- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062919418
作品紹介・あらすじ
いつ、誰によって、どんな目的で作られたのか。その源流は何か。どのような人たちに伝承、利用されてきたのか-。日本の言語文化史の中核であった「いろはうた」に秘められた日本語の歴史と、そこに見えてくる現代語表記の問題に迫る。日本語をめぐる知的な営為のあり方を探り、従来の国文法を超克した日本語の姿を描く、日本語史研究の古典的名著。
感想・レビュー・書評
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1155円購入2011-06-27
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新書文庫
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いろは歌の起源を探りつつ、「お・を」や「え・へ・ゑ」の書き分け・発音の変遷を知ることができ、興味深い。また、和歌など昔の文章はとかく平仮名で書かれていて分かち書きされておらず読みづらい印象があるが、実は筆で書いていることを忘れてはいけないという点になるほどと思った。墨継ぎの箇所が分かち書きになっていることや、隣の行と読み違えないように平仮名の箇所を漢字で表現するなど、読みやすさに配慮されていたという。印刷されてしまうと全く分からない原書・人が書くということならではの工夫だ。今度、博物館でみるときには、これらの工夫点も気にしてみよう。
平安時代の日本語は現代とよく似ている部分が有るという点も面白かった。例えば、紀貫之の土佐日記が取り上げられていた。とても有名な冒頭部分「乎とこ(男)もすなるにき(日記)といふものを、をむな(女)もしてみむとてするなり」。藤原為家は次のように写している。「乎とこもす”といふ”日記といふ物をゝむなも”して心みむ”とてするなり」。当時は土佐日記が古典ではなく、活きた書物だったために読みやすさに考慮して直して写されたのではないかという点になるほどと思った。 -
いろは(以呂波)、時代を遡って、たいに(大為尓)、あめつち(阿女都千)という誦文の歴史。そして、明治36年に「万朝報」が募った国音の歌の第1等は埼玉県児玉郡の坂本百次郎氏の次の歌になったとのこと。いろは以上に良く出来た秀作です。
とりなくこゑす ゆめさませ 鳥鳴く声す 夢さませ
みよあけわたる ひんがしを 見よ明けわたる 東を
そらいろはえて おきつヘに 空色映えて 沖つ辺に
ほふねむれゐぬ もやのうち 帆舟群れ居ぬ 靄のうち
「ん」がある48文字になっていることも勝れているだけでなく、少なくとも意味不明なことばはありません。いろはの成立が「咎なくて死す」の秘密と結びついて語られることが多いですが、著者は全くの偶然と片付けておられるのは、私個人としてはミステリー性がなくなるわけで、やや淋しい気はしました。このような誦文の分析により、日本語の歴史が分るというのは面白いものです。いまならばさしずめ、「ゐ・ゑ」の2文字を抜いた45文字の誦文になるのでしょうか。