- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062922265
作品紹介・あらすじ
日本観光文化研究所所長時代に毎月行われた講義のうち、昭和51年9月から52年3月まで全7回の『日本奥地紀行』の講義録。講義は幕末・明治期の紀行文を通して民衆社会や世相史を読むというもの。一英国人女性旅行家が目をとめた不思議な国「日本」の事象をきっかけに、その資料的価値、バードの視点の出色さを指摘するにとどまらず、著者自身の比類ない観察眼と聞き取り調査に裏打ちされた該博な見識も、圧倒的説得力を持って縦横無尽に紡ぎ出され、宮本民俗学の入門書ともなっている。
感想・レビュー・書評
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時に外国人の視点は気づきにくい他国の真実を記録してくれる。魏志倭人伝、フロイス、サトーなど。同様にイザベラ・バードの紀行文を民俗学の泰斗が読み解くと実に新鮮な視点。
やはり民俗学者の視点は面白い。実は普通の日常の生活文化や風習は記録が残らないので難しい再現、想像できない、ところが多いが、たまたま外国人の紀行文の記録が貴重な資料となる。
イザベラ・バードはちょっと難しい本だが、本書は講演会の内容そのままなので読みやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741061 -
イザベラ・バード著『日本奥地紀行』で描かれた各トピックに対して民俗学者である宮本常一さんが知見を語る。76年〜77年に行われた講義録。
先に『日本奥地紀行』を読了していたため、大変興味深く読めた。同じ本の何気ない一節でも、民俗学のプロの目から見るとこのように読めるのだなと。勉強になりました。 -
イザベラバードの紀行の原文を読もうと思ったことがあるが、なかなか難しくて理解出来なかった。
本著はそれをバードが感じた当時の日本文化や習俗について解説をおりまぜて触れているため、とてもわかりやすかった。
日本人がある種醜い人種とされている一方で、アイヌ民族にバードが共感を得ているところが驚きだった。何より当時の日本の生活レベルの低さに正直驚かされた。
ノミの大群。ある意味、今の時代に生きれてよかったと思う。 -
宮本常一による日本観光文化研究所の講義録。
わたしも少しはものが言えるようになったと思っていたが、この方の膨大な知識量を浴びるとやはり言葉がない。同じ本を読んでこれほどにもゆたかに思索を巡らせるのか。もう少し知識が深まったときもう一度読みたい。
巻末の赤坂憲雄氏による寄稿が非常に、ひじょーーに興味深かった。だよねえ。 -
紀行文を解説する本は始めて読んだ。
アイヌ民族の話は、中でもかなり興味深かった。 -
バードの『日本奥地紀行』を、つっかえながら、しかしもう半年以上、読み終えられず。
今、青森あたりを、バードとともにうろうろしている(苦笑)。
いや、読みはじめたら面白いと思うところもあるのだが、なかなか手が伸びない。
これを打開するには、優れた先達あれ、と思い、本書を手にする。
この本を読むと、バードの紀行文のどこを面白がっていいか、とてもよくわかる。
自分だけでは、「へ~、当時はそうだったんだ」で終わってしまう。
それが、博識の宮本さんから、次々と関連情報が示されるので、バードの記述が立体的に見えてくる。
例えば。
バードが宿屋で障子に穴をあけて覗かれることに閉口する記述は有名だ。
彼女はお金が盗られるかも、とも心配しているのだが、宮本さんは昔の泥棒は放り出してあるものは盗らなかった、という証言を引っ張ってくる。
昔は家に鍵をかけなくても平気だった、と祖父母の世代の人からよく聞いたものだ。
これは狭い地域で限られた人間関係の中で暮らしていたから、と解釈してきたのだけど、泥棒の側にも今とは違う仁義の通し方があったのかも、と思わせられるエピソード。
こんな風に、バードの記述を通して、現代の日本との違いに目を開かせられる。
清潔度や健康の面で、本州にもずいぶん地域差があったことにもバードは触れているが、アイヌはこの点で高く評価されている。
まだ北海道に入ってからの部分は読んでいないので、どんなことが書かれているか楽しみになってきた。
やはり、この本を読むという判断は間違ってなかった、と自画自賛して、レビューを書き終えることにする(笑)。 -
バードさんの旅の記録を、日本の民俗学者さんの視点で。
なかなか興味深い内容。
講演の記述のらしく、お話を聴いている感じでとても読みやすかった。
『日本奥地紀行』を「はーん、ほーん、ふーん」(鼻ほじほじ)で読み流してしまった(失礼な)私には、とてもよい解説書だったと思う。 -
イザベラバードも歩いたが、宮本常一も歩いた。
日本人の衛生観念は、割りと最近になって発達したことがよくわかる。 -
まだ「江戸」が生きる東北・北海道へのイザベラ・バードの旅である『日本奥地紀行』を解説する本だった。バードの著した部分は必要最小限に引用され、本著者である宮本博士の民俗学的な所見が講義録に良くまとめられている。関西地方の旅先で本書のほとんどを読めたことは、当時と現代の交通を比較する面白さを味わわせてくれた。旅先の大型書店で『日本奥地紀行』を入手できたというオマケ付き!