新的なものである場合は、2年で結果を出すのは難しい。

    イノベーションとは、事前にはその結果を知る事ができないような活動を言う。結果の見えない不確実な将来に向かって投資や開発といった行動を起こさなければイノベーションは実現しない。

    イノベーションが直面する不確実性とは、本質的に「事前には結果を計算できないような将来」を意味する。

    全ての成功は直観にかかっている。直観とはその時は分かっていなくても、事後的に正しいと判明することを見通す事のできる能力であり、原理を説明できないにも関わらず、本質的事実を掴み取り、本質的ではないものは捨て去る事のできる能力。


    ベンチャーキャピタルのトップ5社が2011年〜2013年前半に出資したシリコンバレー88社のうち、70社の創業者は、「大手IT企業での幹部職経験者や、影響力を持つ人物と関係のある会社に勤めていた人か、すでに起業の経験がある人か、スタンフォード大、ハーバード大、MITのいずれかで学んだ人」であった。

    荻生徂徠は、人をただ見ただけでその器量を見抜く事は誰にもできない、名将は一目で人材を見抜くなどと言うのは愚か者が信じている事であると言い、人材を評価するには実際に使ってみる事であり、あれこれ指示せずに好きになようにやらせてみるのがよいと言う。

    イノベーションの推進者が、所属する組織内で共有された価値観を理由とする事ができれば、期待される利益の計算において多少劣っていたとしても社内を説得する事ができる。

    「イノベーションの理由」が調査対象にしたイノベーションの事例は23件。商品、技術シーズの開発に着想してから事業化に成功するまでに要した期間は平均9.2年。5年以上かかった事例は17件、その中で10年以上かかった事例は9件、さらに15年以上かかった事例が5件であった。2年以内に成功したのは2件のみ。すぐに始めて3ヶ月で潰す意思決定をしていては事業化に成功するものは一つも出ない。

    大企業では人的ネットワークをさらに広く、深く、長期間に渡るものにする事。

    世界を一変させるような画期的なイノベーションのリスクを担う事ができる最大最強の組織は国家である。

    同じ人員、同じ戦略上でビジネスを進めている限り、連続的な改良改善はできてもイノベーションは生まれない。

    イノベーションは、単にばらばらのデータや情報をつなぎ合わせるだけではない。それは人間一人ひとりに深く関わる個人と組織の自己変革である。社員の会社とその目的への一体化とコミットメントが必要不可欠。この意味で、イノベーションとしての新たな知識の創造はアイデアと同じくらいアイデアル(理想)を創る事。

    イノベーションの本質とは、ある理想やビジョンに従って世界を創り変える事。

    新しい知を創る事は、社員一人一人と会社を絶え間ない個人的・組織的自己革新によって創り変える事。

    日本に限らず、長期の競争力のある企業は長期雇用を重視する。

    長期の競争力とは、持続的に改良改善あるいは革新を生み出し続ける能力の高さの事。

    共同体的な企業とは、限定的で長期的な雇用関係や取引関係を持つ企業のこと。

    イノベーションを生み出したければ、企業を本当の意味で共同体的な集団へと変えること。

    イノベーションの理由は、単純な営利目的ではなく、むしろ利益計算では示すことのできない非経済的な価値観であった。営利中心の発想は、この価値観を殺す。

    米国経済における、金融部門が保有する資産は1980年にはGDP比で55%だったのが、2000年には95%にまで膨らんでいる。金融機関の支配力が強くなった事で株価の最大化や短期的利益の追求への圧力が格段に強くなった。

    20カ国30年のデータを分析すると、金融部門が成長すると、生産性は低下するという結果が出ている。株主主権論と効率市場仮説から導き出される金融化がイノベーションを促進するものになる事はありえない。

    自社株買いこそが米国企業の短期主義を助長し、アメリカのイノベーションを削いできた元凶。コーポレートガバナンス改革の結果、2016年の1-9月までの上場企業による自社株買いの実施額は、4.35兆円と過去最高であり、これが本来ではイノベーションに向かうべき資金。

    アメリカ出羽守(でわのかみ)、、、アメリカでは〜、シリコンバレーでは〜と、すぐに海外の手法を真似たがる途上国メンタリティ。

    アメリカ出羽守が提唱する経営手法や制度は、日本には馴染まないだけでなく、アメリカでも上手くいっていない。

    日本経済は米国を模倣した構造改革が足りないからではなく、構造改革をしたからダメになった。


    アメリカはベンチャー企業天国ではない
    ・開業率はこの30年で半減している。
    ・1990年代は、IT革命にも関わらず30歳以下の起業家の比率は低下ないし停滞し、特に2010年以降は激減している。
    ・先進国より途上国の方が起業家率が高い。ペルー、ウガンダ、エクアドル、ヴェネズエラは米国の二倍以上。日本の開業率も高度成長期には現在よりもはるかに高かった。
    ・アメリカの典型的なベンチャーはイノベーティブなハイテクではなく、パフォーマンスも悪い。

    日本は1990年代以降、アメリカを模範としたコーポレートガバナンス改革を続けた結果、米国経済と同様に長期停滞に陥っている。
    ・日本のコーポレートガバナンス改革は、アメリカのビジネススクールで洗脳された官僚達が主導している。
    ・日本のコーポレートガバナンス改革は、金融化やグローバル化を推進し、日本企業を短期主義的にする結果を招いている。
    ・コーポレートガバナンス改革によって、日本はイノベーションが起きない国へと転落する。

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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