- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062920841
作品紹介・あらすじ
『権記』は、平安中期、九条流藤原氏の嫡流で三蹟の一人と称される藤原行成の日記である。青年期は不遇であったが、長徳元年(九九五)、蔵人頭に抜擢されて以降は、一条天皇や東三条院、藤原道長の信任を得、側近の能吏として順調に累進してゆく。日々の宮廷の政治・儀式・秘事が細かく記され、貴族の多忙な日常が見える第一級史料、初の現代語訳。
感想・レビュー・書評
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「読み終わった」に分類するのは気が引ける。
現代語訳で、しかも解説も丁寧なので本当にありがたい。
同時代の日記でもある『御堂関白記』と見比べてみるのも面白いなあと思う。
貴族って忙しいなあ、とこの日記を読むと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
御堂関白記、権記を全訳して、文庫で出す、それ自体称賛に値する。
「全」訳を優先しているので、注釈が足りず、(現代語で書かれても)何を表しているのかよくわからないところもあるが。必要最小限の用語解説、人物注は巻末にまとめられ、なかなか効率的。
上巻は、正暦2(991)9月~長保2(1000)10月までを収める。
いわゆる長徳の変の頃は、逸文しか残っておらず、これがちゃんと残っていれば…と歯がゆい気がした。
上巻は行成がまさに蔵人頭として最前線で活躍していた時代なので、細かい記録が非常に面白い。「目くばせ」で儀礼が進行しているところなど…
政治史では捨象されてしまう官人たちに、古代から続いている苗字の人が大勢いて新鮮。
大臣も役人もしょっちゅうさぼっているらしき中、行成をはじめとする一部の勤勉な役人が駆けずり回っている。
右大臣顕光は、ホントに無能だった模様。
一条帝や道長が甚だ多くのことを行成に吐露して、しかし憚られる内容なので記さない、としているところがかなりあり、(仕方ないとはいえ)そこを記録しておいてくれれば! と思わずにいられない。自分だけの裏日記とかあればよかったのにね!
従弟の源成信や藤原成房と仲良くしている描写がしばしばあり、間もなく彼らが若くして出家してしまうことを思うと感慨深い。 -
三蹟の一人、藤原行成の日記です。
気づき;
☆行成の宗教観
幼いころに父親と祖父を流行り病で亡くしているし、かなりの苦労をされていたようで、それが独特の宗教観につながっているようです。
*火葬へのこだわり
「火葬にしてくれるな」と遺言を残して死んだ母方の祖父を火葬にして灰を河に流しています。独特の性格がかいま見えます(笑)。
(源保光は文章生から式部大輔を務めた紀伝道の学者である一方、太政官の行政事務の中枢である弁官を歴任し蔵人頭も務める。)
*不動明王信仰
自分の守り本尊として不動明王を信仰しておられたらしい。
友人の源宣方が生前に、この紙に字を書いて俺にくれと言い残して亡くなって。その紙に不動明王の絵を描かせて、その下に讃をつけたという話があります。これを故人の生前にしてあげてたら、どんなに喜んだだろうかと思うと、他人事ながら情けない。同じ轍を踏まないように自戒したいものです。
☆行成の仕事
「寛弘の四納言」の一人と言われた人です。他の人がサボりたがったり嫌がったりするような仕事を進んで引き受けるようなところがあります。
この時代は月に何日か「物忌」の期間があるのですが、正直それがなかったら過労死してるんじゃないかな(笑)という働きっぷりです。
書の分野でも、法華経300巻の外題を一晩で書きあげたと書いてあって、超人?!じゃないだろうかと思ってしまいます。
☆行成の家庭生活
奥様(源泰清の娘)のことは愛しておられたようで、最初の奥様が亡くなったときは日記に感動的な言葉を遺しておられます。
ですが、かなりワーカホリックですし、その気持ちが奥様に伝わっていたかどうか。
のちに栄花物語を読むと、この最初の奥様が怨霊になって出てきたという話があり、とても悲しく思いました。
源保光・源泰清ともに醍醐源氏で、このラインと関係が深かったようです。 -
荒川洋治の書評(2012年2月5日付「毎日新聞」)が素敵。